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ベルリン古楽アカデミーの演奏によるコレッリ《合奏協奏曲》

今晩は、ベルリン古楽アカデミーの演奏による、コレッリ《合奏協奏曲》作品6の第1番から第6番を聴きます。

ベルリン古楽アカデミーは、古楽界の雄として数多くの名盤を生み出してきた団体です。ブランデンブルク協奏曲や、イザベル・ファウストとのバッハのコンチェルトなど、これまでにもずいぶん聴いてきましたが、昨年からヴァイオリンの平崎真弓さんがコンサートマスターに就任し、C.P.E.バッハの交響曲など新たなリリースも始まっています。

今回の録音では、彼女ともう一人のコンサートマスター、ゲオルク・カルヴァイトが交互にトップを務めているのが特長です。平崎さんは、コンチェルト・ケルンのコンサートマスターを務めた後、ベルリンに移られたようですね。佐藤俊介さんといい、バロックの世界でも日本人が大活躍しているのは本当に嬉しいことです。ちなみにケルンでも、佐藤さんと一緒に演奏している映像があります。

さて、コレッリの《合奏協奏曲》。今回は全12曲のうち、第1番から第6番まで。コレッリ自身は非常に優れたヴァイオリニストであったようですが、出版にあたっては楽譜が売れるように、難易度をあまり高くしない工夫もしていたようです。そのうえで、ソロやソリ(少人数)と合奏が交互に登場する「コンチェルト・グロッソ」という形式を完成させました。

もちろん、それ以前から独奏と合奏が交替する楽曲は存在していましたが、それを一つの確立された形式としてまとめあげた功績は、コレッリにこそあります。このアイディアは当時としては斬新で、演奏効果も上がり、後にはヘンデルの《合奏協奏曲》、バッハの《ブランデンブルク協奏曲》、そしてもっと技巧的なヴィヴァルディの協奏曲へとつながっていきます。

まずこの録音で印象的なのは、PENTATONEレーベルの優秀録音。低音から高音まで透き通るようにクリアで濁りのない音。テルデックのスタジオなので、残響は少なめ。その分細かい音がよく聴こえます。通奏低音は曲ごとに変化があり、チェンバロ、バロック・ハープ、ポジティフ・オルガン、アーチリュートなどが組み合わされ、ときには複数の楽器が絡み合って音色に変化をつけています。この手のアルバムは後半に進むとやや単調に感じることもありますが、通奏低音の工夫によって、最後まで飽きることなく楽しめました。

今回の収録では、第1・3・5番が平崎さん、第2・4・6番がカルヴァイトさんが弾いています。ソリで2本のヴァイオリンが独奏になる場面も多く、おそらくこの2人が交互に第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを務めているのでしょう。

第1番 ニ長調 Op.6-1では、平崎真弓さんがリーダーを務めています。冒頭のラルゴは、今まで聴いてきたコレッリの録音と比べても、低音がかなり充実していて重厚な響きです。これは平崎さんの、ややゆったりとした呼吸と、静謐な旋律処理によるものでしょう。軽快なバロック音楽というよりも、むしろ厚みのある響き。しかし、モダン楽器のような重量感とは異なり、古楽器ならではの透明感があり、音楽は力強く前進していきます。アレグロ楽章では、ヴァイオリンとチェロの独奏群の対話がくっきりと浮かび上がり、耳が自然とそこに引き寄せられます。ラルゴはアーチリュートの響きの中澄んだ美しい響きの平崎さんのヴァイオリンソロが素敵な装飾を加えながら歌います。終結楽章はまっすぐな音のソロから始まり、シンプルな音型が積み重なって、コレッリ独特の世界を創り上げます。こういうシンプルな音だけで音楽を創り上げるというのは、実はかなり高度な作曲技法ではないかしら。最後の楽章はヴァイオリンソリが完璧なアンサンブルの中、舞曲的なノリもあり、アーチリュートなどの通奏低音のリズムが踊るように響きます。録音全体に「古楽器ならではの空気感」が宿っています。

第2番 ヘ長調 Op.6-2はカルヴァイトさんがリーダー。冒頭からドラマチックな展開で、男性的な推進力のあるリードが印象的。フレーズごとに微妙な間があって、呼吸の変化があり、全体がまるで生き物のように感じられます。やはりソリの完璧なアンサンブル。緩徐楽章では、オルガンとやはりアーチリュートの通奏低音で、途中語りかけるようなソロがあって魅力的。

第3番 ハ短調 Op.6-3では、平崎さんのリード。短調の緊張感が支配し、通奏低音が低くうねるように響きますが、すぐにソロが入ると明るい響き。ソリのアンサンブルと合奏が交互に弾きあいながら進みます。ここでもアーチリュートが短いカデンツァを入れて素敵。第2楽章のアレグロでは、ヴァイオリン同士の鋭い掛け合いが彫り深く、まさに「対話のドラマ」。第3楽章グラーヴェはオルガンと弦が重なって独特な響きで瞑想的。極力余計な音を取り除いて作曲したように聞こえますね。シンプルさの極み。ここではオルガンがカデンツァ。4楽章と終楽章は、リズムの緊張感が爆発し、それが継続します。すごい緊迫感。

第4番 ニ長調 Op.6-4ではカルヴァイトがリーダー。活気あるオープニングから、リピエーノとコンチェルティーノの切り替えがスムーズで、緩急のテンポ感も的確。音楽の構造が非常に明快に聴き取れます。アダージョでは弦合奏が短い音を刻む中、アーチリュートがアルペジオを美しく奏でます。全体として明るく爽快で、リズムの跳ね方も軽やか。自然に体が動いてしまいますね。

第5番 変ロ長調 Op.6-5は平崎さんのリード。やはり全体の音色がカルヴァイトがリーダーの時とは違うような気がします。曲調にもよるけれど、アタックがきつすぎずふわっと入ってくる。この曲では、コンチェルティーノの繊細なアンサンブル能力が際立っています。それからチェンバロ、リュート、ハープなんかが入り乱れてなる通奏低音も美しい。終楽章は舞曲的というよりも、優雅な室内楽のような趣きがあります。

第6番 ヘ長調 Op.6-6ではカルヴァイトが再びリード。冒頭アダージョは、音と音の「間(ま)」が見事。その間をカルヴァイトのソロが広がります。中間楽章ではリズムが立体的に躍動し、まるで舞台上で誰かが踊っているかのよう。ラルゴではオルガンのしっとりとした通奏低音の上を合奏とソロの掛け合いでシンプルなフレーズを掛け合います。終楽章では、ソリの細かいフレーズと合奏が入り乱れてフレージングのキレがよく、リズムの扱いも非常に緻密です。終曲は速いテンポながらしっとりとした余韻の残る終わり方。

ということで、全曲をじっくりと聴き終えました。コンマスを1曲ごとに代えるというのは面白いアイディアで、それぞれの個性が交互に現れ、最後まで飽きることがありませんでした。きっと第7番から第12番もリリースされることでしょう。私の予想では12月。あの「クリスマス協奏曲」が入っていますからね。


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