見出し画像

伝統工芸と、若いクリエイターをつなぐ。ネジ穴付きの器『Corcelain』

こんにちは。発明家の高橋鴻介です。

今年の2月に『Corcelain(コーセリン)』という器をリリースしました。Corcelainはネジ穴のついた磁器です。高台に施されたネジ穴に拡張パーツを組み合わせることで、自分好みにカスタマイズすることができます。

高台の部分がネジ穴になっている

陶磁器を1から作るのは難しいですが、この器と、3Dプリンターなどの小さな加工機があれば、自分オリジナルの器を少量から形にすることができます。拡張パーツをデザインして、ねじ込むだけで、カップや植木鉢、おもちゃになったり…などなど、使い手の想像力次第で用途は無限に広がります。

僕も3Dプリンターのユーザーなのですが、3Dプリンターの弱点として、飲食用途のものをつくるのが難しいことが挙げられます。そもそも一般的に使われているPLAやABSといった素材が飲食向けではないことや、たとえ飲食向けの素材を使ったとしても、積層ピッチに食品の粒子が詰まってしまって、あまり衛生的ではありません。

3Dプリンタの積層ピッチ。水漏れもするので、そういった意味でもあまり飲食には向いていない。

そこで生まれたのが、『モジュラー器』というコンセプトです。
まるでカメラと三脚のように、陶磁器に好きなパーツをくっつけて拡張していく。そんな器があったら、衛生面の問題も解決できるし、なにより誰もが日常使いしているコップやお皿等の身近なプロダクトを、もっと簡単に、自分仕様にカスタムできるようになるんじゃないかとおもって、このアイデアを形にし始めました。

『モジュラー器』の初期スケッチ

このプロダクトが実現したのは、佐賀県の伝統工芸・肥前吉田焼の窯元である「224 Porcelain」との出会いがきっかけでした。
224 Porcelainの辻さんは、400年間伝承されてきた磁器づくりの技法に加え、CNCや3Dプリンターなどの最新のデジタル加工技術を用いて、今までにない挑戦的なものづくりを続けてきた職人さんです。

佐賀県嬉野市・吉田地区に位置する肥前吉田焼の窯元『224 Porcelain』
デジタル加工機に向かう辻さん

辻さんと時間を共にする中で驚いたのは、論理と直感のバランスです。
「ここの厚みは◯ミリにしないと、水分量の関係で、器の表面に凹みが出ちゃいますね」みたいな論理的なフィードバックもあれば、「言葉で説明しづらいんですけど、ここの曲線がこうなってると経験上、仕上がりが良くなるはずです」みたいな、経験からくる直感みたいなフィードバックもあって、毎回のミーティングが驚きの連続でした。

今回の「高台をネジ穴にする」というアイデアも、高度な先端技術だけでなく、最後は辻さんの職人的な直感からくる手仕事での微細な調整が、その実現を支えています。

佐賀県嬉野市に位置する磁器の産地・吉田は、約400年の歴史を持つ磁器の産地ですが、地理的に有田や波佐見の間にあったこともあり、古くからその2つの地域の下請けとして焼き物を陰から支えてきました。それゆえ、昔から高度な職人技が蓄積されてきた地域でもあります。

肥前吉田焼の面白いところは、高度な職人技を持ちながらも、有田の絵付けに代表されるような特定の様式がないところです。まさに辻さんが、職人技とデジタル加工技術を組み合わせた新しい様式を生み出しているように、それぞれの職人さんが、いままでの様式に縛られない自由さを持ち、伝統を守りながらも、新しい技術や思想を取り入れて革新を生み出している。そんな自由で面白い産地なのです。

しかし同時に、そんな肥前吉田焼は危機に瀕しています。
他の伝統工芸の産地同様、高齢化が進み、技の伝承や分業体制を保つのが難しくなっています。吉田という知られざる産地は、もしかしたら知られざるまま、5年、もしくは10年後にはなくなってしまうかも…と、職人さんたちは不安に思っています。

そんな背景を聞いたことも、この器を生み出すきっかけになりました。
Corcelainというネーミングは「Co-creation Porcelain(共創のための器)」からきています。Corcelainは自由にカスタマイズ可能な器でありながら、様々なデザイナー/クリエイターとの協業を生み出すためのプラットフォームでもあるのです。

現在は、陶磁器を専門としないデザイナー/クリエイターにCorcelainを提供し、拡張パーツをデザインしてもらい、テーブルウェア等の製品開発に役立ててもらう取り組みも進んでいます。

オランダ在住のテキスタイルデザイナー・Maori Kimuraさんは、
織物の端材を使った『Fringe Friends Cup』をデザイン

これはもちろん、3Dプリンタを用いるデザイナーだけの話ではありません、
木工や金属加工の職人と、この器が出会ったら。
デザイン系の学生と、この器が出会ったら。
ものづくり好きなあなたと、この器が出会ったら。

肥前吉田焼とクリエイターの、今までになかったコラボレーションが、次々と生まれてくるはずです。

これからCorcelainが目指すのは、今までとは異なる領域のデザイナー/クリエイターと、肥前吉田焼のコラボレーションを生み出すこと。そして今までつながりのなかった人が嬉野・吉田を訪れるようになる未来なのです。
よかったらぜひ、あなたもプロジェクトに参加してください。



Corcelainは以下のリンクから販売しています。
このnoteを読んで、興味が出た方はぜひ購入して、遊んでみてください。

もちろん、この器を活用して、プロダクト開発や、ワークショップ、イベントなどを実施したいというデザイナーさん、クリエイターさん等も募集中です。最近でいうと、世界的なメイカーコミュニティの『MakerWorld』と共同して、デザインコンペを行ったりしました。

MakerWorld x Corcelain

この器を通じて、肥前吉田焼とのあたらしいコラボレーションが生まれると嬉しいです。上のサイトのお問い合わせフォームから、ご連絡お待ちしています!

最後に、「肥前吉田焼に興味が出た!」「産地に行ってみたい!」という方がいましたら、以下の「よしださんち。」プロジェクトサイトを訪れてみてください。

産地訪問したい方はもちろん、職人さんとのコラボレーションを始めたい方や、「自分が職人として修行したい!」という方もサポートしてもらえます。僕もこのプロジェクトの一環で辻さんと出会いました。

気軽に連絡してみると、きっと素敵な出会いにつながると思います。
肥前吉田焼と、みなさんの素敵なコラボレーションが広がりますように。

佐賀県・吉田地区

追記(2025年3月25日):プロセスをまとめた映像も作りました。
英語ですが、日本語字幕ついてますので、ぜひ字幕をオンにしてお楽しみください。


いいなと思ったら応援しよう!