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お菓子はいりません【#せりふ三題噺】

「お菓子はいりません。だから、イタズラしてほしいです」

 目の前の男の発言に、私はどう対応すればいいのか分からなかった。今日はハロウィンだから「トリック・オア・トリート!」と声をかけたのだが、その逆を要求してきたのだ。

「……一体どうしてほしいのでしょうか」
「言葉通りです。あなたは『お菓子をくれなきゃイタズラしちゃうぞ』と言いましたよね。自分はお菓子はあげないので、イタズラしてほしいのです」
「だから、そのイタズラって具体的に何ですか?」

 男は少し考えたあと、口を開いた。
「私の出身の北海道には『ローソク出せ』という行事がありまして。ご存知ですか?」
「いいえ、初耳です」
「そうでしょうね。七夕に行われる、ちょっとハロウィンに似た風習なんです。『ローソク出さないとかっちゃくぞ』とか『噛みつくぞ』なんて歌いながら、近所の家を回るんですよ」

 男は懐かしそうに続けた。
「自分はね、人にローソクを出すのも、他人に出してもらうのも嫌だったんです。でも、かっちゃかれたり噛みつかれたりは……よかったんです。今となっては、目隠しされて暗闇で、熱々に溶かしたキャンディやローソクを背中に……」
「やめてください。あなたの趣味嗜好なんて聞いてません」

 男は少し残念そうにうつむいた。ひょっとすると、私と少し話がしたかっただけなのかもしれない。でも、ここでそんな話をされても困るので、ここでやめさせた。

 それでも彼は、何かを言いたげにこちらを見つめてくる。
「あなたと話すと、ポロポロと余計なことを口走ってしまいます。不思議な魅力ですね。きっと魔女なんでしょう」
「そういうあなたは、『マゾヒスト』ですね」
「ええ。魔女ではなく『マゾ』ですね。あなた上手いですね」
「……細かく突っ込まないけど、さっきの話を聞いた限りでは、まぁそうですよね」

 これ以上、相手をしていられないので私は振り返ってその場を去ろうとした。すると背後から男の声が響いた。

「ちょっと!まだ、イタズラされてませんよ!」
「仕方ないですね。じゃあ、立膝でその場に座って」
「はい!」
 男は右膝を立てて、その場に座った。
 私は少し助走をつけ、男の右膝を踏み台にして、左膝でその顔面に膝蹴りを喰らわせた。
膝が当たった瞬間、ゴリッと鈍い音がした気がする。
「魔女らしく、ここは閃光魔術シャイニング・ウィザードよ!これで満足しました?」

 男は、痛そうにその場に横たわってるが、どこか頬が弛んだ顔をしていた。


はらとけい様の企画に、またまた参加させて頂きます。よろしくお願いします。

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