#07 存在の無条件肯定を急げ
(1)18歳以下の自殺は夏休み明けが最多
9月が始まりましたが、暦の上では秋となりました。しかし、まだまだ暑い日が続いています。小学生、中学生、高校生の皆さんは夏休みも明けて学校が始まっているでしょう。
実は、18歳以下の自殺は夏休み明けである9月1日が最多というデータがあります。去年全国で自殺した子どもは、小学生15人、中学生163人、高校生351人と多く、全員で529人の子どもたちが自ら命を絶っています。(子どもの定義について本稿では18歳までと定義)この人数は悲しいことに、過去最多だったそうです。夏休みが明けて一週間が経ちました。少し遅いですが、今回は学校に行かないことから存在の肯定について考えます。
(2)子どもの自殺は年々増加している
厚生労働省が出している令和6年版の「自殺対策白書」によると、自殺の原因・動機として、「家庭問題」の割合が高いのは、男女ともに小学生であるそうです。「健康問題」の割合が高いのは、女子高校生であり、「学校問題」の割合が高いのは、男性では中学生・高校生であり、女性では中学生だそうです。もう少し、具体的に見ていきましょう。
「家庭問題」とは主に、「家族からのしつけ・叱責」「親子関係の不和」。「健康問題」とは、「病気の悩み、影響(うつ病)」、「病気の悩み・影響(その他の精神疾患)」など。「学校問題」とは、「学業不振」、「その他学友との不和」、「その他進路に関する悩み」などだそうです。
自殺の割合は高まっているとはいえ、その内実は実にさまざまであり、一口に「~~が原因である」「~~するべきである」とは言い難いというのが筆者の率直な見解です。
しかし、筆者が思うのは、その想いというのは例え当事者であっても言葉にし難いものなのではないのだろうかと思うのです。そもそも社会が子どもの存在(=社会規模では個人の存在)に耳を傾ける、“傾聴する”ということを忘れているのではないかと思えてなりません。
(3)不登校もオルタナティブな学びの選択も増えている
少し前のデータですが、昨年の不登校児童・生徒の数は小中学校で約34万人と11年連続で増加しています。さらに、高校生の11人に1人が通信制高校を選択しており、新設される通信制高校も増えています。ただし、通信制高校に通っている=不登校というのは間違いです。通信制高校とは、柔軟なカリキュラムで学べる、いわばオルタナティブな学びを提供する高校です。そうした学びを選択する背景は、様々です。ここで注目すべきは、オルタナティブを選択する子どもたちが増えているという点です。既存の教育が問われているのでしょう。
不登校に対しての偏見や誤解が日本社会に溢れています。まず、そもそも教育についての議論においては、「~~が原因ではないか」「~~するべきではないか」と言ったような議論が先行しがちです。しかし、それって大人の想像じゃないですか?教育の当事者は子どもなのですから、当事者を置き去りにしていませんか?と言いたいです。
貴戸理恵さんと常野雄次郎さんの共著である『不登校、選んだわけじゃないんだぜ!』という本があります。今、学校に行けない、行かない、行きたくない、行っている人、親御さん、先生方、すべての人に読んでほしい一冊です。貴戸さんも常野さんも、不登校経験を持つ方です。元小学校不登校の研究者である貴戸さんと元明るい不登校の常野さんの率直な想いが伝わってくる一冊です。(最近はほんの紹介が増えていますが、筆者は回し者ではありません)
(4)理由もハッピーエンドもどうでもいい!
不登校というのは、何か明確な理由があるとは限りません。ここポイントです。貴戸さんの場合は、学校に行こうとすると腹痛やチック症状が出てきて忌避感を感じていたそうですが、当時もそして現在も、なぜ学校に行かなかったのかを明確に説明できないと言います。筆者の知り合いでも、「どうしてか分からないけど学校にくのは嫌だ」という人もいます。
つまり、何が言いたいかというと、不登校の原因探しにあまり意味はないということです。むしろ大事なのは、その原因探しに縛られるのではなく、まずはその状況を本人も周りの人も受け止めていいということです。無論、首根っこを掴んでも登校させるなんて論外ですね。
そして善意ではあるのでしょうが、しばしば「不登校は子どもの選択です」という肯定の言説を目にします。しかし、この「選択」という言葉が本人を追い込んでしまうのです。だって、その後の人生で所謂“学歴”が手に入らなかったり、仕事が続かないとか、職につけないということで本人が生きづらくなっても、「あなたの選択ですよね?」ということになってしまうのですから。不登校は「選んだ」と思う必要もないわけです。
そして、しばしば不登校を肯定する言説として、「元不登校の◎◎」のような取り上げられることがあります。不登校から復帰して、今やこんなエリート街道を歩んでいるというような希望をもたらす話ですね。確かに、そういう方もいらっしゃるでしょう。しかし、全員が全員そうなれるわけではありませんし、社会と繋がっては離れて・・・を繰り返す生き方もあります。一口に不登校といえども、10人いれば10の人生です。サクセスストーリーなんてものはありませんし、ハッピーエンドを求めるのはむしろ苦しくなるだけなのではないでしょうか。
ちなみに、筆者にも学校に行けなくなった経験があります。高校生の時、一週間学校に行けず、大学では3ヶ月療養期間に入りました。ただし、これは厳密には不登校の定義には入らないようですが。そして、筆者には発達障害という特性があります。しばしば、「障害は個性だ」と言われることもあり、卓越した一つの力がサヴァンなどと呼ばれて取り上げられることもあります。しかし、全員にそのような力があるわけではありません。「元不登校の◎◎」「障害は個性」これらの肯定の言説を捻くれた見方で捉えれば、結局、何かしらの能力がないと価値がない、肯定してもらえないということになります。生まれてきたくて生まれてきたわけでもないのに、社会のために?◎◎力?知らねーよ!って感じですよね。
(5)精一杯に咲いている(=生きている)のに理解者少ない・・・
こんな話をしていると、こぶしファクトリーの「桜ナイトフィーバー」という曲を思い出します。この曲、とても面白い曲で、桜の木の視点からストーリーが展開されます。例えば、一番のサビですがこんな歌詞です。
《桜ナイトフィーバー (2016年)》
桜 フィーバー フィーバー
咲き乱れ
乱れてなんかいないのに
やおら ブロウアップ ブロウアップ
風吹かれ
気がつきゃ吹雪と呼ばれてる
それってどうなんでしょう?
いかがなものでしょう?
精一杯に咲いているのに
理解者少ない
切ないですね。桜の木からすれば、乱れていないのに「咲き乱れ」と言われ、風に吹かれているだけなのに「吹雪」と呼ばれて、精一杯に咲いていることを誰も分かってくれない!という歌詞ですね。KANさんは素敵な曲をかきますね。本当に「でもね、涙が出ちゃうのよ」です。
要するに筆者が何を言いたいのかと言いますと、それくらい世間は勝手な解釈をして勝手なことばっかり言ってくるということです。何かと理由を探し回ったり、選択といって責任を押し付けてきたり、エリートに仕立て上げようとしてきたり・・・。結局、既存の社会の中で生きることを求めてくるわけですね。
それって変ですよね?だって、生まれてくるかこないかなんて選べないわけで、既にある社会に産み落とされて、そこに馴染みなさいなんて傲慢です。人間は生きているだけで価値がある、無条件に存在を肯定できる言説こそが求められていると筆者は考えています。
不登校の増加も、オルタナティブな学びを選択する人が増えていることは、既存の社会に押し込まれている人たちからのメッセージと受け取る必要があるのではないでしょうか。自分を見失う前に、自分を取り戻そうとする、ごくごく自然な状態です。むしろ、学校に行かないことが自然で、学校に行っていることの方が不思議です。だいたい、どれだけの子どもが「行かなくては行けないもの」ではなく、「行きたい」と思って学校に行っているのでしょうか。自分を大切にしてくれない場所に好き好んで行く人はそうそういません。「自分が大切にされていない」という若者や子どもの想いが、排外主義を台頭させているとも思います。
※楽器については筆者の独自解釈であり、公式見解ではありません。
《学校に行きたくないと悩んでいるあなたへ》
もしこの記事を読んでいて、「学校に行きたくない」と思っている方がいたら伝えたいメッセージがあります。行かなくても問題ありません、筆者も行かない時期があっても、大人になっています。あなたにはあなたを取り戻す権利があります。あなたを大事にしてくれない大人や社会の言うことを聞く必要はありません。親が先生が・・・という想いがあっても、嘘をついてでも、どこかへ遊びに行ってでも、自分を取り戻してほしいと思います。
親や先生は「あなたのためを思って」と言いますが、あなたと大人は別人格です。家族であっても、あなたはあなたで親は親です。別人格です。あなたのことはあなたに決める権利があります。もしよければ、下記のURLから子どもの権利条約を読んでみてください。これが少しでも、精一杯に咲いている(=生きている)あなたの勇気となることを当研究所は願っています。
https://www.moj.go.jp/content/001392920.pdf
《参考文献》
①「18歳以下の自殺は夏休み明け『9月1日』が最多 大人はどうする?「質の高い短時間より、ただそばにいる時間を」」TBS NEWS DIG 2025年8月31日(日)09:02
②厚生労働省「令和6年版 自殺対策白書」令和6年
③文部科学省「令和5年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」令和6年10月31日
④日本財団HP「高校生の11人に1人が「通信制高校」へ進学。多様化するカリキュラムとニーズの高まりが、その背景に?」2025年3月21日
⑤貴戸理恵・常野雄次郎(2012年)『よりみちパン!セ 不登校、選んだわけじゃないんだぜ!』イースト・プレス
