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通院日記102_地域病院_通院95日目  今日は妻の退院の日。 5時に起きて、寝付けなくなった。 そのまま起きて食事を済ませる。 妻の味見の分も・・・

20250623(月) 地域病院 通院95日目


 付き添いの56日目。
 今日は妻の退院の日。

 5時に起きて、寝付けなくなった。
 そのまま起きて食事を済ませる。
 妻の味見の分も、見込んで買ってあったので量が多い。
 ついでに冷蔵庫の中で、今後は食べそうもないものを整理する。
 昨晩妻に命の注入をし忘れたので、今朝しておく。
 「寿命が半分もらえますように。」
 「もうあげているから。」
 少しだけ熱っぽいと感じる。
 けれどそれほどでもない。

 天気予報では、1日曇りだ。
 少し安心する。
 猛暑では、駐車場から部屋までの移動でも、妻は消耗してしまいそうだ。
 でも気温は34度まで上がるようだ。
 朝の検査は血圧、体温とも正常値。

 8時に医療麻薬の張替があり、すぐに朝の回診がくる。
 CT検査を入れてくれた、若い医師も珍しく入ってきた。
 今日が退院なので、これまでのお礼を、丁寧に述べておく。

 退院の準備を進める。
 荷物を種類別にまとめて整理。
 夜番の看護師が交代の挨拶に来たので、これまでお世話になった事にお礼を伝えた。
 付添い用の、レンタル寝具の請求書も持ってきてくれた。
 400円と聞いていたけれど、やはり1日で400円だった。
 そりゃそうか。
 付き添いをはじめて、55日目だということだ。
 そんなに日が経っていたとは。
 請求も2万円を超えていた。

 昼番の看護師も、あいさつに来てくれた。
 若いので、遅番でよく担当をしてくれた看護師だ。
 「退院までですけど、よろしく。」
 栄養点滴がもうすぐなくなるので、交換しておきましょうと言ってくれる。

 整理された荷物を、少し車に運んでおく。
 途中ナースステーションで、時々会話する看護師と会って挨拶する。
 9時半に義姉がやってきた。
 一緒に荷物整理をしていると、担当医師がやってきて、退院前の様子を見ていく。
 「やっと退院できます。一時はもう死にたいくらいの感じでしたけど、ここまでこれました。ありがとうございました。」
 「そうですね。シャバに復帰って感じですね。ま、シャバは厳しいですから。階段とか大変ですからね。」
 担当医師も入院の経験があって、復帰が大変な時があったという。
 「無理しないように頑張ります。」
 「絶対、何かやらかしそうだね。」
 なかなか、妻の性格をわかってくれている。
 ・・・と思ったけれど、病状のことかもしれない。
 「そうかもしれないですね。そしたらまたすぐに戻ってこなくちゃならない。」
 恥ずかしそうに、妻が笑っている。

 昼番の看護師が、在宅分の薬を持ってきてくれた。
 結構な量になっている。
 コンビニの中くらいの袋一杯、という感じだ。
 栄養点滴のエオネルパも、新しいものと取り換えてくれた。
 持ち帰る薬の説明をしてくれた後に、妻が手首に巻いていたバーコードを出してくれという。
 それをハサミでカットした。
 「解放!」
 看護師が、にこやかにそう叫ぶ。
 「おお、釈放だ!」
 「やった。これで自由が・・・。」
 こちらも、用意していたお土産をお渡しするセレモニー。
 その後は、見知った看護師に、挨拶とお礼をしていく。
 途中、妻がよく廊下で会話していた、同じく癌で治療中の年配の女性とも話をしていた。
 診察券も返してもらった。
 今日は駐車料金も割引が適用されるということだ。
 精算機での支払いは1200円。
 いつもは8000円くらいだった。
 「まじでエグかったわ。駐車場代。」
 妻は知らん顔だ。
 駐車場代がかさむから自転車で来ると言ったのを、付き添いの時間が短くなるから車で来てくれといったのが妻だ。
 とはいえ、気持ちはお金で買えないのだと、納得はしていたのだけれど、ひと言くらいはいいだろう。
 自転車でいいといわれた時には、折りたたみのスポーツ自転車を買ってしまおうと、思っていたのはないしょだ。

 義姉を車で家まで送った後に、2人になってから気になっていることを確認した。
 「先生に死にたいとか、言っていたの?」
 そうじゃないということだ。
 「一旦緩和に向かったでしょ?それで今治療してたら、こっちに猜疑心が湧くよね。そんなふうに思っていませんよって、そういうことをね、伝えておいたの。」
 こういう社交性というか、したたかで正直な付き合いというものを、僕は持ち合わせていない。
 普段は気が小さくて、幼いことばかり言っている妻は、こんなところで芯の強さを感じさせてくれるのだ。

 家に帰ってくると、妻は早速洗濯を始めた。
 一度目は布団カバーなどの大物。
 それを干してから、病院での着替えなどを洗濯して、乾燥をかけている。
 昨日のうちに、掃除をしておいてよかった。
 でなければ、今日妻がやってしまっていただろう。
 妻が荷物整理などをしている間に、僕はイオンへ買い物へ行く。
 ついでに行きつけの薬局で、血圧計と氷枕も買ってくる。
 1日1種類は果物を買ってこようと思っていて、今日は妻のリクエストのスイカを買っていく。
 出回り始めているトウモロコシも、1本だけ買っていくことにした。

 その後近くのパティスリーへケーキを買いに行くというと、自分も一緒に行くと言い出す。
 「今日はもうずいぶん動いてるし、次に一緒に行こう。」
 「明日とかじゃダメなの?」
 「明日と明後日は定休日なんだよ。」
 「一緒に行きたいよ。カフェもあるんでしょ?」
 「歩いていくと割と距離があるから。今日はだめ。少し休んでいてよ。」
 「今日が、私の一番元気な日かもしれないんだよ?」
 「そんなこと、あるわけない。」
 本当にしぶしぶという感じで留守番する。
 いつも閉店時間に駆け込んでいたので、今日はまだ早いからたくさん種類があると思っていくと、3種類しか残っていなかった。僕が見ている間に、抹茶ケーキのようなものが追加された。ケーキ2つとフィナンシェを2つ買っていく。ケーキはメロンのショートケーキとチョコレートムース。どちらも美味しそうだ。

 帰ってくると相変わらず、こまごまとしたものの整理をしている。
 16時半にケアマネージャーがやってくるので、部屋の香りも補充してスティックをひっくり返したりと、余念がない。

 ケアマネさんとの打ち合わせは、契約内容の確認などを含めて、1時間程度かかった。
 その間も、はきはきと元気に対応している。
 このところでは、もちろん1番活動的だ。
 病院で寝ているから、病人になってしまうということなのだろうか。

 お風呂に入る妻を見る。
 病院で体を拭きながら、ひどく痩せてしまったと思っていた。
 でも実際裸になってみると、言葉で表現したくないほどに、痩せ細ってしまっている。
 以前の容姿を、覚えているからかもしれない。
 腹水も立っているとお腹が下がってくるので、思っていた以上に溜まっているような気がしてしまう。
 そんなにすぐに変わりはしないから、気のせいだろうと思うのだが。
 本当に、どうしてこんな病気になってしまったんだよと、妻を責め立ててやりたい。
 そんなことはできないのだけれど。
 これは何とかして、栄養を取ってもらわないといけない。

 今日は朝から妻は寝ておらず、家に帰ってこまごまとした事を続けていた。
 疲れが顔に出ている。
 本人は久しぶりに家に帰ってきて、自分の領分を確かめるように、洗濯をしたり片付けをしていたから、どうしても休んでくれとは、言う気にはなれなかった。
 来客もあり、気を張っていたから相当疲れているはずだ。
 でも、自分では疲れに気が付いていないようだ。
 「今日は病院の10日分くらい動いてるからね。ごはん食べたらちゃんと寝てくれ。」
 実際、今日の運動量は、点滴の40mlでは全然足りないのだ。

 今日の夕食
 たまごかけご飯、コンソメスープ、手羽焼き
 妻の食事はコンソメスープだ。
 これにはコンソメのほか、手羽焼きを煮込んだ後で、セロリとニンジンも加えたもの。隠し味にニンニクとショウガが入っている。スープだけで、できるだけ栄養が取れるようにと思って作ってみた。味の方はかなり好評だった。明日の朝は残りのスープだ。今日は特別に生卵も溶かし込んで妻に食べてもらう。

 食事を済ますと、さすがに疲れが出てきたのだろう。
 「私、オランザピンを舐めたら、すぐに寝そう。」
 「そりゃそうだ。すぐ横になって休んでくれよ、ほんとに。」
 7時半にオランザピンを舐めて足揉みをする。
 ふくらはぎもマッサージするのだけれど、かなり張っている。
 やはり疲れている。
 「眠くなっちゃったから、もういいよ。」
 驚くべきことだ。
 足揉みをほとんどやらずに妻が眠るとは。
 「明かりは点けておいてもいいからね。ぜんぜん眠れそう。」
 というけれど、部屋の明かりは消しておく。

 妻の眠った暗い部屋で、2つ買っておいた残りのケーキを食べる。
 チョコレートムースのケーキは、くせがなく軽い感じで、とても美味しいものだった。
 まさか本当に今日を逃したら、パティスリーには2度と行けなかったなんてことには、ならないだろうな。
 そんな心配が、まったくばかげているとはいえない。
 それでも、今日は退院して家事なんかもやってこれたのだから、喜ぶべきだろう。
 そして今、こうして家に2人でいることは、妻が起こした小さな奇跡なんだ。


妻の日記 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
6月23日(月)☁

退院
自宅にて そうじに精を出す
16:30 ケアマネさんと面談
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