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なぜ藤野は、京本に「あの言葉」を言ったのか。実写版『ルックバック』の小さな改変がすごい

個人的には大変満足。

別枠で長文感想の記事をつくるかはべつとして、是枝監督すげぇな、と映像の節々をみて思った。大胆な変更から、実に細やかな変更まで、漫画を漫画のまま実写に出力するのではなく、一本の映画として見事に描き切っている。

僕が妙に印象に残ったのはこのシーンだ。まだ一回しか見てないので記憶がだいぶ怪しい所ではあるのだけど、幼少期にも同じようなセリフが追加されていた。

↑のシーンに追加されていたような。『美術系の就職先なんて全然ないよ』ってセリフ

この追加によって、京本に向けた藤野の言葉が、漫画版とは少し違った切実さを持つ。

藤野は幼少期に自分が言われて嫌だったことを、そのまま京本に言っている

僕は漫画版でもアニメ映画版でも、恥ずかしながらこのシーンをそこまで深く考えていなかった。

でも実写版を見て、初めて幼少期の藤野とこの場面が一本につながった感じがする。漫画やアニメ映画では気づかなかったけど、このシーンは藤野の幼少期と対比されているのだ。

このシーンは、藤野の台詞と心のねじれが美しいと思う。

僕たちは藤野が、べつに本心からこのセリフを言っていないことがわかる。愛情の裏返し。藤野は京本とずっと一緒にいたいからこんなセリフを吐いてしまったのだと僕たち観客はわかっている。

自分が傷ついた言葉だからこそ、その言葉が相手を傷つけることを誰より知っている。なのに、追い詰められたときには、その言葉を一番大切な人に使ってしまう。相手のためを思っているような顔をして、自分のための言葉を吐く。

僕はこのときの藤野が、ものすごく人間らしく見えて、そして、こういうところに是枝監督の実写化のうまさがあるんだと思う。漫画のコマを忠実に再現することが「原作に忠実」ということではなくって、原作の人物が抱えていた感情を、映画という別の形式でもう一度成立させる。

たぶん実写化における忠実さというのは、そういうことなのだなと思う。

藤野が本当に望んでいたのは、京本の未来を閉ざすことなんかではなくて、ただ、隣にいてほしかっただけだ。だからこそ、あの言葉を思い返すと苦しい。人間は大切な人と別れる瞬間に、必ずしも大切なことを言えるわけではない。

むしろ逆かもしれない。

言いたかったこととは全然違う言葉を吐いて、その言葉だけが最後まで残ってしまうことがある。『ルックバック』という作品がずっと描いていた「もし、あのとき」という感情を、是枝監督はこんな小さな改変の中にも忍ばせていて、、、う~ん、スバラシ。

そう考えると、やっぱりすげぇな~と思いました。

考えすぎかもしれんけど、まぁ、意図的だと思ってます。

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