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魔法の「ちゃん」が繋ぐ場所

その町に足を踏み入れると、時間の流れが少しだけ穏やかになる。
坂道を下りてきた白髪の男性に、部活帰りの中学生が人懐っこい笑顔で手を振った。

「よしおちゃん、こんにちは!」
「おぉ、元気か。気をつけて帰るんだぞ」

七十を超えた「よしおちゃん」は、照れくさそうに、でも嬉しそうに目を細める。

この町では、年齢も肩書きも、性別さえも、名前の後ろにつく魔法の三文字「ちゃん」の前では消えてしまう。二十歳の若者も、八十歳の長老も、みんな等しく「〇〇ちゃん」だ。

町へやってきたばかりの頃、カウンセラーの「私」はその光景に戸惑っていた。
「おじいちゃんに見えるけれど……本当にちゃん付けで呼んでいいの?」
「目上の人に対して、失礼にならないかな?」

心の中にあった「常識」という名の小さな壁。
けれど、勇気を出して「まさおちゃん!」と呼んでみた瞬間、その壁は音を立てて崩れた。返ってきたのは、親戚のように温かく、境目のない柔らかな笑顔だった。

「ちゃん」と呼ぶ。
それは、相手をひとりの人間として、まるごと愛おしむ合図。
「ちゃん」と呼ばれる。
それは、いくつになっても「その人自身」でいていいのだという許可証。

不思議なもので、呼び方ひとつで心の距離は一気に縮まる。
「おじさん」と呼んでいた時は遠くに感じた背中が、「ちゃん」と呼んだ瞬間に、隣で一緒に笑い合える仲間に変わる。

「私」は今、カウンセリングや講座の場でも、一番にこう尋ねるようにしている。
「なんて呼んでもらいたいですか?」

それは単なる確認ではない。
あなたの心の一番柔らかい場所に、そっと触れさせてくださいという、私からの最初のご挨拶。

「はなちゃん」
「ゆきちゃん」

名前を呼び合う声が響くたび、そこには優しい安心感の種がまかれる。
今日もどこかで、誰かが誰かを「ちゃん」と呼ぶ。
たったそれだけのことで、世界は昨日より、少しだけ優しくなれる気がする。


一般社団法人パラダイス・バードのカウンセラー紹介
TEAMS PARABA | paradisebird

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