ラジオを聴いていて「わかりません」と、素直に言える勇気を持ちたいと思った。
2010年に初めて駐在妻になりインドで暮らし始めたとき、知り合いが誰もいなかったのでとにかく日本語が恋しくなりました。新婚だったにもかかわらず、夫は多忙で話をできる時間がほとんどなかったので。
「日本語を浴びたい!」と思って見つけたのが、Podcastの番組でした。当時TBSラジオがさまざまな番組をPodcastでも配信していたので、平日昼間の帯番組から深夜のジャンクまで、さまざまな番組の配信を心の拠り所にしていました。
日本に住んでいる期間はradikoプレミアムで視聴し、アメリカに住んでいる現在はまたPodcastでラジオを聴いています。私にとって日本語の放送を聴く時間は、日々の生活の癒やしとなっています。
フォローしている番組はいくつもありますが、なかでもTBSラジオの「荻上チキ・Session」は私が毎日のように聴いている番組です。
この番組のパートナーである南部広美さんは昨年12月から体調不良でお休みしていたのですが、3月20日の放送で正式に番組を降板することが発表されました。
【「荻上チキ・Session」から大切なお知らせ】
— 荻上チキ・Session (@Session_1530) March 20, 2026
南部広美さんの番組降板に関するお知らせ https://t.co/idpYc2wZEo #ss954 pic.twitter.com/VBeGtPVBAc
「南部さん、そろそろ戻ってくるのかな?」と、Podcastでオープニングを聴くたびに期待していたのですが、降板となってしまいました。
新しく番組に加わったアナウンサーさんは皆さん素敵なのですが、それでも南部さんがいなくなってしまったことに寂しさを感じてしまいます。
私がなぜそんなに南部さんにこだわっているのかを少し考えてみようと思います。
はじめに紹介すると「荻上チキ・Session」はとても硬派なニュース番組です。世界中のニュースを扱い、その分野の専門家がゲストで出演します。選挙の前後には各党の政治家が出演することもあります。
「Session」の放送時間が変更になる前の番組「Session22」は2013年から始まったそうですが、私が初めてこの番組を聞いたのはインドに住んでいたときでした。身近に迫る脅威だった、イスラム国やエボラ出血熱の特集を聞いた覚えがあります。
「Session」は日本の新聞やテレビに触れられない海外在住者が日本の社会情勢や政治について知りたいとき、今も昔もとても役立つ番組です。インターネットで情報を得やすくなった今でも、いろいろな立場の人の声を聞けるいい番組だと思います。

話は戻って、南部さんのこと。
南部さんはシャキシャキと仕切る方ではなく、全体的に柔らかい雰囲気を醸し出しているアナウンサーです。自分の意見を求められたとき「まだよくわかっていません」や「勉強中なのですが」と言った言葉で返すこともありました。
私はこのように正直に話す南部さんが大好きなのだと思います。
ここ数年、あいまいな事象や気持ちを明確に言語化することや、質問に対して素早く回答することを「頭がいい」と評して、もてはやす傾向があると感じています。私自身も自分のモヤモヤを誰かに言い当ててもらったときに「すっきりした!」となることがあります。
でも、「そんなに簡単なことじゃない」こともいっぱいある。
不意に質問されたときに言葉に詰まることもある。
即答できない自分は「頭が悪い」のではないかと、がっかりすることはこれまでに何度もありました。けれども、あとから考えると、言語化できなかったり答えに詰まったりしたところに、真意が入っていることもある気がします。
本来は時間をかけたコミュニケーションから生まれる本当の気持ちや考えとは、タイパ重視の昨今では切り捨てられてしまうものなのかもしれません。また、せっかく生まれた意見であっても「知らないなら黙ってろ」という空気のなかでは発言しにくくなります。
だからこそ、南部さんのように「わかりません」や「勉強中です」と言うことはとても貴重だし、「こういう返事でもいいんだ」と私は勇気をもらったのだと思います。

世界中が混沌としている今。同じ出来事を語るときも、誰がどこからものを言うのかによって、見える景色は変わってきます。
自分のなかにぶれない気持ちがあったはずなのに、自分の意見に自信が持てなくて曖昧な態度を取ってしまうことがあります。この2年ほどアメリカで暮らしていて、いつもそんな酸っぱい気持ちを抱えてきました。
私はアメリカのことをすべてわかっているわけではないし、反対に日本の今を知っているわけではありません。そんな私だって、自分の意見を持つことや気持ちを表明することは問題ないはず。
私が勝手に南部さんから受け取ったことですが、これからも大事にしていきたいと思っています。

