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世界のペット事情 #2|ノルウェー編

by MaNiYa編集部


みてくれてありがとうございます。
「世界を見れば日本が見えてくる」ということで、海外のペット事情について調べてまとめています📝

第2回は、ノルウェー🇳🇴

ノルウェーと聞くと、フィヨルド、森、山、雪、オーロラ。
自然豊かな国というイメージを持つ方も多いかもしれません。

では、そんな国で犬はどのように暮らしているのでしょうか。

調べてみると、ノルウェーの犬との暮らしには、ただ「犬にやさしい」だけではない特徴がありました。
犬の自由を尊重する一方で、野生動物、家畜、周囲の人、公共空間への配慮も強く求められています。

つまり、犬を愛することは、犬だけを見ることではありません。
犬が生きる社会全体を見ることでもあるのだと感じました。

MaNiYaが大切にしているのは、犬への愛を、知識と倫理によって少しずつ社会に翻訳していくことです。

だからこそ海外のペット事情を見るときも、「すごい」「進んでいる」で終わらせるのではなく、その背景にある考え方や、犬を飼っていない人との関係まで見ていきたいと思っています。



動物は、人間のためだけに存在しているのか

ノルウェーの動物福祉を考える上で重要なのが、2009年に制定された「動物福祉法」です。

ノルウェー政府が公開している英訳によると、この法律の目的は「良い動物福祉と、動物への敬意を促進すること」とされています。さらに、同法第3条では、動物には人間にとっての利用価値とは関係なく「固有の価値」があると明記されています。(出典:Norwegian Ministry of Agriculture and Food, Animal Welfare Act, 2009)

犬がかわいいから大切にする。
犬が人間を癒してくれるから大切にする。
もちろん、それも大事です。

でもノルウェーの動物福祉法が示しているのは、動物の価値は「人間にとって役に立つかどうか」だけでは決まらない、という考え方。

犬は、誰かの所有物である前に、痛みやストレスを感じる存在であり、その存在自体に価値がある。この前提があるからこそ、飼い主には「かわいがる」だけではなく、犬の身体的・精神的な福祉を守る責任が求められます。


自由に走る犬と、守られるべき命のあいだで

ノルウェーは自然豊かな国です。
だからこそ、犬と自然の関係にも明確なルールがあります。

ノルウェー政府によると、ノルウェーでは毎年4月1日から8月20日まで、全国で犬をリードにつなぐ義務があります。これは、犬がトナカイ、家畜、野生動物を追いかけたり傷つけたりすることを防ぐためです。また、この期間中は、どれだけ犬がよくしつけられていても、飼い主のそばを自由に歩かせるだけでは不十分で、リードにつなぐか、安全な囲いの中に入れる必要があります。(出典:Norwegian Ministry of Agriculture and Food, Travelling with dogs to Norway, 2024)

ここが、とてもノルウェーらしいと感じました。

犬にとって、走ることや匂いを嗅ぐこと、自然の中を歩くことは大切です。
でも、その自由が、野生動物や家畜の命を脅かす可能性もあります。

「犬を自由にさせること」が、いつも犬への愛になるとは限らない。
犬の自由と、ほかの命の安全をどう両立させるのか。

ノルウェーのリード義務は、その問いに対するひとつの答えのように見えます。

日本では、ドッグランなど限られた場所以外で犬のリードを外すことは、一般的にはほとんどありません。
一方でノルウェーでは、野生動物や家畜を守る必要が高い時期にリード義務を明確に定めることで、犬の自由と自然環境の保護を両立させようとしているように見えます。

自由をなくすためのルールではなく、共に生きるために自由の条件を整えるルール。この発想は、日本で犬との暮らしを考える上でも、とても参考になりそうです。


好きだからこそ、コントロールできる人であること

ノルウェーでは、犬を連れて旅行する人向けにも、飼い主の責任が明確に説明されています。

ノルウェー政府の案内では、犬の飼い主には、犬が人、動物、環境、その他の利益に危険や不快感を与えないよう、合理的にできることを行う「注意義務」があるとされています。また、犬の飼い主は、意図しない状況や事故を防ぐために必要な能力を持つべきだとも説明されています。(出典:Norwegian Ministry of Agriculture and Food, Travelling with dogs to Norway, 2024)

ここでいう「飼い主」は、長期的に犬を飼っている人だけではありません。
一時的に犬を預かる人も含まれます。

つまり、犬と一緒にいる人には、その瞬間、その犬と社会のあいだに責任が発生するということです。

犬を愛することは、犬の気持ちを想像すること。
同時に、周囲の人や動物がどう感じるかを想像することでもあります。

犬が苦手な人もいる。
アレルギーがある人もいる。
小さな子どもや高齢者にとって、大きな犬が近づいてくるだけで怖い場合もある。

犬を大切にする社会は、犬だけにやさしい社会ではありません。
犬と一緒にいない人の安心も、同時に考える社会なのだと思います。


公共交通では犬も乗れる。ただし、他の乗客への配慮が前提

ノルウェーの首都オスロ周辺の公共交通を運営するRuterでは、犬と補助犬は無料で乗車できます。ただし、犬はリードにつなぎ、通路をふさがないこと、他の乗客に迷惑をかけないこと、座席に直接乗せないことなどが定められています。(出典:Ruter, You can take this with you on board)

また、ノルウェー政府観光局のVisit Norwayも、ノルウェーでは多くの場合、犬は公共交通に乗れるが、リードにつなぎ、座席には直接座らせない必要があると紹介しています。(出典:Visit Norway, Travel with your dog in Norway)

このルールは、犬を社会から排除するものではありません。むしろ、犬が社会に参加するための条件を整えているように見えます。

「犬も乗っていい」。
でも、「他の人の空間も尊重する」。

このバランスがあるからこそ、犬連れの人も、犬を飼っていない人も、同じ公共空間を共有しやすくなるのだと思います。


歓迎される犬と、距離を置きたい人のあいだで

Visit Norwayによると、ノルウェーでは多くのレストランやカフェの屋外席で犬が歓迎されており、一部では店内で犬と一緒に座れる場所もあります。中には犬用メニューを用意している場所もあるそうです。一方で、犬が食品や他の客にとって危険にならないことが前提であり、他の客や従業員がアレルギーや不快感を感じた場合、店側は犬連れの客に退店を求めることができます。(出典:Visit Norway, Travel with your dog in Norway)

ここにも、ノルウェーらしい現実的な線引きがあります。

犬を歓迎する。
でも、すべての人に犬を受け入れることを強制するわけではない。

これは、日本で犬との共生を考える上でも、とても参考になる視点です。

犬を飼っている人にとって、犬は家族です。
でも、犬を飼っていない人にとっては、そうではない場合もあります。

その違いを無視して「うちの子はかわいいから大丈夫」と考えてしまうと、犬と人間社会の距離はかえって広がってしまいます。

大切なのは、犬を社会に迎え入れることと、犬が苦手な人の安心を守ることを、対立させないことなのだと思います。

MaNiYaが目指しているのも、犬を飼っている人だけの世界を広げることではありません。
犬を飼っている人の愛情を、犬を飼っていない人にも伝わる形にすること。
そして、犬を飼っていない人の不安や距離感も、飼い主側が理解できる形にすること。

たとえば、OshiPets Localのような取り組みでは、犬を飼っていない人が、飼い主や犬と安心して出会える場をつくろうとしています。
それは、犬を「癒しの存在」として一方的に消費するためではなく、犬と人、飼い主と非飼い主のあいだに、互いを理解する小さな接点をつくるためです。


「安全」と「排除」のあいだで。禁止犬種という現実

ノルウェーでは、危険とみなされる一部の犬種の所有、繁殖、輸入が禁止されています。

ノルウェー食品安全庁によると、禁止されている犬種は、ピット・ブル・テリア、アメリカン・スタッフォードシャー・テリア、フィラ・ブラジレイロ、土佐犬、ドゴ・アルヘンティーノ、チェコスロバキアン・ウルフドッグです。これらの犬種が一部でも含まれる交雑犬にも禁止は適用されます。(出典:Norwegian Food Safety Authority, Banned dogs)

犬種による規制は、人や他の動物の安全を守るための制度です。一方で、犬種だけで危険性を判断してよいのか、個体差や飼い主の責任をどう考えるのかという難しい問いもあります。


“かわいい”の裏側に、苦しみがあるとしたら

ノルウェーで特に注目されているのが、犬の繁殖に関する倫理です。

2023年、ノルウェー最高裁は、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルについて、現在の遺伝的状況では繁殖を続けることが動物福祉法に反すると判断しました。また、イングリッシュ・ブルドッグについても、新しい枠組みに適合しない繁殖は違法となると判断されています。(出典:Eurogroup for Animals, Landmark ruling against unethical dog breeding in Norway, 2023)

この問題は、犬を飼う私たちにとっても無関係ではありません。

丸い目。短い鼻。小さな体。赤ちゃんのような顔。

私たちは、そうした特徴を「かわいい」と感じます。でも、そのかわいさの裏側に、呼吸のしづらさ、遺伝的疾患、慢性的な痛みがあるとしたら、どうでしょうか。

かわいいと思う気持ちは悪いものではありません。
けれど、そのかわいさが犬の苦しみと結びついている可能性があるなら、私たちは知る必要があります。

ノルウェーの繁殖をめぐる判断は、「人間が望む見た目」と「犬の健康」が衝突したとき、どちらを優先するのかを社会に問いかけているように感じます。



ノルウェーを見ると、日本の犬社会が見えてくる

ノルウェーの犬事情を調べていて感じたのは、犬が「自然」「公共性」「法律」の中で語られていることです。

日本では、犬は「家族」や「かわいい存在」として語られることが多いと思います。それ自体は、とても温かい文化です。

一方で、犬を家族として深く愛している人と、犬と暮らしていない人のあいだには、見えない距離があります。

犬と一緒にカフェに行きたい人。犬が近くにいると不安な人。犬を自由に走らせたい人。野生動物や子どもの安全を心配する人。かわいい犬を迎えたい人。その繁殖背景を心配する人。

同じ社会にいながら、見ている世界が違う。

たとえば、日本では犬を自由に走らせる場所は、基本的にドッグランなど限られた空間に集中しています。
一方でノルウェーでは、自然の中で犬と過ごす文化がありながら、4月1日から8月20日まで全国的なリード義務を設けることで、野生動物や家畜を守ろうとしています。(出典:Norwegian Ministry of Agriculture and Food, Travelling with dogs to Norway, 2024)

つまり、ノルウェーでは「犬を自由にさせるか、させないか」という単純な話ではなく、季節、自然環境、他の生き物との関係の中で、犬の自由を調整しているように見えます。

また、公共交通やカフェにおいても、犬を受け入れながら、座席に直接乗せない、リードをつける、他の客のアレルギーや不快感に配慮する、といったルールが示されています。(出典:Ruter, You can take this with you on board/Visit Norway, Travel with your dog in Norway)

犬を歓迎することと、犬が苦手な人の安心を守ること。
この両方を同時に考える姿勢は、日本でもこれからさらに必要になっていくと思います。

ノルウェーの事例から学べるのは、犬を社会の中でどう位置づけるかを、法律やルールとして考えている点です。

犬を愛することは、犬だけを特別扱いすることではない。
犬が社会の中で安心して生きられるように、人間側がルールをつくり、知識を持ち、他者の視点を想像することでもある。

そう考えると、犬との暮らしは、単なるペット文化ではなく、社会の成熟度を映すものなのかもしれません。


おわりに|犬を愛することは、社会を見つめることでもある

ノルウェーの犬事情を調べると、「犬にやさしい国」という一言では終わらない複雑さが見えてきました。

犬の自由を大切にする。でも、野生動物や家畜を守るためにリードを義務づける。
犬を公共交通やカフェに受け入れる。でも、他の人の安心も守る。
犬を愛する。でも、人間の好みによって犬の健康を犠牲にする繁殖には向き合う。

MaNiYaにとって、ペット領域のプロダクトづくりは、単に便利な機能を増やすことではありません。

犬のケアを記録すること。
犬との思い出を残すこと。
犬を通じて地域の人とつながること。
災害時に犬と一緒に避難する準備をすること。

その一つひとつは、犬への愛を、行動に変えるための小さな仕組みです。

愛は、気持ちだけでは続かないことがあります。
忙しさや不安、知識不足、社会のルールとのすれ違いによって、うまく形にできないこともあります。

だからこそMaNiYaは、犬を愛する気持ちを、知識と仕組みに変えていきたい。
犬と人が、同じ社会の中で無理なく共に生きられるように、そのあいだに橋をかける存在でありたいと思っています。


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