鏡のなかの迷子たち
霧雨の降る午後、都心のセミナールーム。匿名希望の「彼女」は、少し緊張した面持ちでパイプ椅子に座っていた。
今日のテーマは、人生を自分らしく生きるための『ココロの整理術』。講師の麻貴は、凛とした佇まいのなかに、どこかいたずらっぽい光を瞳に宿して登壇した。
「セミナーの内容は、驚くほどスルスルと頭に入ってきました」
彼女は心の中で頷く。麻貴の言葉は明快で、論理的だ。「なるほど、そう考えればいいのか」と、余裕を持ってノートを取っていた。ここまでは、知的な探求に過ぎなかった。
しかし、後半のオープンカウンセリングが始まった途端、空気の色が変わった。
予期せぬ「自爆」
他の参加者の悩みが、まるで自分のことのように胸に刺さる。いわゆる「流れ弾」だ。そしてついに自分の番が回ってきたとき、彼女は言葉を失った。
「どこにいても、なんだか馴染めないんです。ふとした瞬間に疎外感を感じてしまう。理由がわからないんです」
麻貴は、じっと彼女の目を見つめた。その視線は優しくもあり、同時に逃げ道を塞ぐような鋭さも持っていた。麻貴は「ドSな標準装備」を発動させる。
「ねぇ、それ……お母さんの影じゃない?」
その一言は、彼女の心の防波堤をあっけなく決壊させた。
「まさか」という驚きと、「やっぱり」という納得が同時に押し寄せ、視界が涙で滲む。今まで自分でも気づかないフリをして、頭の片隅に追いやってきた感情。疎外感の根っこは、社会でも友人関係でもなく、最も身近な「母」との関係に眠っていたのだ。
抜け殻の先に見えた光
カウンセリングが終わったとき、彼女は文字通り「抜け殻」になっていた。
何年も抱えていた重たい荷物を、無理やり解かれたような疲労感。けれど、不思議と心は軽かった。
「他人は自分の鏡」
麻貴の言葉が、今度は深く腑に落ちていく。お母さんを投影していたから、周りの人も「私を受け入れてくれない存在」に見えていただけ。根っこが分かれば、あとは手放すだけだ。
帰り際、彼女は麻貴に心からの感謝を伝えた。
「母との距離も、周りの人との付き合いも、これからはもっと楽にやっていけそうです」
新しい季節へ
セミナールームを後にする彼女の背中は、来た時よりもずっと柔らかくなっていた。
一方で、麻貴は次なる地での個人カウンセリングに向けて準備を進めている。
「次はどんな『悩みグセ』の根っこを見つけにいこうか」
ドSな微笑みを標準装備して、彼女は今日も誰かの人生の鏡を、鮮やかに磨き上げている。
一般社団法人パラダイス・バードのカウンセラー紹介
TEAMS PARABA | paradisebird
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