お茶、古くて新しい友
Japanese Tea, Our Old and New Friend
こんにちは。シドニーから来たコアラベアのケンです。眠るのが大好き、そして寝る前に飲む、ほっとする飲み物が大好きです。

知床生まれのエゾモモンガのももの誕生日が近づきました。日本の家族とお友達から、日本のお茶を二種類もいただいて、喜んでいると思ったら、ももは少し心配そうな顔をしています。
「どうしたの?」
「うん、ぼく、緑茶の入れ方が下手みたいなんだ。日本に行って母や姉が淹れてくれるお茶は美味しいのに、アメリカに帰ってきて自分で入れると、どうもおいしくなくて」
「日本で飲むお茶の方が上等なんじゃない?」
「うーん。ぼくもかなり良いお茶を選んで、というか、値段が高めという意味なんだけどね。買ってくるんだけど。淹れ方なのかもしれないし、あの母の家や姉の家の雰囲気がないから、心理的につまらなく感じるのかも」
「家の雰囲気じゃ仕方ないね」
「でも、せっかくもらったお茶、おいしく飲みたいよ。どうすればいいかな」
「わかった。じゃ、お母さんもお姉さんもしなかった淹れ方で、おいしく飲めるようにしようよ!」
自信があったわけではありませんが、ぼくは頼もしく請け合いました。
「ほんと!」
ももは喜んで、庭の高いペカンの木にかけのぼり、びゅうびゅうあちこちの木の枝の間を飛び回りました。
その間に、ぼくはもものためにお茶を淹れる練習をしてみたんです。
もものための水出し日本茶のレシピ
材料(500ml、2杯分)
緑茶 10g(ティーバッグも可)
水 500ml
塩 前足でごくごくわずかつまむ
道具
ティーポット
ティーポットより一回り大きいお鍋かフライパン
温度計
作り方
水とお茶をティーポットに入れる。
冷蔵庫で2時間冷やす。茶葉を取り出す。
ティーポットより少し大きい鍋に500ml水を入れ、5分ほど温める。50〜60度ぐらいになったら火を止める。
ティーポットをそっとお湯に浸けて、10分ほど待つ。お茶の温度が40度を超えて、50度にならないくらいで取り出す。
茶碗にお茶を注ぐ。半分ほどゆっくり飲む。
残った半分に、塩をほんの少し散らす。かき混ぜないで、ゆっくり最後まで飲む。
(ケン談)


ケンよりももへ
昔、狭山のお茶園に行ったとき、お店の人がお茶を入れた丸い急須を木馬のように揺すって、昆布茶のように旨みを引き出してくれたことがある。それで、あんなお茶が飲んでみたいとずっと思ってるんだよ。
水で淹れると、渋さが抑えられて、旨みを感じやすいね。そして、旨みがあるなら、塩で背中を押してみるか…….って思ったの。
だって、昆布茶ってあるでしょう。ぼく、どうしてあんな飲み物があるんだろうって不思議に思っていたんだ。でも、ほんの少しの昆布や塩の旨みとお茶の旨みが引き立て合うって、昔から知られていたんだね。
ところで、旨みの広がり方、アメリカナキウサギのパイカに話したら、ラタトイユを作っていて、同じ経験をしたことがあるって。
ローリエの葉って、入れる意味があるんだろうかって思いながらも、レシピ通り加えて煮た。出来上がって鍋から味見をしたら、ローリエの葉の周りだけ少し、野菜のソースがぱあっと明るい味になっていたんだって。それで、これがローリエの役目なのか、って知ったと。もちろんお皿によそう時は混ぜちゃうから、わからなくなるんだけどね。

ももからケンヘ
ケン、ありがとう。ぼくが冷たい飲み物はあまり得意じゃないって、おぼえててくれたんだね。
母や姉は、日本茶はいつもお湯で淹れていて、水でお茶を淹れてもらったことはないんだ。ましてや湯煎なんて凝ったこと。
水で淹れて、でも冷たくなく飲めるのは新鮮だった。渋みがあまりなくて、青い香りがさわやか。確かに旨みのようなものをかすかに感じるね。
そして、後半に塩をちらりと加えると、驚くべきことが起こった。
少しずつ飲み進む過程で、ほんの小さな火花が散ったようにお茶の味が明るくなる瞬間があった。
なにこれ?錯覚?と思いながらまた飲むと、もうそれは普通のお茶になっている。
あーあ、と思いながら茶碗を傾けて最後の部分を飲み干すと、そこにもまた、少し多く、明るい旨みが立った。
全然塩の味はしないけど、これが塩の効果なんだね。最初は、塩の粒がまだ沈みきっていない、ひらひら舞いながら沈んでいく過程で。そして、底に沈んだ塩はその周りだけに溶けていた。
この、局所的な味のグラデーションが衝撃的だった。塩と出会うとお茶の旨みが突如花開く感じ。
この後も3、4回やってみた。大切なのは、塩を投入してあまり待たないことだね。ずっと待っていると、塩が溶けて全体に広がってしまって、旨みの際立ちがわからない。
それから、底に沈んだ分の旨みはいつもちゃんと感じるけれど、途中で沈んでいく塩の周りの旨みを捕らえるのは、1回目しかできていない。でも、それでもやはりおいしいし、お茶を飲みながら集中するのって楽しいよ。
これなら、他のお茶でも、形の違う器でも試せる。塩の種類も変えられる。ぼく、知床で手に入れた羅臼昆布入りの塩を持ってるんだよ。
今度一緒に飲もう。
夜だと眠れなくなるから、朝や午後の早いうちに。
もう一度ケンからももへ:お茶の抽出成分、お湯と水の違い
うん、ももはデカフェコーヒーしか飲まなかったね。
カフェインについて少し調べてみたんだけど、この淹れ方なら、普通のお茶よりカフェインが少ないかもしれない。
80℃くらいのお湯でお茶を出すと、カフェインやカテキンなどが出やすくて、苦味や渋みも強くなるんだって。
一方、冷たい水では、カフェインや渋みの強いカテキンの一部は出にくくなり、渋みが少なく、旨みや甘みを感じやすい。
そして、最初に水で出しておけば、そのあと40~50℃くらいまで温めても、カフェインはお湯から淹れ始めるより少なくなるという説もあったんだ。
もう一度ももからケンへ
お茶って、淹れ方によって、出てくるものまで少し変わるんだね。
こんな飲み方をするエゾモモンガは、母や姉はもちろん、あまりいないと思うけど、ぼくはとても気に入った。これなら、自信を持ってプレゼントのお茶が飲めそうだ。
そういえば、ケンに淹れ方を考えてもらったのも、プレゼントみたいだったね。
今年はいい誕生日になったよ!

