【ゴスロリ祭り④続編】ペンを落とした画家が描いた未来
肖像画を描き始める
【モノローグ】
自画像を託す作者に、R.Ashdownを選んだ闇落ちぱぐぱぱん。
理由は、消えゆくものを美化せず、正確に記録する画家だったからだ。
静かな部屋に、ペンが紙を走る音だけが響いていた。

【闇落ちぱぐぱぱん】
「角は二本だ」
「足も実物より長く描くな」
【R.Ashdown】
「分かっている」
「記録を曲げるつもりはない」
本当に描きたいもの
【モノローグ】
けれど、闇落ちぱぐぱぱんは気づいていた。
R.Ashdownの目が、自分ではない何かを追っていることに。
【闇落ちぱぐぱぱん】
「R.Ashdown」
R.Ashdownの手が止まる。
【闇落ちぱぐぱぱん】
「本当に描きたいのは、俺の姿か?」
カラン――。

R.Ashdownの手から、ペンが床へ落ちた。
【闇落ちぱぐぱぱん】
「やはりな!」
もう一度、自分の胸に問え
【闇落ちぱぐぱぱん】
「自分の胸に問うてみろ!」
「もう一度聞く」
「今、お前が描きたいものはなんだ?」

【モノローグ】
R.Ashdownは答えなかった。
代わりに、机の隅に置かれた写真へ目を向けた。
前回の面談で交わした言葉が、闇落ちぱぐぱぱんの脳裏によみがえる。
【回想・闇落ちぱぐぱぱん】
「最後の質問だ。誰と食べたい?」
【回想・R.Ashdown】
「娘とだな」
「次に訪ねてくるときまで、その店が残っていればいいが」
沈黙のあと、R.Ashdownはゆっくりとペンを拾った。
ものすごい速さで描き始める
【モノローグ】
次の瞬間――
R.Ashdownの手が、ものすごい速さで動き始めた。
先ほどまでの迷いは、もうなかった。
【闇落ちぱぐぱぱん】
「そうだ」
「その線だ」

【R.Ashdown】
「まだ店が残っているうちに……」
「いや、違う」
「今度は、私のほうから訪ねよう」
【モノローグ】
描いていたのは、闇落ちぱぐぱぱんの角でも、羽根でもなかった。
完成した肖像画

題名:海をたどって、君と食べる
制作エピソード
六十一歳の冬、R. Ashdownは母の遺した家で、机の隅にある娘との写真を長く眺めていた。森や海から消えていく命を追ううち、自分にも会いに行ける時間が無限ではないと気づいたのだ。彼は旅支度の代わりに、まず一枚の未来を描いた。雪原のたこ焼き屋で、産地の分かるタコを使った一皿を娘と囲む場面である。店長の闇落ちぱぐぱぱん、その羽根に忍ばせた海の記憶、二人の串から立つ湯気。若い頃なら喜びを色で塗り重ねただろう。だが円熟した彼は、白い余白を残し、娘と目を合わせる瞬間にだけ金色を置いた。それは願望ではなく、まだ動けるうちに実現させるための静かな旅程だった。
【モノローグ】
そして完成した作品は――
R.Ashdownが娘と一緒に、たこ焼きを食べながら会話している姿だった。
まだ訪れていない、未来の一場面。
【R.Ashdown】
「私は、これが描きたかったのか……」
闇落ちぱぐぱぱんが、完成した絵をじっと見つめる。
【闇落ちぱぐぱぱん】
「待て」
「この店の奥にいるのは……俺か?」
絵の中では、角を生やした小さな店長が、険しい顔でたこ焼きを焼いていた。
【R.Ashdown】
「娘とたこ焼きを食べるなら、この店だと思った」
「そして、この店の店長は君だ」
闇落ちぱぐぱぱんは、満足そうに腕を組む。
【闇落ちぱぐぱぱん】
「なるほど」
「ならば、これは間違いなく俺の肖像画だ」
【R.Ashdown】
「主役は、私と娘のようにも見えるが」
【闇落ちぱぐぱぱん】
「二人の未来を焼いているのは俺だ」
「つまり、俺が主役だ」
【モノローグ】
こうして完成したのは、R.Ashdownが本当に描きたかった未来。
そして、その未来の中でたこ焼きを焼く、闇落ちぱぐぱぱんの肖像画だった。
姿を記録するだけが、肖像画ではない。
その人物が誰かの人生に、どのように存在しているのか。
R.Ashdownは、それを一枚の絵に残した。
【締め】
娘と語り合う未来を描いた画家。
その未来には、たこ焼き屋の店長になった闇落ちぱぐぱぱんがいた。
【小さな注釈】
※店長は「たこ焼きだけでなく、未来も焼いた」と主張しています。
【次回予告】
「俺からも頼みがある…叶えてくれるか?」
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