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映画「MaXXXine マキシーン」、3部作は神の国アメリカで、神と悪魔が交錯する物語だった

もちろん「X」「パール」に続くミア・ゴス主演、タイ・ウエスト監督3部作の最後の作品だということはご存知だろう。それ何?という方はどちらもAmazonプライムビデオにあるので見てから映画館で「マキシーン」を見よう。話はそれからだ。
この3部作はホラーということになっているがホラーだと思って見るとちょっと違うぞ、となる。1作目の「X」が70年代スプラッタホラーにありがちな、無軌道な若者たちが田舎に行ったら次々に猟奇的な殺され方をする、というパターンを模しているのでホラーと言えばホラーなのだが、3作目の「マキシーン」でホラーの形を借りたもっと違う何かのシリーズだったことが露呈する。「マキシーン」にもグロい場面は2箇所ほどあるが、本筋はスターへの道を歩み出す主人公のサクセスストーリーだ。いや、サクセスと言えるかはわからないが。そんなことより、「マキシーン」に至ってようやくこの3部作がアメリカの宗教を描いていることがはっきりする。ホラーには多くの場合、悪魔が出てきて宗教色はあるのだが、「マキシーン」はそういうことでもなく、「神の国アメリカ」を描いている。

「X」では廃虚のような農家に置いてあるテレビでずっと説教師の番組が放送されている。初老の説教師が喋り続けるのだが、なんと最後に若者の中で生き残ったマキシーンは説教師の娘であることが明かされる。それ、どういうこと?と思ってると映画は終わる。その次の「パール」は農家の老夫婦が若かった頃の物語なので説教師は関係ない。やっとそこがわかるのが「マキシーン」なのだ。だから「パール」は寄り道で「X」の直接的な続編は「マキシーン」なのだと言える。
「神の国アメリカ」とは、実はNHK「映像の世紀バタフライエフェクト」の4月21日放送回のサブタイトルだ。正確には「“神の国”アメリカのもう一つの顔」と表記されている。資本主義の権化でコンピュータもSNSも生成AIも生み出した最先端の国アメリカのもう一つの顔が“神の国”というわけだ。
その中に「テレビ説教師」が出てくる。アメリカのいわゆる南部州はキリスト教福音派、つまり聖書に書かれたことを重視する宗教心の強い地域で、中絶に反対したり進化論を学校で教えなかったりする。

70年代にケーブルテレビが普及すると何百ものチャンネルの中に宗教チャンネルもできた。79年のテキサス州(バイブルベルトの西端だ)の町はずれにある「X」の農家で流れていたのもそんなチャンネルの一つだろう。マキシーンの父親はケーブルチャンネルを運営できるほどの福音派集団を形成していたのだ。
ここからはネタバレがあるので映画を見た後で読むのがいいかもしれない。

この映画ではいろんなセリフが重要な意味を持っている。中でも重要だと思うのが「ハリウッドはカルトだ」というもの。実は誰がどんな文脈で言ったのか忘れてしまったのだが、「マキシーン」を解く鍵だと受け止めた。
神の国アメリカを描いたこの映画では悪魔と神が交錯し、入れ替わる。マキシーンの父親は神に仕えるはずなのに、マキシーンを殺す場面を映像に収めようとする。神の道を外れた彼女を戒めるあまり、悪魔のような行いをするのだ。
物語の背景にある連続殺人事件は実在の殺人鬼ナイトストーカーをモデルにしている。犯人は実際に死体に五芒星を刻み、まるで神の使徒が天誅を下したようだ。ここでも神と悪魔の交錯が起きている。
そしてハリウッドもカルトだとすれば、スターダムに昇り詰めようとするマキシーンは神になったようでもあり悪魔になったようでもある。
そうすると2作目「パール」で主人公パールが映画女優を夢見るあまり両親と映写技師を殺害するのはハリウッドの神に魅せられたからであり、オーディションに落ちて夢が破れると悪魔に身を落とすのだ。パールが殺人鬼になった本当の理由も「マキシーン」でやっとわかるのだと言える。
ハリウッドは夢の国の幻想を振りまくカルトであり、米国中の田舎娘をたぶらかす。ゴージャスなブロンド女優は女神たちであり、黒髪のパールはだから女神になれず突き落とされる。マキシーンはブロンドを誇る髪型にして監督にヒチコック女優のようだと言われる。
どこかマリリン・モンローのようでもあり劇中では彼女が出演した「ショーほど素敵な商売はない」の主題歌が聞こえてくる。不遇な育ちのマリリンは人気女優に昇り詰めセックスシンボルと呼ばれる。そう言えば「X」でマキシーンはセックスシンボルになるのだと言っていた。
ハリウッドは神の国アメリカの象徴であり幻想で固めたカルトなのだ。
そして「マキシーン」を神の国アメリカの物語だと見ると、トランプ政権が支持される背景も見えてこないだろうか。トランプの演説はテレビ説教師とほとんど同じだ。Make America Great Againのスローガンはまさに神の国アメリカの復活を説いているのだ。
テレビ説教師に導かれたパールは他者を次々に殺す悪魔になった。トランプに導かれたアメリカ国民は移民を拒絶し留学生を追い返す。もしトランプを打ち負かすマキシーンのようなスターが登場したとしても、彼女は新たな悪魔になるだけかもしれない。アメリカがそういう国だからだ。
というのは私の解釈だが、そんなことも考えたくなるくらいこの3部作は深い。そしてミア・ゴスはその演技力と魅力を爆発させている。芸術的エロ映画「ニンフォマニアックVol2」に出た後ホラーにばかり出てきた彼女はマキシーンそのものだ。意外にも彼女は英国出身の女優なのだが。
そんな3部作の最後だからこそ、キャストも豪華だ。ケビン・ベーコンはあっさり潰されるし、ジャンカルロ・エスポジートは意外にぶっ飛んでる、「テネット」ではいたいけなヒロインだったエリザベス・デビッキは上から目線の映画監督、リリー・コリンズは首が転がるし、ミシェル・モナハンは目を刺されて息絶える。きっと「X」に魅せられてみんな自分も殺してくれ、と言ってきたに違いない。製作費も増えたんじゃないのか。
世間では3部作の中で「マキシーン」に物足りないとの反応が多いようだが、「神の国アメリカ」をキーワードに読み解いてほしい。私は3部作の中で一番好きなのだがどうだろう。

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