【シロクマ文芸部】 水たまり
水たまりを見ると思い出すことがある。
子どものころ、夏休みに栃木のおばあちゃんの家へ遊びに行くと、まるでスコールのような激しい夕立が降ったあと、あちこちにできる水たまり。
その水面を、アメンボがすいすいと気持ちよさそうに滑っていた。
子ども心に、「この水たまりが乾いてしまったら、このアメンボたちはどうするんだろう」と本気で心配していた。
父に質問したような気がする。
どんな答えが返ってきたかはもう覚えていない。
大人になって知ったのだが、アメンボには羽があり、飛ぶことができる。
暮らしていた水場がなくなっても、別の水辺へ移動できるらしい。
あの頃の心配は少し安心に変わった。
せっかくなので改めてアメンボについて調べてみると、意外な事実を知った。
アメンボは肉食性の昆虫なのだ。
あんなに優雅に水面を滑っているのに、実は優秀なハンター。水面でもがく昆虫が立てるわずかな波紋を感じ取ると、一気に近づき、短い前脚でしっかり捕まえる。そして針のような口から消化液を送り込み、体液を吸うという。
こ、こわい。
あの涼しげな姿からは想像もつかない一面だった。
そういえば最近、アメンボを見かけた記憶がない。
車で移動することが多くなって、水たまりをのんびり眺める時間が減ったからだろうと思っていた。でも、それだけではなさそうだ。水辺の減少や水質の変化などで、生きものたちが暮らしにくい環境になっている場所も増えているという。
子どものころは、水たまりが乾くことだけを心配していた。
大人になった今は、その水たまりや小さな水辺そのものが、これからも残っていてほしいと思う。
「みんなみんな生きているんだ、友達なんだ。」
子どもの頃に歌ったあの歌詞を思い出す。
”水たまり”のお題から、アメンボへ、そして自然を大切にしたいという気持ちにつながっていく。
そんなことを考えながら、次に水たまりを見つけたら、少しだけ足を止めて水面をのぞいてみようと思う。
そして、今度は私が、
その小さな命の居場所を守れる大人でありたいと思った。
※イラストはチャッピー作です。
イメージ通り素敵に作ってもらいました💕
