考える英文法 | 擬似述詞 Quasi-predicative について。
「英文法」に関する記事です。
少しだけ専門的な内容になりますが、一通り、高校で英文法を学んだ方には、十分理解できる内容です。
英文法は、学校では「理解して覚えるモノ」ですが、文法書は最初から出来上がっているものではありません。
文法学者や教育者が、私たちが学びやすいように、体系的にまとめたものです。
この記事では、具体例を挙げながら「考える文法」について書きます。
今回扱うのは「補語」です。
(1) 「述詞」(predicative)とは?
「述詞」(predicative) とは、学校英文法でいう「補語」(complement) のこと。
だが、文法学者の中には、Jespersen のように「補語」という言葉を使わない学者がいる。
というのは、「補語」とは「補う言葉」ということだが、補う言葉ではなく、欠かせない場合があるからだ。
たとえば、
He is a boy. (彼は男の子だ)や
He seemed angry. (彼は怒っているようだった)という場合、
学校文法では、「is」「seemed」を「不完全自動詞」と呼び、「a boy」や「angry」を「補語」と呼ぶ。
しかし、「He is a boy. 」というとき、この文で重要なのは、「He と a boy との結び付き」であって、「He と is との結び付き」ではない。「He seemed angry.」も同様である。
だから、「a boy」や「angry」は、「補う言葉」ではなく、「主役」だと考えられる。それゆえに、「補語」より「述詞」(叙述するもの)というほうが適切だと Jespersen らの文法学者は主張した。
「述詞」とは、学校英文法で「補語」と呼ばれているもののうち、「主格補語」のことをいう。
参考
★Jespersenの用例★
ここで、Jespersen が「述詞」として挙げた用例を記しておく。
We parted the best of friends.
(私たちは最善の友人として別れた)
→「the best of friends」が「術詞」。
⚠️
「He is a boy.」という文の「a boy」という「補語」とは、明らかに異なると考える人が多いのではないか?
「the best of friends」は、単純に「parted」を補足するための「補語」とは言いがたい。「最善の友」ということも、この文では重要な意味を持っている。
He died young.
(彼は若くして死んだ)
→「young」が「術詞」。
⚠️
「He = young」という関係が成り立つから「補語」であることは間違いない。
だが、「He died.」と「He was young.」は、どちらとも同じくらい大切な情報だから、「young」を「He is a boy.」の「a boy」と全く同じ「補語」とみなすことはできないのでないか?
(2) 主格補語と目的格補語
ここで、この先の話を進めるために、高校英語で学んだ「主格補語」と「目的格補語」について、おさらいしておく。
「主格補語」とは、意味的に、
「主語=補語」(S=C)と考えられる「補語」のこと。
たとえば、
「He got angry.」(彼は怒った)では、
「He = angry」と考えられる。
「angry」は「He」を叙述しているから「主格補語」。
それに対して、
She calls me Akira.(彼女は私をアキラと呼ぶ)という「SVOC」の文では、
「私=アキラ」(O = C) だから、「目的格補語」。
(3) 擬似述詞(quasi-predicative)とはなにか?
「擬似述詞」とは、一般に「主格補語」と呼ばれているもののうち、「述詞」に属さないもののことをいう。
その中には、一般的に「副詞」と呼ばれているものも含まれる。
ところで、たとえば、
「She sat silent.」(彼女は静かに座った)
という文を考えてみる。
ひとつの見方として、「sat」を「完全自動詞」(補語を必要としない動詞)として考える場合、換言すれば、「She sat silent.」を「第1文型」として考える場合、「silent」は「副詞」と考えられる。
しかしながら、このように考えると
「She sat silently.」と全く同じことになってしまう。「silent」と「silently」は同じではない。
もちろん「同じだ!」と言ってもいいのだが、「違う」と言うのなら、説明が必要になる。
では、どう考えればよいか?
「He seemed angry.」という文では、
「He は angry だった」が中心的な意味内容だから、「He was angry.」と同じ構文だと言える。
では、「She sat silent.」と「She was silent.」の場合はどうか?
「She sat silent.」という場合、「She と silent との結び付き」よりも、「『She sat』 と『silent』との結び付き」が強いと考えられる。
換言すれば、「彼女が静かであり、座った」と解釈するのではなく、「彼女の座り方が静かだった」と解釈するほうが自然だろう。
だから、「She sat silent.」において、「silent」は「述詞」とは言いがたいから、「擬似述詞」というわけである。
(4) 「flat adverb」とはなにか?
最後に「擬似述詞」との関連で、「flat adverb」について触れておきたい。
たとえば、
He took the news seriously.
(彼はその知らせを深刻に受け止めた)
という文がある。
この文では、「seriously」は「副詞」である。
だが、口語では、同じ意味内容を表すときに、
He took the news serious.
という場合がある。
このように、本来は「seriously」という「副詞」が用いられるべきところで、一般的には「形容詞」として用いられる「serious」という語を、「副詞」のように用いるとき、「serious」のことを「flat adverb」という。
今挙げた例文の場合、どちらを用いても間違いということはない。
だが、「Take it easy.」(気楽にやれ!)のように、本来は「easily」を用いるべきなのに、慣用表現として「Take it easy.」が定着している場合がある。この場合、「easily」は使えない。
先ほどの「She sat silent.」という例文の「silent」も、
見方によれば「flat adverb」だと言える。この場合は、「She sat silently.」と言い換えることは可能だ。
また、少し話を戻すが、
「He took the news seriously. 」は、
「SVO」という「第3文型」だが、
「He took the news serious. 」の「serious」を「flat adverb」とは考えずに、
「the news = serious」と考えれば、
「SVOC」という「第5文型」とも考えられるのではないか?、と私は思ったりする。
結び
今回は、少し専門的な話になったと思う。
正直に言えば、実用性には乏しいのだが、現在のような「学校文法」が確立するまでには、さまざまな文法学者の知見が必要だったはずだ。
学校では「与えられる文法」として、理解し覚えることが優先されるわけだが、「考える英文法」があっても良いと思っている。
この記事を読んで「文法って深いなぁ」と思ってくださる方がいたら嬉しく思う。

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