発達障害グレーゾーン、教習所の記録①
ぼーっとしている。
人の話を聞いているようで聞いていない。
道を覚えられない。
運動神経が悪い。
どこか抜けているところがあるわたしは、運転免許なんて一生とらないと思っていました。
ところが結婚を機に、いずれ東京から田舎に引っ越す可能性が出てきて、免許をとることに。
正直、車なんてこわいし、駅近に住めばいらないのではという考えが、いまだにあります。
しかし夫の両親に面と向かってお願いされ、教習所代までいただいてしまったので、もう逃げられなかったのです。
これは、32歳で自動車教習所に通うことになったわたしの物語。
教習所に通うなら、転職で有給休暇をたっぷり使える今だ!と。
学生が春休みを終える頃、閑散期をねらって。
4月の上旬、教習所に入所したのでした。
以下は、入所時アンケートのわたしの回答。
・車に興味がありますか?→「いいえ」
・あまり強く言われると落ち込む→「はい」
・明るい雰囲気で教習を受けたい→「はい」
・指導では、わかりやすい言葉を使ってほしい→「はい」
と、一言一句はっきり覚えてはいないですが、こんな感じのアンケートを答えました。
いや子どもかよ!とツッコみたくなる回答ですが、指導が厳しいと一発で心が折れる自信があったので、正直に答えました。
不安もあるけど、30過ぎて新しいことにチャレンジできるなんて楽しいじゃん♪
と、少しワクワクしてきていたあの頃。
あの頃の自分は、教習所の日々がこんなにつらいとはまだ知らない。
-教習所1週目-
第1段階の始まり。
オリエンテーションのような学科の初回授業と、適性検査を受け、初日は終了。
適性検査はOD式テストというもので、ひたすら「A」を速く書かされたり、左右の数字の大小を比べたり、黒い影のようなものが何の形に見えるか答えたり。
あーなんか全然解き終わんないなー、わたし鈍いのかなー、と、うっすら自覚し始めます。
そして翌日。技能教習の模擬授業。
シミュレーターという機械を使い、エンジンのかけ方やアクセルとブレーキの使い方を学びました。
操作は、ゲーセンにある車のゲームのような感覚。
ただのシミュレーションゲームだけど、わたしくらいガードレールに突っ込みまくって動けなくなる人、他にいるんかな、、と、初っ端から運転がだいぶ不安になったのでした。
そして、ついに本物の車に乗る日がやってきます。
第1段階1回目
担当の指導員は、穏やかな40過ぎくらいのおじさん。休日に釣りとかしてそう。
とりあえず、こわくない人でよかった。
車の構造、乗り降りの際の安全確認、座席の調整など、基本を教えてもらい、さあ運転してみよう。
あ、シミュレーターよりは操作しやすいかも。
まっすぐな道ではアクセルを踏んで、30キロくらいをキープ、
カーブの手前でアクセルペダルを離して、
徐々にブレーキをやさしく踏んで、
曲がる方向にハンドルを回して、
カーブの終わりでアクセルを踏んで、
、、、???
「右に寄りすぎると危ないよ!」
え、これ道の真ん中じゃないんだ?
「ハンドルこのあたりから回して!!!!!」
―え、えっと、、、はい!
「もっとブレーキ!!!」
―はい!!!(ブレーキ)キュ!!
「どぅふっ」「それ踏みすぎ!」
―すみません!!!
「アクセル!!!」
―はい!
「もっとアクセル!!!!」
―は、はい!!!!
「前見て!前!!!」
あー、やばい、できない、もう運転こわい、、
「普段、自転車って乗る?」
―乗らないです!
「乗らないんだ、、、!」
ブレーキ踏むのが下手くそすぎて、何か説明してくれそうだったのに、話をぶった切るわたくし。
もう本当に本当に本当にすいません。
ハラハラした1回目の技能教習でしたが、なんとか合格ハンコをもらえました。よく合格もらえたな、、。
「次回もカーブを練習するので、そこで慣れていきましょう」と。
第1段階2回目
すでに自信を無くしているわたし。
いやもう、教習所行きたくないかも。
とはいえ、前回ぎりぎり合格できたし、まあなんとかなるかな、と、2回目の技能教習へ。
担当の指導員は、優しそうなアラフォーくらいの男性。
今日もこわくない人で、とりあえず一安心。
「前回は右カーブで、今回は左カーブを練習します!
まずは前回の復習からいってみましょう!」
よたよたと発進し、まずは右カーブの復習。
―あれ、あ、、
(ブレーキ)キュ!!!
「どぅふっ」
―すみません、、、
あ、ハンドルここで少しずつ回して、
「はいアクセル〜」
―はい、、
「うん、もう一回復習しましょう!僕がハンドル操作するのでアクセルとブレーキのタイミングをつかんで!」
、、と、丁寧に丁寧に教えてもらい、なんとか右カーブはマシになったので、今度は左カーブ。
左カーブは、内側の車線なので、右カーブよりも多くハンドルを回さなくてはいけない。
あと、左端に縁石があるので、乗り上げてはいけない。
とりあえずやってみよう。
「はい少しずつブレーキ〜」
―はい〜
「そうそう!」
「あ、ハンドル回しすぎ!」
―あぁー、、
「それは右に寄りすぎ!対向車とぶつかるよ!」
えっと結局真ん中ってどこなんだ?
「ここでアクセル!」
うひゃあ
「はいブレーキ〜」
(ブレーキ)キュッ!
「どぅふっ!踏みすぎ!!」
―すみません!
「ちょっとアクセル踏んで〜」
―あぁ縁石踏んでるぅー
、、、そしてあっという間に50分経過。
「次回もう一回、同じカーブの練習やりましょうか!
安心プラン入ってるので追加料金かからないですし!」
―はい、、。
補習ということか。
、、、いよいよやばいかもよ、自分。
こんな初めのタイミングで補習ってあるん?
情けない、、、
けど、自分の不器用さを見込んで、安心プラン(何回補習になっても追加料金がかからないプラン)にしておいて、本当によかった。。
恥ずかしさと悔しさとを抱えて、沈んで帰宅するのでした。
第1段階3回目
技能教習は、1日2コマ予約できるのですが、わたしは自分のメンタルや集中力を考えて、1コマのみにしていました。
その代わり、週4日以上は通うことを自分のルールにしました。日を空けたら、たぶん通わなくなるから。
前回の失態を引きずりながら、補習へ。
担当は、若く見えるけどベテランっぽい感じのお兄さん。
ハキハキ、さっぱりと話してくれるタイプ。こわくなさそうでよかった。
「前回は難しかったですかね〜?」
―あ、はい、なんかアクセルが遅かったり、ブレーキ踏みすぎちゃったり、縁石踏んだり、、
「うんうん、とりあえずやってみましょう!」
この指導員さん、言語化がとてもうまくて。
ぽんこつなわたしも、道の真ん中がどこなのか、ついにわかりました。
「じゃあ、この紙の真ん中ってどこ?」
―えーっ、ここ。
「それってなんでわかるの?」
―んーと、あ、えーっと、、
「両端がどこかわかってるからだよね?」
おお!そうか!!
「この道の両端はこことここだよね?だからその真ん中を走ればいいんだよ!」
―なるほど!はい!おっけーです!
、、、あれ?
「自分の目線で、真ん中に見えるところでいいんだよ!」
「自分の座席は車の右側にあるとか、考えなくて大丈夫!」
あ、そうなんだ!
わたし今まで、自分が右側に座ってることを考えてた!
この人すごい、プロや。。
一つ一つの操作を難しく考えすぎてしまうわたしが、何を勘違いしているのか、指導員さんが全て言語化してくれて、なんとかカーブを習得することができたのでした。
ほんの少しだけ、自信を取り戻した日でした。
第1段階4回目
この日の担当は、20代っぽい若めのお兄さん。
「僕の車じゃないんで、全然ぶつけてもいいっすよ〜」
Z世代かな。
停車と、右左折の練習の回。
「まずは停車位置についてです!」
30m手前は、この位置。
停止位置の手前から見たときの幅、この感覚を覚えて、
減速して、
左にこのくらい寄せて
、、、、
―は、はい、、、
指導員さんの説明を聞いていたはずなのに、気づいたら聞き取れていなくて、言葉が頭の中でぼやっと泳いですぐ消えて、、。
でも、ちゃんと聞いてる感じ出してたから、話がどんどん先に進んでしまう、、
「ここまで大丈夫ですかね?」
―はい!大丈夫です!(大嘘)
「じゃあ次!右左折について説明しますね!」
―はい!(やばい、集中力もたん、、、)
「〜、、これを内輪差といいます」
「じゃあこの内輪差って、右折のときはないんですかね?」
―え?(というか途中何言ってたか覚えてない、、)
ないんですかね〜(適当)
「道路は左側通行だから〜、、、〜」
この指導員さん、定期的に問いかけてくるから、ちゃんと話聞いてないとまずい!聞かなきゃ。
なんとか説明をひととおり聞き終えて、いざ運転。
停車も右左折も、何て説明されたのか全く頭に入っていない。
もうほんとに、自分の集中力のなさを呪う。
停車、とりあえずこんな感じかな〜。
「スピード落として〜」
「左寄せて〜」
指導員さんの助言もあって、車を動かしてみて、感覚で少しつかめました。
なんとか乗り越えた、、、
「じゃあ発進して、ゆっくり右に曲がりましょうー」
えーっと、ブレーキ離して、アクセルちょっと踏んで、あ、踏みすぎた、ブレーキ踏んで、あれ?アクセル??
ブイーン(アクセル踏みすぎ)
「うわっ!」
ついに、補助ブレーキを踏まれる。
壁に衝突しそうでした。
「ドキドキしましたね〜(笑)どんどん失敗していきましょう!!」
いやほんとすみません、、、(怒られなくてよかった)
アクセルとブレーキ踏み間違えるとか、ジジババやん、、、つら、、、
次、左折、、
「じゃあここを左に行きましょう!」
―はい!
「え、そこ違う!こっち!」
―あぁー、、、
車道ではなく、縁石の内側に入ろうとするわたし。
「大丈夫ですか?僕が見本見せましょうか?」 ―いや、自分で動かします!(どうせ見てもわかんないんで)
あとはノリと勢いじゃ!
おりゃー!(左折)
「お、うまい!」
―おおーできたー(奇跡が起きた)
ノリと勢いで乗り越えた50分。
合格ハンコ、よくもらえたな。
第1段階5回目
「〇〇さーん」
と、50代くらいのおじさん指導員にわたしの苗字っぽいのが呼ばれたが、なんか一文字違う。
「あ、〇〇さんですね、よろしくお願いします!」
この人、たしかにわたしの教習原簿を持っている。
ということは、わたしを呼んだのか。
わたしも、よろしくお願いしますと言って、一緒に車に向かって。
移動中、苗字を訂正するタイミングを考えていたら、逃してしまった。
教習中、ずっと、読み方が間違ったままの苗字。
いつ訂正しようか、ずっと考えていました。
「今回は右左折をひたすら練習しますよ!
曲がるタイミングについてはわかっていますか?」
―あ、はい、大丈夫だと思います。(ノリと勢いだけど)
「じゃあ、やってみましょう!」
左折。
、、、あれ、なんかへんだな。
「〇〇さん、さっき大丈夫って言ったけど、わかってないですね」
「あなたさっき、大丈夫って言ったんですよ、でもできてないですよね?」
―、、はい、すみません。
口調は優しいものの、なんだか急に詰められて、嫌になってしまったわたし。
まあ、ちゃんとわかってないのに大丈夫と言ったわたしが悪いんですけどね。
でも、人の名前読み間違えるほうがダメじゃね?
(原簿に読み仮名書いてあるのに!)
と、急に言ってやりたくなり、
―あの、細かくて申し訳ないんですけど、わたし●●っていいます。
と突然の訂正。(いやタイミングおかしい。。)
「それはごめんなさい!」と、素直に謝ってくれました。
その後、
「●●さん、わからないことはわからないって言いましょうね」
と追撃される。
―わたし、何がわからないかわかってないんです。
と言ったら、
「どうしたらいいんでしょうねー」と、おじさん。
いやいや、そこを教えてくれるのがプロなんじゃないの?と思いつつ、
―理屈と感覚が結びつくのに時間かかるんです。動かしてみて、できてないところを教えてほしいです。
と、言ってみる。
我ながら、自分のトリセツをうまく言えたと思う。
それから、静かな車内。
少しピリついた空気。
「周りが見えてないですよ」
「ハンドルきるの早いですね」
それ以上は、詳しく教える気がなさそう。
あー、この人と合わないな。
やる気のないまま、下手くそな右左折を繰り返すわたし。
そして教習終了時間。
「次回もう一回、右左折やりましょう。」
―ああ、はーい。
また補習か。
わたしがそんなに悪いのか。
指導員と合わなかっただけなのか。
どちらもか。
ずっとモヤモヤして、帰りのバスで泣きたかったのを堪えて、家に帰ってがっつり泣きました。
本当は明日も教習所を予約していたけど、ちょっと休みたい。キャンセルしよう。
言われたとおりにうまく操作できない。
人の話をしっかり聞けない。
聞くつもりはあるのに、頭に入らない。
わたしはどこか変かもしれない。
ネガティブモード突入。
スマホで「教習所 つらい」とか、ひたすらググっていたら、同じように運転がうまくいかなくて、ADHDと診断された人がいるとわかりました。
わたしもADHDなのか、、?
ここまでの教習であったことを何回も繰り返し思い出して、泣いて、考えて、また思い出して、泣いて。
夜、仕事から帰ってきた夫に、
―わたしは運転に向いてないかもしれない、ADHDかもしれない、
と話すと、
「いや違うでしょ。大丈夫だよ。俺も仮免落ちてるし。」と、あまり心配していない様子。
まあ、考えすぎなのかな。
疲れているだけかな、と思い、その後はしばらく、できるだけ気にしないようにしました。
でも、このとき病院で診断を受けておけば、教習所に相談していれば、後半の教習ももう少し辛くなかったかもしれないと、後悔しています。
〜つづく〜
