それは本当に害なのか
夜、家の近くのゴミ置き場に、黒い影がいた。
何をしているわけでもない。ただ、そこにいた。
少し離れた場所から見ていると、その影はゴミ袋をゆっくりと探っていた。
必死というより、ただ“そこにあるものを確かめている”ようにも見えた。
翌朝、そこは「荒らされたゴミ置き場」と呼ばれていた。
――害獣。
その言葉はとても便利だ。
一言で片づけられるし、理由を考えなくて済む。
でも、あの影は本当に「害」だったのだろうか。
それともただ、そこに“食べられるものがあった”だけなのだろうか。
私たちはよく「野生動物は人間に被害を与える」と言う。
けれどその前に、その動物たちはどこで生きていたのだろう。
森は残っているのか。
川はきれいなのか。
そこに“もともとの居場所”はまだあるのか。
気づけば、人間の生活圏は静かに広がっている。
道ができ、建物が増え、光が夜を消していく。
その中で、迷い込んできた存在を「侵入者」と呼ぶのは、
少しだけ一方的ではないだろうか。
これは、正しさを決める話ではない。
どちらが悪いかを決める話でもない。
ただひとつだけ、問いが残る。
“それは本当に、害なのか?”
次回「人間のゴミは誰のものなのか」

