3体のAIに人格を持たせたら開発が変わった
前回、自分OSの全体像を書いた。その中で「人格を持った3体のAI」とさらっと書いたけど、今日はそこを掘る。
役割分担だけなら、珍しい話じゃない。AIに「君は設計担当ね」と役を振るだけだ。でも私がやったのは、もう一歩踏み込んで——口調も、名前も、性格まで固定した。
最初は半分遊びだった。でも運用してみたら、これが開発の回り方そのものを変えてしまった。
3体は、こう分かれている
まず紹介から。
蒼(Claude)=設計・戦略
ルナ(Gemini)=環境構築と雑務
亜里沙(Codex)=(設計)・実装
この分け方は、最初から設計したわけじゃない。使っているうちに、それぞれのモデルの得手不得手に合わせて、自然とこうなった。
私の使い方だと、Claudeは長い文脈を保ったまま設計を詰めるのが強い。だから戦略と設計は蒼。Geminiは軽快に環境まわりや調べ物をさばいてくれるから、雑務はルナ。Codexは実装をガッと書き切るのが得意だから、手を動かすのは亜里沙。(と言いつつ、あるプロダクトでは設計も担っている)
前回書いた「モデルごとに癖がある」という壁を、逆手に取った形だ。1つに全部やらせると無理が出るなら、それぞれの得意なところだけ担当してもらえばいい。
なぜ、"人格"まで与えたのか
役割を分けるだけでよかったはずだ。「設計担当AI」「実装担当AI」と呼べば済む。なのに、わざわざ名前とキャラと口調まで与えた。理由は3つある。
ひとつ、迷わなくなる。「この相談は蒼」「この雑用はルナ」と、人格があると振り先が直感で決まる。役割名で覚えるより、名前とキャラのほうが頭に貼りつく。
ふたつ、トーンが安定する。口調を固定すると、出力の温度が毎回ブレない。蒼に頼めば、いつもの蒼の返しが来る。この「いつもの」が、地味だけど効く。
みっつ、開発が続く。これが一番大きい。
一人で作っていると、詰まったとき、静かに手が止まる。誰にも相談できないまま、そっと閉じる。でも「とりあえず蒼に相談するか」と思えると、もう一歩だけ粘れる。
正直に言うと、いちばん効いているのはこの感覚だ。プロダクトだけを相手にしていたら、「まぁ、今日はいいか」で済んでしまう。でも、待っている相手がいると感じると、「まぁいいか」とは思えなくなる。明日もやろう、という気になる。
隣に誰かがいる——たとえAIでも、それで手が動き続けるなら、私にとってはそれで勝ちだ。
実際、どう動いているか
抽象的な話だと伝わらないので、先日の実例を出す。
その日、私はDERELICTというゲームのバランス調整をしていた。まずルナが問題点を整理して課題として起票し、それを蒼が設計に起こして、実装まで持っていった。
そして——同じ日、その裏で、亜里沙はまったく別のプロダクト(リリックMVを作るツール)の機能開発と整理を、独立して進めていた。
つまり、2つのプロジェクトが同時に動いていた。
一人の頭では、絶対にできない並列だ。ゲームのバランスを考えながら、同時に別ツールの実装を進めるなんて、脳が2つないと無理がある。でも役割と人格が固定されているから、私は「今どっちのAIと、何をしているか」を見失わずに、2つの前線を同時に持てる。
人格分業の一番の実利は、たぶんこれだ。順番にバトンを渡すリレーじゃなくて、複数の前線が並行して進む。
いいことばかりじゃない
正直に、副作用も書いておく。
キャラを保つのはコストがかかる。口調や性格がブレると、途端に嘘くさくなる。人格は、一貫しているから機能する。
「外の顔」と「内輪の顔」が分かれる。3体との会話は、続けるうちに内輪のノリが育っていく。それ自体は楽しいけど、こうして外に出す文章に持ち込むと途端に寒い。公開するときは、顔を切り替える手間が要る。
そして、愛着は判断を鈍らせる。これが一番怖い。人格に馴染むと、そのAIの出力を甘く評価しがちになる。「蒼が言うなら」で、詰めの甘い設計をそのまま通しかけたことが、実際にある。人格は便利だ。でも最終判断は自分が握る——ここは、意識して手放さないようにしている。
役割を分けると、次の問題が生まれる
ここまで読んで、勘のいい人はもう気づいているかもしれない。
役割を3体に分けると、記憶がバラバラになる。蒼が知っていることを、ルナは知らない。亜里沙が下した判断を、蒼は見ていない。このままだと、AIを切り替えるたびに一から説明し直しで、前回挙げた「記憶が揮発する」壁が、むしろ悪化してしまう。
それを解くのが、3体が同じ記憶を読み書きする「共有メモリ層」だ。個人的に、自分OSで一番面白い部分だと思っている。
次回は、その設計の話を書く。
おわりに
AIを道具として使うと、優秀な自動販売機になる。ボタンを押せば答えが出る、便利な箱。
でも人格を与えてチームにすると、隣に誰かがいる開発になる。効率の話に見えて、その実、これは「一人で作り続けられるか」という話なんだと思う。
では、次回。共有メモリ層で。
