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王神愁位伝 第3章【鳥界境の英雄】 第33話

第33話 朱鳥の鎧、託された絆

ーー前回ーー

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"シュンシュンシュン!!!"
"タッタッタッタッタ!!!"
(急げ・・・急ぐっちゃ!!!)

狗鷲いぬわしはというと、伊久磨いくまに背中を押され、ソール軍といるがくを目指して走っていた。
一度踏み入れば必ず迷うと言われている鳥界境ちょうかいきょう。しかし、ここで生まれ育った彼には関係なかった。

(早く"朱鳥の鎧これ"治して・・・みんなを守るっちゃ!!!)

”タタタタタタタタタタタタタッ・・・”
勢いよく駆け抜けていく先、徐々に視界が開けてきた時だった。


"キィィィィィイン!!"
"キン!キン!ガキン!!"
「・・・っ!!」

狗鷲は思わず足を止めた。
やっとソール軍たちを見つけたと思いきや、そこでは鳥界境の空を覆うほどの大量のマダムたちが、ソール軍と応戦していた。

一度立ち入れば迷い、外に出ることは困難とされる鳥界境で、月族やマダムが現れることは極めて珍しかった。
しかし今、目の前には無数のマダムがいる。今までは考えられないこの状況に、狗鷲は唖然とした。
"キィィィィィイン!"
「!」

奥ではソール軍たちが応戦しているものの、もう戦える隊員は四人ほどしか残っておらず、疲れ果てている状況だ。また、副隊長である拝理はいりは片腕をなくし、口を駆使して弓矢を器用に使い、背後にいる子供たちを守っていた。

その状況に、”朱鳥あすかよろい”が限界を迎えていることなど忘れたかのように、狗鷲は両拳をぶつけ、再びセカンドを解放した。

「セカンド、火の解放・・・第五血響 烈火猛禽針雨れっかもうきんしんう!!!」

鳥の形をした火の針が上空にいるマダムたちに降り注ぐ。その強力な一撃により、無数にいたマダムの三分の一は消えていた。その隙に、狗鷲はソール軍の方に駆け寄っていく。
「・・・っ!お前は、狗鷲!!」

拝理は、駆け寄ってくる狗鷲に気づき、苦しそうに唇を噛みしめた。
「・・・・なんだ、お前。私たちの息の根を止めにでも来たのか?」

止血のため、布で覆われているものの血が滴る右肩。その先、右腕はない。そんな拝理の痛々しい様子に、狗鷲は眉を顰めた。
「・・・・・・。」

そのまま狗鷲は何も答えず、突然辺りをキョロキョロと見渡す。暫くして、怯える子供たちの側に、紫紺の隊服を着た少年を発見した。傷を負ったソール軍隊員たちを手当している。狗鷲は表情を明るくさせると、急いで駆け寄り——

「?」
"ガシッ!"
「お、お前さんが、がくっちゃ?」
「・・・え、え?」
岳は、突然狗鷲に迫られ、肩をびくつかせた。しかし、混乱している岳などお構いなしに、狗鷲は”朱鳥の鎧”を急ぎ外すと、岳に差し出した。

「これ、メンテナンスできるっちゃ?!」
いきなりの出来事に混乱しながらも、目の前にセカンドの武器を差し出され、飛びつく岳。

「これ・・・”朱鳥の鎧”だ!!」
目を光らせ、狗鷲の武器を触る。そんな彼に、狗鷲も驚きつつ口を開いた。

「・・・っ!よう知ってっちゃ。そうっちゃ。朱鳥家由来の・・・」
「由諸代々受け継いできた、朱鳥精鋭の武器職人たちが作ったものですよね?!うわあ!雀と千鶴の武器も凄かったけど、桁違いだ!!朱鳥家の力技に耐えられるだけの、この頑丈な作り!でも、繊細にセカンドの力を扱えるように計算された放出口!!・・・ぁあ、こんな風にここを繋げれば、上手くセカンドの力が調節出来るようになるのか!!しかも・・・」
”朱鳥の鎧”を目の前に興奮が止まらない岳は、今度は突然、狗鷲の両腕を触りだし・・・

「なるほど!!狗鷲さんは右手の方が筋肉量が多いのか!だから右の鎧が数ミリ厚く設計されてるんだ!!こんなに頑丈なのに・・・作りはすごい精密で繊細だ!!!本で読んだことはあるけど・・・こんな武器、見たことないよ!!!」
「そ・・・そうっちゃね?」
自身でも知らない構造まで、数秒で理解する岳の姿に、狗鷲は驚きを隠せなかった。

(す・・・すごいっちゃ・・・。朱鳥の武器職人でも、担当が変われば、その人の鎧の構造を理解するのに1日はかかるのに・・・今の一瞬でここまで・・・)
狗鷲はまだ話している岳を見て、ニカっと笑うと、”朱鳥の鎧”を岳の懐にグイッと差し出した。

"グッ!"
「?」
岳、わっちの武器、お前さんに託したい!!!
「・・・・。」

狗鷲の言葉に、驚き言葉が止まる岳。いや、息も止まっている様だ。
「・・・?どうしたっちゃ?お前さんなら、このぼろぼろな”朱鳥の鎧”、いい感じにメンテナンスしてくれそうっちゃ!」
「え、え・・・・ぇえ!?ぼ、僕?!?」
「そうっちゃ!時間がないっちゃ!今、雀様や千鶴たちが、あっちで月族と激闘を繰り広げてるっちゃ!わっちは、もう”朱鳥の鎧”がこんなんで・・・あと1発でも使えば粉々になる。急いでどうにか治して、戦いに戻らんと!!!」
「え、で・・・ででも僕は、せ、正式な武器職人じゃないし・・・その・・・」

元々研究部にいた岳は、精鋭の武器職人たちが集まる武猟班ぶりょうはんを目指していた。

しかし、武器職人たちが長年積み重ねてきたマニュアルとは異なり、他の人とは違う視点で武器を設計したり、メンテナンスする岳は毛嫌いされ、武猟班に入れてもらえず、武器職人になれなかった。
マニュアル通りに、と努めたこともあったが、どうしても納得いかず、結局我流を組み込んでしまうのだ。

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『こっちは、長年俺たちが積み重ねてきたマニュアルがあるんだ!それに反してメンテナンスするなど、言語道断!!!!職人の風上にも置けない。』

『そんな変な作りにしてしまって、セカンドが死んだらどうするんだ!!!武器職人は趣味でやる仕事じゃないんだ!!いい加減にしろ!』

『いくら武器の歴史や知識を沢山持っていたとしても、お前は職人失格だ!!!絶対なるな!!!』
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以前、武器職人たちに言われたことが脳裏に蘇り、震えが止まらない岳。今まで、澄徳すんとくの武器をメンテナンスする際も、出来る限り、マニュアルに沿って触ることしか出来ずにいた。

しかし、目の前に出された”朱鳥の鎧”は、他の武器とは全く違う。沢山武器を見て、研究し、勉強してきた岳だからこそ分かるのだ。これは、あのマニュアル通りでは絶対治すことはできない。自身が積み重ねてきた知識と少ない経験を総動員して、我流でやるしかない。
でも、武器職人でもない自分の我流でやって、果たして”朱鳥の鎧”を正常にメンテナンスすることができるだろうか。
そんな岳の震える肩を、狗鷲はガシッと掴み大きな声で言った。

「わっちの武器・・・”朱鳥の鎧”と言われるこの特殊な武器は、そこら辺の武器職人じゃ治せないっちゃ!!朱鳥精鋭の武器職人が途絶えた今、わっちらのことをよく理解しとる、お前さんしか治せない!!お願いっちゃ!!頼む!!!!お前さんしかいないっちゃ!!!」

狗鷲の言葉が、岳の心を揺さぶり、ナゼナゼ山で澄徳や幸十から授けられた言葉が脳裏を駆け巡った。

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『お前の腕は確かじゃ。じゃから、認められん者に与えるでない。お前を必ず認めて、必要としてくれるやつが必ず現れる。その時、お願いされたら、全力で作ってやりなさい。お前にしかつくれない武器は、お前が思うより多いと思うぞ。お前を必要とする人たちが現れた時、そのセカンドにとって最高の武器、最高の相棒を作れるよう、変わらず励むのじゃ。』

『俺がセカンドの力、使えるようになったら、俺の武器作ってくれる?なんかいいの作ってくれそう。』

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「・・・・っ。」
"ガシッ!"
「?」
すると岳は、懐に差し出された”朱鳥の鎧”を掴むと、真っ直ぐに覚悟を決めた瞳を向けた。

「こ・・・光栄です!!!最善を尽くします!!!」
岳の力強い言葉に、狗鷲はぱあっと表情を明るくさせると、岳に抱きつき背中を叩いた。

”バシッ!!”
「ありがとう、ありがとう!!わっちの相棒・・を頼むっちゃ!!!」
「う・・・ぐ・・・」
狗鷲の力強い抱擁に、全ての内臓が出るのではないかと思う岳だったが、これまでにないほどの高揚感に、身体が熱くなっていた。


"キィィィィィイン!!"
そんな状況でも、全滅していないマダムは攻撃を仕掛けてくる。
雰囲気などお構いなく、狗鷲と岳がいる方に数体向かってきた。
「うわわ!!」

しかし
"ガシッ!バーーーン!!"
「・・・え」

狗鷲は瞬時に立ち上がると、素手でマダムを吹き飛ばした。武器も使わず、すさまじい威力を目の当たりにし、岳が驚いていると・・・
「こっちは任せるっちゃ!!みんなまとめて、わっちが守る!!朱鳥の名にかけて!!!」

"シュン!!"
「わわ!!」
そう言うと、一瞬のうちに奥で戦っているソール軍たちの方へ応戦し始めた。

朱鳥の鎧これ・・・いるのかな・・・」
ボソッと呟く岳だったが、すぐに我に返り、持っていた大きなカバンから、沢山の道具を取り出した。

(趣味で持ち歩いてただけなのに・・・伝説級の”朱鳥の鎧”を、直接メンテナンスできるなんて・・・夢みたいだ!!)
岳は抑えきれない興奮と共に腕をまくり、準備を始めた。


ーー次回ーー

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