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実践するドラッカー 実践編 第66話:社長の時間はどこへ消えた?!~時間の記録から、利益構造が変わった③(全4話)

事例13-3 空いた時間を、外の成果に向ける

本記事は、実際の企業事例をもとに、人物名、社名、地域、時期、数値などを一部変更・再構成しています。

ほかの人にできることは、ほかの人に

Mさんの仕事は、少しずつ変わっていきました。

以前は、回収物の値決めをするために、Mさん自身がお客様のところへ出向いていました。

現場を見る。
状態を確認する。
価格を判断する。
会社へ戻る。
また別の現場へ向かう。

時間を記録してみると、そこには多くの移動時間がありました。

そこで、回収物を会社に持ち込んでもらい、事務所で値決めをするようにしてみました。

しかし、それだけでは本当の意味で時間は生まれませんでした。

「移動時間は減った。
 でも、今度は事務所から動けない。」

結局、社長である自分が判断しなければ、仕事は進まなかったのです。

ドラッカーは、こう述べています。

重要なことに取り組めるようになるには、ほかの人にできることはほかの人にやってもらうしかない。

『実践するドラッカー 行動編』第1章 時間が成果を決める
 仕事を人に任せる p.26
(経営者の条件 p.60)

Mさんに必要だったのも、まさにこのことでした。

自分が全部を見て、全部を判断する・・。
それでは、いつまでも重要なことに向かう時間は生まれません。

もちろん、値決めは簡単に任せられる仕事ではありませんでした。
経験も必要です。
リスクもあります。
判断を間違えれば、損失につながることもあります。

だからこそ、Mさんはただ丸投げしたわけではありません。

・スタッフが現場で判断できるようにする。
・判断に迷うものは写真を送ってもらう。
・Mさんが確認しながら、見るポイントや値決めの基準を伝えていく。

最初は、確認のやり取りが何度も必要でした。

それでも、少しずつ変化が出てきました。

スタッフが、現場で見るべきところを押さえられるようになる。
これは自分たちで判断してよい。
これは確認した方がよい。
そうした線引きができるようになる。

社長の判断に止まっていた仕事が、現場で少しずつ進むようになっていきました。

そしてMさんには、ようやく自由に使える時間が生まれはじめました。


小さな時間では、未来には向かえない

ただし、時間が少し空けば、それでよいわけではありません。

10分空いた。
15分空いた。
移動と移動の間に、少し余白ができた。

もちろん、それだけでも助かる場面はあります。

メールを返す。
電話を一本かける。
すでに決まっている作業を片づける。
前から分かっていることを少し確認する。

そうしたことなら、小さな時間でもできるかもしれません。

けれども、会社の未来を考える。
新しい販売先を探す。
これまでとは違う取引の可能性を見に行く。
回収したものの価値を高める方法を考える。

そうした仕事には、細切れの時間では足りません。

ドラッカーは、こう述べています。

成果をあげるには自由に使える時間を大きくまとめる必要がある。大きくまとまった時間が必要なこと、小さな時間は役に立たないことを認識しなければならない。

『実践するドラッカー 行動編』第1章 時間が成果を決める
時間の塊をつくる p.28
(経営者の条件 p.73)

小さな時間でできるのは、すでに知っていることを考えるときや、すでにやっていることを処理するときです。

しかし、まだ見えていない機会を探す。
新しい相手に会いに行く。
これまでとは違う価値の出し方を考える。
自社の仕事の意味を、外の世界から見直す。

そうした未来に向けた仕事には、まとまった時間が必要になります。

Mさんが必要としていたのも、まさにこの「大きくまとまった時間」でした。

電話と電話の合間に考える時間ではない。
現場と現場の移動中に、頭の中だけで思い巡らせる時間でもない。
次の回収物が来るまでの待ち時間でもない。

まとまって使える時間。
自分の意思で使える時間。
目の前の処理ではなく、会社の未来に向けられる時間。

Mさんは、スタッフが現場で判断できるようになることで、少しずつその時間を取り戻していきました。


時間が空いたことは、ゴールではなかった

時間が空く。

それは、うれしいことです。

移動に追われない。
事務所で待ち続けなくてもよい。
すべての値決めを自分が抱え込まなくてもよい。

けれども、Mさんにとって大切だったのは、時間が空いたことそのものではありませんでした。

その時間を、何に使うのか。

ここが問われていました。

ただ少し楽になるためだけなら、時間管理はそこで終わってしまいます。

もちろん、社長にも休む時間は必要です。
余白ができること自体にも意味があります。

けれども、Mさんは、生まれた時間を会社の未来に向けたいと考えました。

では、MM社にとって、社長である自分が本当に時間を使うべき仕事は何なのか。

目の前の値決めに追われていたときには、考えきれなかったことがありました。

回収したものを、どこに出せば、もっと価値を認めてもらえるのか。
どんな相手なら、MM社が扱っているものを必要としているのか。
今まで付き合いのなかった先に、新しい可能性はないのか。

Mさんは、会社の外に目を向けはじめました。


成果は、外の世界にある

ドラッカーは、成果は組織の外にあると考えました。

会社の中にあるのは、努力です。
作業です。
会議です。
手続きです。
改善です。

もちろん、それらは必要です。

しかし、それ自体が成果なのではありません。

成果は、会社の外で生まれます。

お客様が価値を感じる。
取引先が必要としてくれる。
市場が受け入れる。
誰かの役に立つ。

そこではじめて、仕事は成果になります。

Mさんが時間を取り戻して向かったのも、会社の外でした。

事務所の中で、より効率よく値決めをすることだけが目的ではありませんでした。
社内の仕組みを整えることだけが目的でもありませんでした。

その先に、外の世界にある機会を見に行くことがあったのです。

回収した廃棄物や金属を、より高く、よりよい形で引き取ってくれる先はないか。
こちらでは処理に困るものでも、別の会社にとっては価値ある材料になるのではないか。
これまで当たり前のように流していたものに、別の使い道はないか。

Mさんは、そうした可能性を探す時間を持てるようになっていきました。


新しい販売先を探す

Mさんが取り組んだのは、新しい販売先・買取先の開拓でした。

廃棄物処理や金属リサイクルの仕事では、回収したものをどう扱うかが重要です。

ただ引き取るだけではありません。

引き取ったものを、どう分けるか。
どう整えるか。
どこに出すか。
どの相手にとって価値がある形にするか。

そこによって、利益は大きく変わります。

同じものでも、出す相手が違えば価格が変わる。
同じ材料でも、分け方や状態によって評価が変わる。
ある相手には扱いにくいものでも、別の相手には必要なものになる。

Mさんは、そこに可能性を見ていました。

だから、新しい取引先を探しはじめました。

これまで付き合いのなかった会社に話を聞く。
どのような材料を求めているのかを確認する。
どのような状態なら引き取りやすいのかを聞く。
価格だけでなく、相手にとっての扱いやすさも考える。

それは、単なる営業ではありませんでした。

MM社が回収しているものの価値を、もう一度見直す仕事でした。


「捨てるもの」ではなく、「必要とされるもの」として見る

廃棄物という言葉には、「いらなくなったもの」という響きがあります。

誰かにとって不要になったもの。
処理しなければならないもの。
片づけなければならないもの。

しかし、Mさんの仕事は、それをただ引き取ることではありませんでした。

ある人にとって不要になったものが、別の誰かにとっては必要なものになる。
ある会社にとって処理に困るものが、別の会社にとっては材料になる。
ある場所では価値を失ったものが、別の場所ではもう一度価値を持つ。

その橋渡しをするのが、MM社の仕事でもありました。

Mさんは、回収物を見る目を変えていきます。

これは、いくらで引き取れるか。
それだけではない。

これは、誰にとって価値があるのか。
どのような状態にすれば、もっと使いやすくなるのか。
どう分ければ、相手にとって役に立つのか。

そう考えるようになりました。

時間がなければ、そこまでは考えられません。

目の前の回収物を見て、価格を決め、処理する。
日々の仕事に追われていれば、それだけで一日が終わってしまいます。

けれども、Mさんには少しずつ時間が生まれていました。

その時間が、回収物の向こう側にいる相手を見る時間になっていったのです。


価格ではなく、価値を見る

販売先や買取先を探すとき、もちろん価格は大切です。

より高く引き取ってもらえる先があれば、MM社にとって利益になります。

しかし、Mさんが見ていたのは、価格だけではありませんでした。

相手は、何に困っているのか。
どんな状態のものなら使いやすいのか。
どんな形で渡せば、相手の手間が減るのか。
こちらが少し工夫することで、相手にとっての価値は高まるのか。

そう考えると、ただ「高く買ってくれるところを探す」という話ではなくなります。

相手にとって使いやすい状態にする。
相手が求めている形に合わせる。
相手のコストが下がるように工夫する。

その結果として、こちらも高く買ってもらえる。

Mさんの時間の使い方は、そこに向かっていきました。

これは、時間管理の話から始まった実践でした。

でも、気がつくと、事業そのものの見方が変わりはじめていました。


同じ「外に出る」でも、意味が変わった

Mさんは以前から、外に出ていました。

お客様のところへ行き、回収物を見て、値決めをする。

それは大切な仕事でした。

しかし、そのころの外出は、目の前の仕事を進めるための外出でした。

Mさんが行かなければ、価格が決まらない。
Mさんが行かなければ、仕事が進まない。

だから外に出ていたのです。

けれども、スタッフが現場で判断できるようになってからの外出は、少し意味が違いました。

新しい相手に会う。
新しい可能性を探す。
これまでとは違う取引を考える。
回収物の価値を高める方法を探る。

これは、会社の未来をつくるための外出でした。

同じ「外に出る」でも、意味が違います。

以前は、社長が出なければ仕事が止まるから出ていた。
今は、社長が外の成果を探すために出ている。

この違いは、とても大きい。

時間の記録によって、Mさんは自分の時間の使い方を見直しました。
判断を現場に移すことで、自由に使える時間をつくりました。
そして、その時間を会社の外にある成果へ向けました。

ここから、MM社の仕事はさらに変わっていきます。


時間管理は、未来をつくるためにある

時間管理というと、忙しさを減らすためのものに見えるかもしれません。

スケジュールを整える。
ムダをなくす。
効率よく働く。
空き時間をつくる。

もちろん、それも大切です。

けれども、Mさんの実践を見ていると、時間管理の本当の目的は、もう少し先にあるように思えます。

空いた時間を、何に向けるのか。

そこが問われているのです。

時間をつくっても、その時間がまた目の前の作業で埋まってしまえば、会社はあまり変わりません。

時間をつくっても、その時間をただ内側の調整だけに使っていれば、成果は広がりません。

生まれた時間を、外の成果に向ける。
お客様や取引先の価値に向ける。
会社の未来の機会に向ける。

そこではじめて、時間管理は仕事の成果につながっていきます。

Mさんにとって、時間の記録は、単なる効率化の入り口ではありませんでした。

自分の時間を取り戻し、会社の未来に向け直すための入り口だったのです。


【今日の問い】

Q:先週、あるいは先月、あなたは未来に向けて考え、動くためのまとまった時間をどれくらい取りましたか。

10分、15分のすき間時間は、日々の中にもあるかもしれません。

メールを返す。
電話を一本かける。
すでに決まっている作業を片づける。
前から分かっていることを少し確認する。

そうしたことなら、小さな時間でもできるかもしれません。

けれども、まだ見えていない機会を探すこと。
新しい相手に会いに行くこと。
自社の仕事の価値を見直すこと。
これまでとは違う可能性に踏み出すこと。

そうした未来に向けた仕事は、細切れの時間ではなかなか進みません。

「いつか考えよう」
「時間ができたら取り組もう」
「移動中に少し考えておこう」

そう思いながら、ずっと先送りになっていることはないでしょうか。

あなたの先週、あるいは先月の予定表の中に、
目の前の処理ではなく、
未来の成果に向かうためのまとまった時間
は、どれだけあったでしょうか。

そして次の一週間に、その時間を置くとしたら、
誰に会い、何を見に行き、どんな可能性を確かめることができるでしょうか。


~次回予告~

Mさんは、生まれた時間を使って、新しい販売先・買取先を探しはじめました。

その中で気づいたのは、回収物の価値は、相手によって変わるということでした。

同じものでも、混ざったままなら扱いにくい。
分けられていれば、価値が上がる。
相手が使いやすい形になっていれば、さらに評価は変わる。

次回は、MM社が回収物をただ引き取るだけでなく、分け、整え、相手が使いやすい形にすることで、利益構造そのものを変えていった実践を見ていきます。

第4回 小さな会社が、利益構造を変えた

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