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【読書記録/思考ノート#16】20年前に出会いたかった本:山口周×深井龍之介『人文知は武器になる』を読んで

こんにちは、大沢農園です。
ご訪問ありがとうございます。

このnoteは、2026年4月に公務員を辞め親元就農したぼくが、
FP2級と約20年の投資経験を活かし、
畑のこと、働き方、お金のこと、本から学んだことなど、
「これからの生き方」を記録・発信している雑記帳です。

曜日ごとに固定テーマで記事を執筆していますが、木曜日は【読書記録/思考ノート】として、読んだ本の本文を引用しながら感じたことや考えたことを記録しています。

今回読んだのは、山口周さんと深井龍之介さんの共著『人文知は武器になる』(文春新書)です。


20年前(大学受験する頃)に出会いたかった本

本書のテーマは、「人文知は本当に役に立たないのか」という問いです。AIが急速に発達し、正解を簡単に手に入れられる時代だからこそ、文学や哲学、歴史といった人文知の価値がむしろ高まっていると語られています。

著者(スピーカー)の山口周さんは独立研究者・著作家として、人文知やアート、ビジネスを横断した発信を続けている方です。

一方の深井龍之介さんはCOTENという会社の代表を務め、人文学や歴史の知識を現代社会へ橋渡しする活動をされています。

この本を読みながら、何度も「20年前に出会いたかった」と思いました。

高校時代の大学進学を考えていた頃、本当に興味があったのは文学や哲学でした。でも当時、両親は「そんな学部では仕事にならない」「役に立たない」と考えていました。
ぼく自身も、その考えに反論できるだけの言葉を持っておらず、結局、「お金を稼ぐためにお金の勉強をすれば、将来役立つだろう」というぼんやりした考えで経済学部を選びました。

もちろん経済学部で学んだ金融や投資、保険などのことは今でも役立っていると感じます。
しかし、この本が20年前に出版されていて、人文知の価値を知っていたら、大学選びはまったく違ったものになっていたかもしれません。


現状を正しく見ることが、すべての出発点

深井:古今東西、時代を通じて成功するリーダーにはある共通点があります。それは「正確な現状認識」ができているということです。読者のかたは「そんなの当たり前じゃん」と思われるかもしれませんが、ホモ・サピエンスにとって現状認識は相当に難しいようで、失敗したリーダーや組織には、外部環境の変化や内部のステークホルダー(利害関係者)の感情を理解していなかったり、組織のメンバーが大戦略をわかっていなかったりという点が共通しています。

(25ページ)

深井:歴史を振り返ると、組織のパフォーマンスが分岐する瞬間には、必ずといっていいほど「現状理解」の差があります。その現状理解には三つのカテゴリーがあります。外的環境、内的環境、そしてリーダーの意思決定です。

(82ページ)

ここはとても重要な示唆です。
リーダーや組織の共通点と言っていますが、個人にも当てはまるでしょう。

失敗するときは、「思い込み」で判断していることが少なくありません。

・今年は暑いから需要が増えるだろう
・相場はきっとこう動くだろう
・自分はこう思っているから相手も同じように考えているはず

経験則に頼って思い込みが積み重なると、現実とのズレが大きくなっていきます。

だからこそ重要なのは、自分の願望(こうなって欲しい)ではなく「今、実際に何が起きているのか」を冷静に見ることです。市場はどう変化しているのか、お客さんは何を求めているのか、自分自身はどんな状態なのか。現状認識が正確であれば、その後の判断も自然と正しい方へ向かうのでしょう。

派手な成功法則よりも、まず現状を正しく理解すること。その地味だけれど本質的な姿勢こそ、長く成果を出し、成功を引き寄せるための土台なのだと改めて感じました。


「文系」か「理系」か、ではない

山口:現在、特に先進国では生活の不便のような問題は解消され、しかもAIによって正解が世の中にあふれている。こうした状況下では、問題を解決する能力よりも「問題を発見し、他者に提起する」能力の方が重要になっています。
(中略)
一方で、こういったグローバルトレンドとは真逆に、日本では「文学部を廃止せよ」「人文系学部は役に立たない」といった暴論を吐く人がいる。

(52ページ)

この一節は、本書の中でも特に印象に残りました。

AIが即座に「答え」を出せる時代だからこそ、人間には「何が問題なのか」を発見する力が求められる。ぼくも同意するところです。

そして、この一節を読んで思い出した本が、東京大学の副学長などを務められた吉見俊哉さんの『「文系学部廃止」の衝撃』(集英社新書)です。

経済成長や新成長戦略といった自明化している目的と価値を疑い、そういった自明性から飛び出す視点がなければ、新しい価値創造性は出てきません。ここには文系的な知が絶対に必要ですから、理系的な知は役に立ち、文系的なそれは役に立たないけれども価値があるという議論は間違っていると、私は思います。主に理系的な知は短く役に立つことが多く、文系的な知はむしろ長く役に立つことが多いのです。

(75ページ)

学校事務として務めていた頃、SGH(スーパーグローバルハイスクール)第1回全国フォーラムという場で、吉見俊哉さんの講演を聞いたことがあります。
(あの場で「学校事務職員」として参加していたのは、自分くらいなのではないかという気もしますが)
そこで語られていた「文系の知識も役に立つ」「“役にたつ”と一口に言うが、意味も複数ある」という話を、とても興味深く聞き、今でも覚えています。

二冊に共通しているのは、「文系か理系か」という対立ではなく、それぞれに異なる役割があるという考え方です。

ぼく自身、今は農業をしながらFPとしても学び続けていますが、数字や制度だけでは解決できないことは本当に多いと感じます。人の価値観や感情を理解し、新しい問いを立てる力。その土台になるのが人文知なのだと、この二冊を通して改めて実感しています。


知識・教養は、一生かけて育てていくもの

深井:教養を学ぶのに「近道はない」っていう覚悟をすべきだと僕は思います。ビジネスパーソンの視座からだと「いかに効率よくできるか」、「どう勉強すればいいのか」みたいな問いしか出てこないと思いますけれど、それよりも社会に対して好奇心や関心を持って知りたいことを突き詰めてみる、1日で終わるような勉強じゃないと割り切って一生勉強すると決めることが必要なんじゃないかと思っています。
そういうふうに態度を決めれば、あとはいずれ到達する、みたいな話だと思います。

(156ページ)

最近は「タイパ(タイムパフォーマンス)」「コスパ(コストパフォーマンス)」という言葉をよく見かけます。
何でもかんでも「コスト」で考え、合理化・最適化こそを第一義に考えるようなことです。
でも、本来、勉強や教養、知識というものはそういうものではないと、ぼくも思っています。

ぼくも様々に本を読み、こうしてnoteに感想を書いたりしています。しかし、それは知識を増やすことだけが目的ではありません。本を読んで考え、自分の経験と結び付け、文章にして「自分のもの」にする。その積み重ねによって、自分自身のものの見方が少しずつ変わっていくことに価値があるのだと思っています。

「タイパ」「コスパ」の時代だからこそ、文学や哲学、歴史などの一見したら「役に立たない」と思うようなことも、一生勉強するという覚悟を決めて学ぶからこそ、世界の「新たな見方」が手に入るのではないか。
「タイパ」「コスパ」だけで世界を見ていたら、結局その地点からしか世界を見ることができません。それはきっと、本当はとても「貧しい」ことなんじゃないかという気がします。

20年前にこの本に出会えていたら、もっと違う人生を歩んでいた可能性はありますし、今だからこそ、この本の内容を実感を持って受け止められていると思います。

人文知は、すぐに成果が出る知識ではないでしょう。何か歴史の出来事を知っても、明日それが「役に立つ」とは限らない。しかし、そういった知識や教養は、人生を長い目で見たときに、きっと何度も自分を支えてくれる「武器」になる。そんなことを感じさせてくれる一冊でした。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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【執筆:大沢農園】
38歳・元学校事務。
公務員を辞め、親元就農という形で農業の世界に入りました。
FP資格と約20年の投資経験活かし、畑のこと、働き方、お金のこと、本から学んだことを綴り、
「これからの生き方」を模索しながら発信しています。

stand.fmによる朗読公開も始めています!
月曜日更新の農業週報や、文学・詩の朗読もしていくつもりですので、気軽な気持ちでお聴きいただければと思います。

#読書記録 #人文知は武器になる #人文学 #学び続ける人へ #山口周 #深井龍之介

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