歯科医歴40年の ひとりごと― 顎関節症を構造で考える(第1章)

※本記事は、特定の治療法や装置の効果を保証するものではありません。
歯科医として40年間、臨床の中で考え続けてきたことを
「ひとりごと」として整理した記録です。
第1回
なぜ私は「顎が治らない」と感じ続けてきたのか
歯科医として診療を続けていると、
ときどき説明の途中で言葉が止まってしまう瞬間に出会います。
診断はついている。
患者さんは、正しい医療機関を受診している。
検査も受け、専門医から説明もされている。
それでも、症状がそのまま残っている。
顎関節症の患者さんを診ていて、
私は長いあいだ、この違和感を抱えてきました。
顎が痛い。
口が開けづらい。
音が鳴る。
耳の奥に詰まったような感覚が続く。
そして大学病院の口腔外科で、
「顎関節症ですね」
「様子を見ましょう」
と説明を受ける。
この説明は、医学的には正しいと思います。
診断として間違っているわけではありません。
けれど、その一方で
この言葉のあとに治療が始まらないまま時間が過ぎていく人が、
確かに存在します。
以下は、実際に大学病院の口腔外科を受診した患者さんが、
当時の説明について語ってくれたものです。




これは、治療がうまくいった話ではありません。
成功例を示すための動画でもありません。
大学病院を受診している。
専門医に診てもらっている。
診断名もついている。
それでも、症状は続いている。
私はこの話を最初に聞いたとき、
「どこが問題なのか」をうまく言葉にできませんでした。
医療として間違っているわけではない。
誰かの判断が誤っているわけでもない。
それなのに、
患者さんの日常は「様子を見る」という状態のまま続いていく。
痛みや違和感を抱えながら。
不安を抱えながら。
「仕方がないのかもしれない」と思いながら。
私は、この
“様子を見ましょう”の先で、何が起きているのか
を知りたくなりました。
顎関節症は、本当に
「様子を見るしかない状態」なのか。
それとも、
私たちが見ていない前提や、
置き去りにしている視点があるのか。
このnoteでは、
特定の治療法や装置の有効性を示すことを目的にしません。
・なぜ顎関節症は治りにくいとされているのか
・どこで説明が止まってしまうのか
・私たちは顎を、どの枠組みで見てきたのか
そうした問いを、
臨床で考えてきた順番のまま記録していきます。
結論を急がず、
答えを一つにまとめずに。
これは、
私自身が長いあいだ立ち止まりながら考えてきた、
その途中経過の記録です。
次回は、
「顎関節症の説明は、なぜいつも同じ言葉になるのか」
を考えます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、
特定の治療効果や適応を示すものではありません。

診療に関する詳細は、
医療機関の公式情報をご確認ください。