AI翻訳がここまで賢くなった今、それでも僕が新しい言語を自分の頭に入れ続ける理由
先月、韓国のとある取引先とのオンライン商談で、ちょっと悔しい出来事がありました。
こちらは日本側、あちらは韓国側。英語でもある程度は意思疎通できる相手だったんですが、せっかくなので僕は事前に用意しておいたAIの同時通訳アプリを画面共有で流しながら、資料の説明をしていたんです。数字や条件面のやり取りは驚くほどスムーズでした。
誤訳もほぼなく、むしろ英語で頑張って喋るより正確なくらい。「これ、もう語学なんて勉強しなくてもいいのでは」と、内心ちょっと思ったくらいです。
でも、商談の最後に先方の担当者が、資料とは関係ない一言を韓国語でポロッとつぶやいたんですよね。
たぶん「今日は長かったな」みたいな、雑談レベルの一言。AIアプリはそれもきちんと訳してくれたんですが、訳文が画面に出るまでに2〜3秒のタイムラグがあって、僕が「あ、そうですね(笑)」と反応した頃には、もう空気が一段階冷めていたんです。相手も一瞬「あれ、伝わってなかったかな」という顔をしていました。
内容は完璧に伝わっていたのに、「間」だけがズレた。
それだけのことなんですが、これが地味にこたえました。英語やフランス語、イタリア語の商談では、こういう一瞬の空気は自分の耳と口でリアルタイムに拾えるので、なおさら差を感じてしまったんだと思います。
正直に言うと、僕は帰国子女でもなんでもない、いわゆる純ジャパの会社員です。米国・フランス・イタリアを担当してきた中で、必要に迫られて英語・フランス語・スペイン語・イタリア語を独学で身につけてきました。
今は韓国語をAIを使って勉強していますが、正直「もうAIがあるんだから、ゼロから言語を覚える必要なんてないのでは」と、一瞬でも思ってしまった自分がいたのも事実です。
でも、あの2〜3秒のタイムラグの一件で、はっきりわかったことがあります。
AIが完璧に訳してくれるのは「情報」であって、「間」や「温度」までは今のところ完全には運んでくれないということです。雑談の一言に笑うタイミング、ちょっとした沈黙、語尾のニュアンス。ビジネスの本題そのものよりも、実はそういう周辺の部分の方が、相手との距離を縮めたり、次の商談につながったりすることが多い気がしています。
それ以来、僕は韓国語の勉強のスタンスを少し変えました。
AIに教材や例文を作ってもらうこと自体はこれまで通りフル活用しつつ、「意味がわかればいい」フレーズと、「自分の反応速度で拾えるようになりたい」フレーズを分けて練習するようにしたんです。
特に、相槌や相手の感情が乗りやすい短い一言は、AIの訳を待たずに自分の耳で拾えるように、毎日の学習の中で意識的に増やしています。
思えば、英語もフランス語もイタリア語も、僕が本当に「話せるようになった」と実感できた瞬間は、単語や文法を覚えたときではなく、相手のジョークに0.5秒遅れずに笑えたときや、会食の席で「それ、うちの国でも同じですよ」と自然にツッコめたときでした。
数字や契約条件のような「正確に伝わればいい情報」は、極端な話AIに任せてしまってもビジネス上は困りません。むしろそこに時間をかけるより、お酒を飲みながらの雑談や、現地の胃に優しいメニューを一緒に選ぶような場面でこそ、自分の言葉で反応できる方が、後々の関係性に効いてくる実感があります。
考えてみれば、これは語学に限った話でもない気がしています。
仕事でもプライベートでも、内容そのものは正確に伝わっているのに、タイミングがズレただけで「なんとなく噛み合わなかった」と感じることって、意外と多いんじゃないでしょうか。ツールがどれだけ優秀になっても、その場の空気を自分の感覚でつかむ力までは、代わりに持ってきてはくれない。だからこそ、任せられるところはAIに全力で任せつつ、自分でしか拾えない部分にこそ時間を使う。それが今の僕なりの答えです。
みなさんは、仕事や日常の中で「内容は伝わっているのに、なぜかタイミングがズレて噛み合わなかった」という経験、ありますか。よかったらコメントで教えてください。次回は、その韓国語学習で実際に僕が毎日使っているAIプロンプトの中身を、もう少し具体的にご紹介しようと思います。

