魔法のスイッチ:自動から手動へ
都内の静かなカフェ。
サチはスマホの画面を見つめたまま、小さくため息をつきました。SNSに流れてくる、キラキラした誰かの日常。
「いいなぁ、この人は自由があって。仕事も楽しそう。それに比べて私は……」
その瞬間、サチの頭の中で【絶望の自動変換プログラム】が発動しました。
「羨ましい」を検知しました。
自動変換実行中……
結果:「どうせ私には無理」「私には何もない」に変換されました。
サチの心は、どんよりとした重い雲に覆われます。「ああ、やっぱり私には無理なんだ」と、いつもの「拗ねモード」に突入しかけたその時。
「それ、いつまで自動運転しとくつもり?」
顔を上げると、向かいの席に、ニコニコと楽しそうにコーヒーを飲む女性——麻貴さんが座っていました。
「麻貴さん……。だって、あの人はあんなに軽やかに動けて、家族にも理解があって。羨ましくて仕方ないんです」
麻貴さんは笑って答えました。
「サチさん、ちょっと想像してみて。オリンピックで金メダルを獲った選手を見て、『あんなに速く走れて羨ましい!』って本気で悔しがる?」
「えっ?……いえ、それは別格というか。凄すぎて『羨ましい』とは違う気がします」
「そうでしょ? 『羨ましい』って感情はね、実は『自分とそんなに差がない相手』にしか湧かないのよ。 つまり、潜在意識では『私にもできるはずなのに!』って分かってる証拠なの。これって、凄くポジティブなサインだと思わない?」
サチは目からウロコが落ちる思いでした。
「じゃあ、私が感じていたモヤモヤは……」
「そう、『あと一歩で手が届くよ』っていう、自分からのエール。 なのに、頭の中の自動変換機能が、勝手に『無理』って書き換えてるだけ。そんなバグった機能、さっさと『手動』に切り替えちゃいなさいよ」
麻貴さんは、空中に大きなレバーがあるかのようなジェスチャーをして、グイッとそれを倒しました。
「手動に切り替えたら、あとは一歩踏み出すだけ。動ける人は、勇気があるんじゃなくて、ただ試して進んでるだけなんだから」
「でも……失敗したら怖いし、そんな勇気……」
サチが言いかけると、麻貴さんは「待ってました」と言わんばかりにニヤリと笑いました。
「『勇気があって良いねぇ』って言いたくなった?……知らんがな〜!笑」
「えっ!?」
「はよ、やりなはれ〜!笑」
その豪快な笑い声に、サチも思わず吹き出してしまいました。
数分後。
サチはスマホを閉じ、カバンから一冊の手帳を取り出しました。ずっと「いつかやりたい」と羨んでいた、小さなワークショップの申し込みページを検索します。
「羨ましい」という気持ちが湧くたびに、サチは心の中でカチッとレバーを引きます。
「いいなぁ。……ってことは、私もできるってことだね。よし、やってみよう」
自動変換に支配されていた昨日の自分に、サチは心の中でバイバイを告げました。
一般社団法人パラダイス・バードのカウンセラー紹介
TEAMS PARABA | paradisebird
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