12月1日から、通報者を切ったら刑事罰|改正公益通報者保護法の罰則と推定規定
改正公益通報者保護法が、2026年12月1日に施行されます。残り約2か月半です。
今回の改正でいちばん大きいのは2つあります。通報を理由に解雇や懲戒をした場合に刑事罰が科されること。そして、原則として通報から1年以内の解雇や懲戒は「通報が理由だった」と推定されることです。
これまでは「不利益な扱いは無効」という民事のルールが中心でした。そこに刑事罰と、事業者側が説明しなければならない仕組みが加わります。
【2026年9月19日訂正】罰則の条番号、報告拒否の扱い、施行前後の経過措置、推定期間の起算点を改正法の条文に照らして修正しました。
まず前提|いつから、どの法律が変わるのか
法律名:公益通報者保護法の一部を改正する法律
法令番号:令和7年法律第62号
成立:2025年6月4日/公布:2025年6月11日
施行:2026年12月1日
改正法の適用には附則の経過措置があります。施行前の通報でも、施行後の解雇・懲戒などに新法が適用される場合があります。一方、施行前にした行為への罰則は従前の例によります(改正法附則2条・3条・7条)。
1|解雇・懲戒に刑事罰
改正後の21条1項は、公益通報をしたことを理由に解雇または懲戒をした場合、行為をした個人に6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金を科すと定めています。さらに23条1項1号の両罰規定により、事業者にも3000万円以下の罰金が科されます。
注目したいのは金額の差です。個人は30万円以下、法人は3000万円以下で、100倍の開きがあります。組織的な判断で行われた不利益取扱いを、担当者個人の問題として処理させないという設計だと読めます。
このほかの罰則は次のとおりです。
従事者を定める義務に関する命令への違反:30万円以下の罰金(21条2項1号)
第16条1項の立入検査の拒否:30万円以下の罰金(21条2項2号。法人への両罰は23条1項2号)
通報者を特定させる情報の漏えい:30万円以下の罰金
第16条1項の報告拒否・虚偽報告:30万円以下の罰金(21条2項2号)。第16条2項の報告拒否・虚偽報告:20万円以下の過料(24条)
2|1年以内の解雇・懲戒は「通報が理由」と推定される
実務でいちばん効くのは、こちらかもしれません。
改正後の3条3項は、公益通報から1年以内に行われた解雇または懲戒について、公益通報を理由としてされたものと推定します。事業者が外部通報を知ってから処分した場合は、事業者が通報を知った日から1年以内です。
これまでは、通報を理由に不利益な扱いを受けたと主張する側が、通報と処分のつながりを立証する必要がありました。しかし人事評価や処分の理由は事業者の内部にあります。通報した本人が証拠を集めるのは簡単ではなく、裁判で争ってもこの立証の壁で終わってしまう例が指摘されてきました。
推定規定が入ると、この関係が入れ替わります。原則として通報から1年以内の解雇や懲戒であれば、まず「通報が理由だった」と扱われ、そうではないと言うためには事業者の側が別の理由を示すことになります。
これは、通報者を一切処分できなくなるという意味ではありません。通報とは無関係の理由があるなら、それを説明できるようにしておけばよいということです。処分の理由、評価の経過、判断に関わった人、時期。こうした記録を残す運用が、これまで以上に重要になります。
3|通報の妨害と通報者探しの禁止
改正後の11条の2は、正当な理由なく公益通報をしない旨の合意を求める行為などを禁止しています。そうした行為が法律行為である場合は無効とされます。誓約書にサインさせても、その部分は効力を持たないということです。
改正後の11条の3は、正当な理由なく通報者を特定しようとする行為を禁止します。通報があった事実を調べること自体が禁止されるわけではありません。禁じられるのは「誰が通報したか」を突き止めようとする行為です。
4|フリーランスも保護の対象に
改正後の2条1項3号により、特定受託業務従事者、いわゆるフリーランスが公益通報の主体に加わります。
これまでの保護対象は労働者と派遣労働者、役員、退職後1年以内の人が中心でした。業務委託で現場に入っている人は、同じ職場で同じ不正を目にしても、法の保護の外に置かれやすい状態でした。
5|体制整備義務と行政の権限
内部通報の窓口を整える義務は、常時使用する労働者が300人を超える事業者に課されています。この枠組み自体は変わりませんが、改正後の11条2項で、労働者等への周知その他の必要な措置が法律上の義務として明示されます。窓口を作るだけでなく、その存在を知らせるところまでが義務だということです。
行政の側も手段が増えます。改正後の15条の2第2項で消費者庁長官に命令権が、16条1項で立入検査権が与えられます。
これまでの事例に当てはめると
兵庫県の告発文書問題では、通報者の特定と処分が先行したことが検証の対象になりました。この件は改正前の出来事であり、新しい規定がさかのぼって適用されるわけではありません。
ただ、制度がどこを変えようとしているのかを考えるうえで参考になる点はあります。通報者を特定しようとする行為が明確に禁止されたこと。通報から1年以内の処分について、事業者側が理由を説明する立場になったこと。この2つは、これまで実際に争点になってきた部分に手を入れた改正だといえます。
まとめ
改正公益通報者保護法(令和7年法律第62号)は2026年12月1日施行。施行前後の扱いは附則の経過措置を確認
通報を理由とする解雇・懲戒に刑事罰。個人は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、法人は3000万円以下の罰金
原則として通報から1年以内の解雇・懲戒は、通報を理由としたものと推定される。外部通報を事業者が知って処分した場合は、事業者が知った日から数える
通報しない旨の合意を求める行為と、通報者を特定しようとする行為が禁止される
フリーランスが保護の対象に加わり、行政には命令権と立入検査権が与えられる
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公益通報者保護法の罰則と推定規定|12月1日施行で何が変わるか
制度の基本と兵庫県の事例は、こちらのまとめ記事から全記事をたどれます。
公益通報・法制度まとめ
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