映画『メイソウ家族』 感想文:メイソウしているのは家族なのか映画なのか…

2025年 日(2025年8月29日公開)
1話『YUI』:お互いに向き合わなくなった4人家族の崩壊と思いがけない修復の糸口を描いた異質なホームドラマ。
2話『MONOS』:未知の生物との出会いが彼らの運命を狂わせる。『YUI』の5年後を描く『MONOS』は、正体不明の生物を車で轢いて死なせてしまったカップルの顛末を追う近未来ドラマ。
3話『UMI』:失声症の中学生と、彼女の個別授業を受け持つ教師の交流を描いた瑞々しい学園ドラマ。
※ネタバレを含む気ままな感想文です。ご了承ください。
産学協同という名の企画映画
「産学協同」とか言われるとなんだか身構えてしまいますが、要するに大阪芸大による企画物です。公式サイトによれば、こういうことだそうです。
大阪芸術大学の学生たちが映像業界のプロとタッグを組んでドラマや映画を作る「産学協同プロジェクト」11 作品目の映画『メイソウ家族』。大学に所蔵されていた学生作の秀逸な3本のシナリオを在学生たちがアレンジし、さらに卒業生・現教員であり、日本映画界を代表する熊切和嘉監督と金田敬監督によって、交わるはずのなかった3つの物語を1つの世界として緻密かつ大胆に構成され、映画作品として結実した。
第1話『YUI』と第3話『UMI』の監督が熊切和嘉、第2話『MONOS』が金田敬監督。
ちなみに製作統括の田中光敏は大阪芸大の「学科長」だそうで、第1話の怪しい教祖役で出演しています。彼の監督作は『化粧師 KEWAISHI』(2002年)しか観てないな。
私は熊切和嘉ファンですが、最近は少し思うところもあるんです……って話は『658km、陽子の旅』(22年)で書いたので省略しますけどね。
正直、第3話は熊切和嘉らしい演出でしたが、1話目は熊切演出だとは全然分からんかった。こんな演出もするんですね。
石井聰亙『逆噴射家族』(1984年)かと思った(笑)
映画は面白く観たんですがね、何ていうのかな、話が「青臭い」。
学生の脚本だからでしょうか?そんな先入観を持たずに観たつもりなんですけどね。
最近、「産学協同」という言葉をよく耳にします。まあ、若者にとっては貴重な経験ですし悪いことではないんですが、昔は大人の手を借りなくても、やる学生はやったもんじゃない?
「今時の若者は…」とか言いたくはありませんが、今の学生に『鬼畜大宴会』(1997年)は作れないだろ?ま、当時の学生にも作れなかったけどね、普通は。
これが令和の今問う「家族」なのか問題
家族をテーマにした作品は、時代の反映だと思うんです。
小津安二郎は『東京物語』(1953年)で「家族って、案外薄情よね」と描きましたが、日本人はサザエさんからドラえもん、クレしんに至るまで、一定の家族像・家族観を共有してきたと思います。
ところが、1980年代頃から、映画は家族関係の変化を如実に描くようになった……と私は感じています。
森田芳光は『家族ゲーム』(1983年)で「家族なのに他人みたい」という状況を描き、石井聰亙は『逆噴射家族』(1984年)で「家族=クレイジー」と暴きました。
そしてゼロ年代に入ると、「他人なのに家族みたい」という擬似家族の物語が増えてきます。
例えば、園子温『紀子の食卓』(2006年)、三木聡『転々』(2007年)。
こうした家族の変遷に、黒沢清は『トウキョウソナタ』(2008年)で真正面から挑みます。家族が「壊れる」というより、「朽ちていく」という印象。
ゼロ年代は、「家族」という枠組みの変容が表面化した時代だったのかもしれません。少子化対策とか、この時に手を打っておくべきだったんじゃないかな?
そう考えると、2025年の今、「家族」をテーマとして、これで良かったのかなあ?「青臭い」というより「古臭い」印象がないでもない。
現代的な多様性とか学生らしい突飛な視点とか、そういうのがもっと欲しかった気がします。
それでも「いまどき」の視点を褒めよう!
第3話『UMI』の「失声症」と「個別授業」というのは今時ですね。「合理的配慮」ってやつですね。昭和ではあり得ない設定。
あれ?『聲の形』(2016年)ってのは何だっけ?聴覚障害?百恵ちゃんの『春琴抄』(1976年)は?あ!本作第2話の金田敬監督、2008年に長澤奈央と斎藤工で『春琴抄』撮ってる!(<話が脱線しすぎ)

第2話『MONOS』はね、都市伝説とか信じちゃう偏った情報源で生きている男が今時でしたね。これは本作で(貴重な?)風刺だったかと。
ただ、あのスプーンは「鉄」ではなくてアルミ製だと思うけどな。

第1話『YUI』はね、戸田菜穂ちゃん(<我が家では『(ハル)』(1996年)の頃から戸田菜穂ちゃんと呼んでいる)が食卓にフルーツ出してるだけで思わず笑った。何だろう?何が可笑しいんだろう?もはや「絵に描いたような家族」はコントにしか見えないのかな?

でも、もっと絵にかいたような「理想の家族像」だったら、もっと面白かったと思うんです。
そして、その理想の家庭像が、もはや「昭和の価値観」なんだってことをきちんと全面に押し出せたら、「迷走家族」足り得たのではないか、と思うんです。
(2025.08.31 ヒューマントラストシネマ渋谷にて鑑賞 ★★★☆☆)

