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ドラマ「ザ・レジデンス」裏から見たホワイトハウスを舞台に天才探偵が愉快に推理する粋なミステリー

あまり話題になってないのが不思議なくらい、断然面白いドラマがNetflixで配信中(2025年3月20日配信開始)。今年いちばん面白い海外ドラマだと思うな。
ホワイトハウスでオーストラリアの国賓を招いた晩餐会が進行中に死体発見。チーフアッシャーのABウィンターだ。チーフアッシャーとはホワイトハウスの裏方の総支配人のこと。遺書らしき紙を持ち手首が切られているので自殺と思われたが他に不審な要素もいっぱい。ホワイトハウスを管轄する首都警察のラリーが呼んだのが天才探偵、コーデリア・カップ。黒人女性のカップは見聞きしたことは絶対忘れない記憶力と、凡人が見抜けない真実を言い当てる洞察力で過去にも難事件を解決してきた。
殺人と見たカップはすべての人びとをホワイトハウスに留めて、一人ひとり尋問していく。首都警察にイニシアチブを取られたくないFBIはエドウィン・パーク捜査官をお目付役につける。かくて、パーク捜査官を引き連れてホワイトハウス内を行ったり来たりしながらカップの捜査が始まった。

このドラマの魅力は2つ。何と言ってもホワイトハウスの裏方たちの存在だ。数々の映画やドラマでは大統領の仕事ぶりは描かれても、それを支える裏方たちのことを描いた作品は初めて見た。なにしろホワイトハウスには132部屋もある。しょっちゅう国賓が招かれるし大統領の家族も暮らしている。
だから料理人はもちろん、ハウスキーパーや技師に庭師、執事に絵画を管理するキュレーター、来賓の名前をカードに書くカリグラファーもいる。
このドラマでは大統領はゲイで、大統領の夫もいるのも面白い。ファーストレディならぬファーストジェントルマンだ。彼の母親も一緒に住んでいて酒浸り、大統領の弟も住んでいてとんでもなく非常識な男。
そんな見たことない世界で少しずつおかしな人々が働き暮らしている。そこで殺人事件が起こったのだから尋問するほどしっちゃかめっちゃかになる。嘘つく奴もいるし、嫌われてる奴もいる。
だが名探偵カップはそんなおかしな連中に次々に尋問し、少しずつその晩何が起こったかを解き明かしていく。このカップがまた魅力的なキャラクターで、天才だけどバードウォッチングが推理より好き。捜査中もホワイトハウスの庭に出て双眼鏡で鳥を探す。彼女は権威などものともせず誰にでも遠慮会釈なくものを言う。もちろん大統領にもオーストラリアの首相にも。
そんな彼女に振り回されるパークとの漫才みたいなやり取りがまた面白い。アジア系のパークはよせばいいのに尋問に口を挟んだり彼なりの推理を披露しては、その的外れぶりをカップにいじられる。それでもアジア系の真面目さで屈せずカップに振り落とされずについて回る。二人の関係が徐々に友情に変わっていくのもいい感じだ。
それから晩餐会にゲストで招かれたのがカイリー・ミノーグでもちろん本人が演じているのも魅力の一つ。ヒュー・ジャックマンも招かれていて何度も登場するのだが後ろ姿だけで決して顔を見せないのも笑える。もちろんこちらは本人ではない。
そうそう、忘れちゃいけないのは、このドラマはその夜何が起こったかを後日公聴会で関係者を一人ずつ呼び出して証言させる形で進む。尋問する議員と証言者のやり取りがまた楽しいし、このドラマに独特のウィットを与えている。
このドラマは吹き替えで見ることをお勧めする。何しろ次々に新事実が出てきて展開が早い。その上カット割りがものすごく細かい。公聴会のシーンから突然事件当夜のホワイトハウスに戻り、また公聴会に取って返したりする。字幕を追っていたらとてもじゃないがついていけないだろう。
吹き替えもいいのが、声優もぴったりだし演出もうまくできている。カップのキャラクターが吹き替え上で新たに生み出された感さえある。だからと言って演出し過ぎてくどい、なんてこともない。うん、絶妙な吹き替え版だ。
面白いところを紹介するだけで1000字を超えてしまったがまだまだ語り足りない。ネタバレも出てくるのでまずは見てから続きを読んでね。

このドラマにはいちおう原作がある。『使用人たちが見たホワイトハウス - 世界一有名な「家」の知られざる裏側』という本で、タイトルでわかる通りミステリーではない。まさにこのドラマの魅力の一つ、ホワイトハウスを支える裏方たちの世界を書いたノンフィクションだ。
その裏側の世界に感心したポール・ウイリアム・デイビスがこの物語を創造したのだろう。それにしても、このポールって誰だ?実はよくわからないのだ。
Netflixで「For The People」という作品を作っているようだが、日本版には見当たらない。このページに経歴などが書いてある→ションダランドの新作殺人ミステリードラマ「The Residence (原題)」がNetflixでシリーズ化へ
日本では知られていないこのクリエイターは弁護士出身で、カップ並みの天才なのかもしれない。
8つの各話のタイトルが過去のミステリーのタイトルから取られているのは、彼が相当のミステリー好きなのを示しているだろう。
この話が面白いのは、当日の夜が明けてどうするかとなった時、首席補佐官ハリー・ホリンジャーに自殺だと強引に決めつけられ、推理は一旦停止されること。そんなことよりバードウォッチングが大事なカップはどこかのジャングルに行っていたが呼び戻され、最後の2話では彼女自身が公聴会で証言する形で真相が明らかになる。
Netflixではエグいドラマが話題になりがちで、いまは「アドレセンス」ばかり語られる。もちろん面白かったけど、好みで言えば「ザ・レジデンス」のほうがずっと好きだな。こういうの、もっと作ってもらいたい。

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