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【シロクマ文芸部】 夜店から

夜店から漂ってくるソースの匂い。
遠くから盆踊りの音頭が聞こえてくる。

ああ、どこかでお祭りがあるのだろう。
お祭りと聞くと、なぜだか私は少し切ない気持ちになる。

小学生の頃、夏祭りが大好きだった。
夏の夕暮れ、屋台が並び始めると、いつもの町が少しだけ違う世界になる。金魚すくいの水音、綿菓子を包む袋の音、盆踊りの音色。
どれも子どもの頃の私には、胸が弾む夏の風景だった。

友達と待ち合わせをして夜店を歩き、お小遣いを何に使おうか迷う時間まで楽しかった。食べ歩きをして、ゲームをして、焼きそばを分け合ったりして
笑い合う。
夏になれば祭りへ行く。それは毎年当たり前に訪れる楽しみで、この先もずっと続くものだと思っていた。

だから中学一年生になった夏も、何の迷いもなく友達を誘った。
すると返ってきたのは、「もう夏祭りとか行かない」という言葉だった。

「中学生だし。」
そして、少し笑うように言われた。

「まだお祭りとか好きなの?」
その一言に、私は返す言葉を失った。

この前まで一緒に夜店を歩いていた友達が、急に大人になってしまったように思えた。

置いていかれたような寂しさと、夏祭りが好きだと言うことまで恥ずかしくなってしまった自分。
その気持ちは、今でもはっきり覚えている。

あれから長い年月が過ぎた。

今でも夏になると、夜店の灯りに目が留まる。
焼きそばの香りも、提灯の赤い灯りも、あの頃と何ひとつ変わらない。
それなのに、私の心にはいつも、あの夏の記憶が重なる。

だから私にとって夜店は、にぎやかな場所でありながら、少しだけ切ない。あの夏を思い出してしまうから。




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