【余白のエロス】 甘えさせて、なんて言えなかった─第一章 甘えたいのにあまえられない─
甘えたかった。
ぎゅっとされて、「大丈夫だよ」って言われたかった。
でも私は、いつだって先回りしてしまう。
泣くより先に、笑ってしまう。
安心したいのに、安心される側であろうとする。
賢い子ねって言われた。
気が利くね、大人だねって褒められた。
そうやって育ってきた私は、
誰かに甘えることが失点のように思えていた。
本当は、そんなに強くなんてないのに。
頭が先に動く。
「いま甘えたら迷惑かな」
「いま疲れてるよね」
「この一言で、空気が悪くなるかも」
「きっと、もう少し我慢すれば済むことだから」
賢さは、時に感情を殺す力になる。
察しすぎる私は、
相手の顔色ひとつで、甘えることを引き下げてしまう。
相手の気持ちを読めることが、
甘えるチャンスを奪っていくなんて──皮肉すぎる。
でも、本音を隠しきれない夜がある。
触れられた瞬間、
言葉じゃない何かが、私の中の仮面をゆるませる。
たとえば、首すじに唇が落ちたとき。
たとえば、頭をそっと撫でられたとき。
涙が出そうになる。
うれしいでも、怖いでも、切ないでもなくて、
うまく言葉にできない、ぐちゃぐちゃな感情が溢れてくる。
その瞬間だけは──
「甘えてもいい?」って、言いたくなる。
でも口には出せない。
だから私は、ただ黙って身体を預ける。
そうやって、
甘えてるふりをして、
甘えたいを隠す。
心では求めているのに、
言葉にすることが、私には一番むずかしい。
わたし、かわいくないな。
甘えることすら、理屈と羞恥でブレーキがかかる。
素直になれないんじゃない、
素直が何かわからないの。
それでも、
どうしても──甘えたくなる夜がある。
あなたは、大切な人に「甘えたい」って言えていますか?
言葉にできなかった想い、胸の奥で息をしていませんか?
