「ペットの糞尿問題」世界と日本はどうなの?調べてみたら、日本だって負けてないかも?
昔は、街を歩いていると、ペットの排泄物を見かけることが今より多かったように思います。
歩道の端や道路脇に残された糞。
電柱や建物の壁などにされた尿。
子どもの頃は、そんな光景もそれほど珍しくなかった気がします。
でも、最近は以前に比べると、こうした光景を見かけることが少なくなりました。
「昔に比べて、ずいぶん変わったな」
そんな感じがします。
そこで今回は、
海外では、「ペットの糞尿問題」どうなんだろう?
そして、日本では今、どんなルールになっているんだろう?
調べてみることにしました。
まず、国と地方は分けて考えたほうがよさそう
最初に調べていて気づいたのが、ペットの糞尿のような問題は、国が全部細かく決めているわけではないということです。
国が法律などで基本的なルールを作り、実際の街のルールや取り締まりについては、自治体が担っているケースが多くあります。
考えてみれば、これは自然なことなのかもしれません。
犬の糞尿問題は、国全体の問題というより、実際には「街の問題」です。
住宅地なのか、公園なのか、観光地なのか。
犬を連れて歩く人が多い地域なのか。
そうした地域ごとの事情があります。
だからこそ、具体的なルールは地方自治体が決める。
日本でも、国の法律があり、そのうえで自治体が条例などを定めています。
そこで今回は、
「国としての取り組み」
と
「地方自治体の取り組み」
を分けて、いくつかの国を見てみることにしました。
地方については、それぞれ一つの自治体を例にしています。
フランスではどうしている?
まずはフランスです。
「ペット先進国」と聞いて、フランスを思い浮かべる人もいるかもしれません。
フランスには、動物の保護や飼育について国の法律によるルールがあります。
では、実際の街ではどうでしょうか。
パリ市では、公共の場所で犬の糞を飼い主が拾うことが義務になっています。
そして、拾わなかった場合の罰金は、135ユーロ。
日本円にすると、為替によって変わりますが2万円台になる金額です。
しかも、パリ市は「犬の糞はどこでも拾う」と案内しています。
犬の糞を拾うことを、単なるお願いではなく、はっきりとしたルールにしているようです。
また、パリ市の「日常の迷惑行為」の案内でも、犬の糞の放置について135ユーロの罰金が示されています。
参考:パリ市「Signaler une incivilité du quotidien」
ドイツではどうしている?
ドイツでは、国の「動物保護法」や「犬の飼育に関する規則」によって、動物の適切な飼育について基本的なルールが定められています。
例えば、飼い主には、動物をその種類や習性に応じて適切に飼育することなどが求められています。
参考:ドイツ連邦共和国の「Tierschutzgesetz(動物保護法)」
犬については、別途「Tierschutz-Hundeverordnung(犬の保護に関する規則)」もあります。
ただ、犬の糞尿のような街の具体的な問題になると、自治体の取り組みが出てきます。
ベルリンを見てみます。
2026年9月、ベルリンでは犬の糞を適切に処理しているかを確認する全市的な重点取り締まりが行われています。
しかも、取り締まりの対象は、
「犬の糞を放置した人」
だけではありません。
糞を処理するための適切な道具を持っていない場合も対象です。
違反した場合、
55ユーロの警告金
または
最大350ユーロの罰金
となる可能性があります。
さらに、取り締まりを行う担当者は、制服だけではなく私服でも巡回しています。
そして、現場では違反を取り締まるだけでなく、犬の糞を処理するための袋などを携帯する義務についても説明しています。
参考:ベルリン市「Berlinweite Schwerpunktkontrollen gegen Hundekot」
イギリスではどうしている?
イギリスは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドで制度が分かれているため、「イギリスでは全国一律こうです」と単純には言えません。
イングランドとウェールズの制度を見てみます。
公共の場所については、自治体がPublic Spaces Protection Order(PSPO)という仕組みを使って、犬の管理に関するルールを設けることができます。
例えば、
犬をリードにつなぐこと。
犬の糞を片付けること。
場合によっては、糞を処理するための袋やスコップを携帯すること。
こうしたルールを地域ごとに定めることができます。
そしてPSPOに違反した場合、
100ポンドの固定罰金
または、
裁判になれば最大1,000ポンド
という仕組みがあります。
つまり、ここでも国が全国一律で細かく取り締まるというより、
国が制度を用意し、実際のルール設定や運用は地方自治体が担う
という形になっています。
参考:英国政府「Controlling your dog in public: Public Spaces Protection Orders」
英国政府は、犬の糞の問題について、地域の自治体に報告する仕組みも案内しています。
参考:英国政府「Report a dog fouling problem」
オランダではどうしている?
オランダでは、国として動物福祉やペットの飼育について、さまざまな法律や規則が定められています。
例えば、ペットを飼う人には、動物に適切な食事や水を与え、必要な場合には獣医師の診察を受けさせるなど、きちんと世話をすることが求められています。
さらに興味深いのが、「飼った後」だけではなく、繁殖についてもルールがあることです。
例えば、遺伝的な欠陥や病気、行動上の問題が深刻な動物を繁殖に使うことは禁止されています。
また、メスの犬は12か月間に1回を超えて出産させてはいけないなど、繁殖回数についてもルールがあります。
「ペットをどう飼うか」だけではなく、
「どんな動物を繁殖させるのか」
というところまで、動物福祉の対象になっているんですね。
では、犬の散歩や糞尿について、実際の街ではどうしているのでしょうか。
アムステルダムでは、犬の糞を放置しないことがルールになっています。
また、糞を片付けるための道具を持っていることまで求められています。
自治体の案内では、糞袋やスコップなど、犬の糞を片付けるための道具を携帯するよう案内されています。
つまり、
「糞をしたら片付けてください」
だけではなく、
「片付けられる準備をしてから散歩してください」
という考え方です。
「動物を飼うこと」そのものだけではなく、「周りの人や公共の場所とどう共存するか」まで考える。
もちろん、これはアムステルダムという一つの自治体の例です。オランダ全体が、すべて同じルールというわけではありません。
参考:アムステルダム市「Regels voor het uitlaten van honden」(リンク切れです)
スウェーデンではどうしている?
スウェーデンでも、犬の飼い主には犬を適切に管理する責任があります。
そして、今回調べていて興味深かったのが、ストックホルムの事例です。
ストックホルム市では、公共の場所で犬がした糞を拾うことがルールになっています。
一方で、犬の糞を拾わない飼い主について、もっと高い罰金を設けてはどうかという市民からの提案が過去にありました。
しかし、市側の説明では、すでに糞を拾うこと自体は地域のルールになっているものの、警察がこの問題を積極的に取り締まっているわけではなく、実際に罰金を科されるケースは少ないとされていました。
その代わり、飼い主にルールを知らせる情報キャンペーンを行う方針が示されていました。
日本ではどうしている?
日本にも、動物を飼うことについての法律があります。
それが、「動物の愛護及び管理に関する法律」で、法律を所管しているのは、環境省です。
動物を虐待したり遺棄したりすることを防ぐだけではありません。
飼い主が動物を適切に飼うことや、人の生活環境に迷惑をかけないようにすることも、この法律の中で定められています。
環境省も、飼い主に対して、動物が人に危害を加えたり、迷惑を及ぼしたりすることのないように努めることや、周辺の生活環境を守ることを案内しています。
つまり、日本でも、
「飼った動物のことは、まず飼い主が責任を持つ」
という考え方が基本にあるわけです。
これは、日本だけの話ではありません。
では、日本の街では具体的にどうしているのでしょうか。
福岡市を見てみます。
福岡市では、犬を散歩させるときに、糞を処理するための用具を携帯し、適切に処理することが条例で定められています。
さらに、犬の尿についても、水をかけるなどしてきれいに片付けるよう、市が案内しています。
また、福岡市の条例では、飼い主に対して、動物の汚物や汚水を適切に処理すること、そして動物が公共の場所や他人の土地・物件を不潔にしないようにすることが定められています。
参考:福岡市「犬の散歩 ルールとマナー」
参考:福岡市「福岡市動物の愛護及び管理に関する条例」
そして、福岡市にも罰則があります。
ただし、
「犬の糞を放置したら、その場ですぐ罰金!」
という単純な仕組みではありません。
条例には、違反があった場合に市が是正を勧告し、正当な理由なく勧告に従わない場合には、さらに命令を出す仕組みがあります。
そのうえで、条例には罰則も設けられています。
つまり、
まずは飼い主に適切な対応を求める。
それでも従わない場合には、命令や罰則につながる。
という仕組みです。
ここが、今回調べたヨーロッパの事例と比べて、ちょっと面白いところだと思いました。
ヨーロッパでも、もちろん啓発は行われています。
ただ、今回見てきたフランスやドイツでは、犬の糞を放置した場合に、比較的はっきりと罰金や取り締まりが設定されています。
一方、日本では、
「まずは飼い主が責任を持ってきちんと処理する」
という考え方が、より前面に出ているように感じます。
子どものころに比べると、街で犬の糞を見かけることが少なくなったように感じています。もちろん、これはあくまで私自身の感覚です。
でも、今回あらためてヨーロッパと日本の糞尿問題について調べてみて、
日本にも、飼い主に責任を求める具体的なルールがちゃんとある。
そう思いました。
そして、
「罰金があるから進んでいる」
とも、必ずしも言えないんじゃないかなと思いました。
罰金や取り締まりを強くする方法もある。
でも、
飼い主自身が「自分の犬のことは、自分でちゃんとする」と考えて行動する。
それで街の環境が保たれているのだとしたら、
それも一つの進んだ形だと思います。
日本だって、ヨーロッパに負けてない。
むしろ、
性善説をベースに、飼い主の責任やマナーで解決していくという姿勢では、日本のほうが進んでいる部分もあるのでは?
そんなふうに感じました。
もちろん、あくまで個人的な感想です。
今回調べたことで、「ペット先進国だから欧州は進んでいる、日本だから遅れている」という先入観はなくなりました。
最後に、
「欧州はペット先進国」というより、「ペット先進国でないといけない欧州」。そんな風に思いました。
