映画「WEAPONS/ウェポンズ」ホラー映画だが、ホラー映画ではない
話題になっているホラー映画があると知ったのは11月最終週だった。ただ、「怖い!」という評判でもないようだ。それ以上の何かを嗅ぎとった私は、12月4日に平日だというのに午後の回を見に行った。こんな風に、独特の臭いを嗅ぎとって止むに止まれぬ気持ちで映画を見てしまうことがある。そういう時は十中八九面白い映画だ。「WEAPONS/ウェポンズ」も大正解だった!今年いちばんの映画かもしれない。少なくとも前日までいちばんだった「ワンバトルアフターアナザー」とどっちか悩んでいる。
日本ではたった33館のロードショーだが、北米では3000館以上だったそうだ。大ヒットして全世界で2億6,830万ドル(約415億円)もの興収を稼いだという。なんで日本でもっと大規模公開にしないの?予告編見たら絶対見たくなるのに。何バージョンかある中で、私はこの予告編が好きだ。
ネタバレしないおすすめ口上
この映画はホラー映画だ。超常的な現象が次々に起きるし、普通なら見えない恐ろしいものが見えたりする。エグい場面もいくつかある。分類すると一義的にはホラー映画として間違いはない。
ただ、この映画の面白さはちょっと別のところにある。ミステリー?推理もの?今風の言い方だと「考察もの」になるのだろう。謎が少しずつ解明されていくところに最大の面白さがあるのだ。
小さな町の小学生が、ある朝一つのクラスだけ登校しなかった。17名の生徒は、午前2時17分に一斉に家から走り出して消えてしまった。ただ、1人の生徒だけが残った。果たして何が起きたのか?子どもたちはどこに行ったのか?
複数の登場人物の視点で描きながら失踪後の重なり合った時間を描くことで、この謎が少しずつ解明されていく。この構成が絶妙だ。担任教師、父親、警官、浮浪者、校長、残った1人の生徒。順番に描かれるうち、恐るべき事件の真相が観客にわかる。もちろんホラーなので、そんなことってあるの?という人智を超えた真相だ。
最後の最後に、意外な人物の活躍で事件は解決する。そこで突如、ホラーでミステリーだったはずの映画がコメディになる。絶対笑ってしまうカットがある。監督はインタビューで「最後に笑わせたかった」と言っているが、実際私が見た時も爆笑で包まれた。それまで緊張していた観客が、張り詰めていた糸を緩めてもらったような感じだった。
それも含めて、構成がよくできていた。起きた出来事をそのまま時間通りに並べてもまあまあ面白いストーリーだったかもしれないが、視点を変えて同じ時間を見せる構成で面白さが何十倍にも膨らんだ。
もしあなたがまだこの映画を見ていないなら、絶対に見てほしい。近くで上映してなかったらごめんね。それと、ホラーが苦手な人は前半ちょっと我慢して見てください。途中からホラーがホラーじゃなくなるから。
※映画「WEAPONS」と「オブセッション災愛」の類似点について語ったPodcastです。ぜひ聴いてみてください。
ネタバレする感想
ここから先は、映画を見てから読んでね。
この映画で面白いのが、主人公が誰なのかがどうでもよくなることだ。それぞれのキャラのパートでは、それぞれが主人公に思えてくる。いちばん最初のパートが担任教師ジャスティンだし、魔女呼ばわりされた彼女が最後に真相に迫るのだから、彼女が主人公と言えなくはない。
だが事件を解決したのは父親でもあるし、何と言ってもアレックスが恐怖を乗り越えて呪いを不気味な叔母さんグラディスにかけてやっつけたのだから彼が主人公だったとも言える。普通のホラーならジャスティンが自分への疑いを晴らすべく敵地に乗り込んで解決するだろう。そうではないところが面白い。
WEAPONSというタイトルも不思議だ。どうやら呪いをかけて人間を武器(=WEAPONS)にする、という意味のタイトルのようだ。ポスターのメインビジュアルが、深夜に腕を広げて走る子どものシルエットで、そこに「WEAPONS」の文字が載ることからも、そういう意味だとわかる。一方で、子どもたちとマーカス校長が腕を飛行機状に広げて攻撃する姿は確かに武器だが、あのポーズは結局何なの?とも思う。グラディス叔母さんはもういないので、WEAPONSの説明は誰もしてくれない。
最後に叔母さんはWEAPONSに殺されたが、結局あれは何なのか?人間?魔女?アメリカの魔女はああいう呪いをかけるものなの?アメリカ人は森に悪魔めいた者が潜むと考えているらしいことはいくつかの映画でわかる。グラディスもその一人なの?だったらどうしてアレックス一家に「叔母さん」として登場するのか。
家に来た時は死にそうだったのに、両親と17人の子どもたちから精気を吸い取って元気になったのだろうか。
ザック・クレッガー監督はグラディスを演じた名優エイミー・マディガンにこんな指示をしたという。
クレッガーはグラディスのキャラクターに関する2つのヒントをマディガンに与え、どちらかを本人に選ばせた。ひとつは、不治の病を克服するため最後の手段として黒魔術に頼った普通の人間、もうひとつは人間のように振るまっている人ならざる生き物で、人間たちの前では老人っぽい容姿に偽装するため極端な化粧とウィッグを使っているという案だ。「エイミー(マディガン)に、2つの選択肢を提示して、“どちらか選んでください。別に僕に教えなくていいけど、どちらかね”と伝えました。だからエイミーがどっちの解釈で演技をしたのかは知らないんだ」とクレッガーは語った。
こういう演出もあるんだねー。
この映画には続編の話もあって、グラディス叔母さんの前日譚になるという。それは見たいね。結局この女は何者なんだ?
などなど、見た人同士でいくらでも飲みながら話せそうな映画「WEAPONS/ウェポンズ」、ぜひぜひみなさん見てね!
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