カーブドッチ物語 #25|原田マハさんのステイを体験
ライターズ・イン・レジデンスの第一作、原田マハ著『旅をあきらめるにはまだ早い友への手紙』が無事に発売を迎えました。
その世界をもっと深く味わってもらいたい。カーブドッチで、物語の主人公(=マハさん)と、同じように過ごす。
そんな特別な滞在があったら、ファンの方はどれほど喜んでくださるだろう。
そう考えて生まれたのが、「原田マハの物語を追体験する宿泊プラン」でした。
まさに夢のような企画
マハさんも協力的で、この企画のために直筆サイン本を20 冊プレゼント。
物語の舞台となった「トラヴィーニュ」に泊まり、スペシャルなギフトまでもらえる20組限定の特別プランとなりました。
実際にマハさんが滞在されたお部屋「おうむ」に泊まり、同じ家具やインテリアに囲まれ、テラスから同じ景色を眺めながら本を開く…。
物語の中に身を置くような、これまでにない読書体験がそこにはありました。
ファンの皆さんに大好評だったのは言うまでもありません。

ぶどう畑と角田山が
季節もまた、物語と同じ。ガーデンのバラが盛りを迎える頃でした。
マハさんはどんなバラがお好きなのだろう…そんなことを想像しながらの散策も楽しい時間です。


ディナーは、ぶどう畑でのアペリティフから始まるフレンチのフルコース。
物語と同じメニューです。
ゆっくりと愉しむディナーのクライマックスは、ぶどうの枝葉で燻した牛肉のロースト。
ダッチオーブンの蓋を開けた瞬間、芳ばしい燻製香がふわりと立ち上ります。


宿泊者の皆さんには、マハさん直筆のサインが入った『旅をあきらめるにはまだ早い友への手紙』に加えて、サプライズでマハさん作の「フォーチュンクッキーとフォーチュンブック」をお土産にお持ち帰りいただきました。

クッキーの中から、言の葉のおみくじが出てきます
カーブドッチの魅力を余すところなく描き出してくださったマハさん。
ライターズ・イン・レジデンスの第一作にふさわしく、「真正面に、直球ストライク!」な作品になりました。
マハさんがセレクトショップ「YOLOs」をオープン
マハさんとは、その後も素敵なご縁が続いています。
京都の四条烏丸に、食のセレクトショップ「YOLOs(よろず)」をオープンされ、お店のワインセラーにはカーブドッチのワインが並んでいます。
京都で唯一、カーブドッチワインを販売しているお店でもあります。
10年以上の時を超え、映像化
そんなマハさんには、長い間ずっと温めてきた夢がありました。それは、ある作品の映画化です。
「今まで何本も映画化されてるじゃないの」と思いましたが、詳しく伺ってみると、マハさんご自身が、監督・脚本・原作の三役を担うというお話でした。
正直なところ、「映画なんて簡単に作れるのだろうか」と面くらいました。
小説なら腕一本、才能だけで勝負できるでしょう。
でも映画となると、ヒト、カネ、人脈がどれも桁違いに必要です。
本を一冊出版するだけでも、あんなに大変だったのに、映画監督だなんて…。
夢を見ているのではないかとさえ思いました。
けれど、マハさんにとって映画は、単なる挑戦ではなく作家人生の集大成。
目の前にある、手の届く現実だったのです。
映画化されるのは「無用の人」という、2014年刊行の、文庫本で言えばわずか24ページの小さな物語です。
そもそも、そんなタイトルの本はなく、『あなたは、誰かの大切な人』の中の一話。
たまたま自宅の本棚にあったのですが、立ち読みできるくらいのほんの小品でした。
マハさんとの出会いがそうであったように、この物語もまた、時間や記憶を介して、人と人の心をそっとつないでいきます。
派手なドラマ性はないけれど、深い余韻が残り、しばらく心を離れない。
かなり文学性の高い作品ですが、読み進めると自然と映像が立ち上がり、特にラストは、息をのむほどの美しい情景が広がります。物語すべてを、包み込んでしまうようでした。
果たして、これをこのまま映像にできるのでしょうか。
現場をささえる「ザ・ロケランチャーズ」
撮影は、昨年の4月から始まり、実は、カーブドッチも「ザ・ロケランチャーズ」として、お弁当の提供を通して映画づくりに協力させていただきました。
常時50名を超えるスタッフやキャストがフル稼働しているロケ現場。
日々のモチベーションキープのために、マハさんが募集した応援団が、その名も「ザ・ロケランチャーズ」でした。
少しでもお役に立ちたいと、第一番に手を挙げたのです。
二度にわたり、写真付きで現場からの報告が届きました。
「張り詰めた現場の空気が和むのは、ロケ弁タイム。原田組の胃袋を支えるお弁当は、最高のギフトです」
そんな言葉とともに、満面の笑みでお弁当を抱えるマハさんの写真が添えられていました。
クランクアップの前日、最後のロケの夕食に出したのが、カーブドッチ提供のすき焼き弁当。
「あとひと頑張り」に、みんな大いに勇気づけられたそうです。

撮影は無事クランクアップ。
そして昨年の秋に、試写会の案内状が届きました。
関係者向けの試写会だったので、会場には撮影現場の熱気や高揚感が、そのまま残っているようでした。
出来上がった映画は、切ないけれど温かく、静かだけれど凛とした、とても上質な作品に仕上がってました。
そして、期待していたラストの映像はというと…。見事に、裏切られました。
さすがマハさん、やっぱり常人ではありませんでした。
エンドロールには、たくさんのスタッフとキャストの名前。
目を凝らしていると、最後の方にようやく、ザ・ロケランチャーズとして「カーブドッチワイナリー」の文字が。しっかりと目に焼き付けて、新潟に帰りました。
『無用の人』は、2027年に公開予定です。どんな映画なのか、ストーリーは? キャストは? 主人公は誰? 話し始めたら、きっと止まらなくなりそうです。
でも、マハさんのことですから、映画の公開までにもう一波乱ありそうな予感がしています。
よみがえってきた『田舎の日曜日』
映画好きの私にとって、週末の一番の贅沢は映画三昧になることです。
ロードショーで一本、ミニシアターで一本。そこから、ふと思い出した映画を夜中にU-NEXTでもう一本。そんな週末が理想です。
実は、映画『無用の人』は、ずっと思い出すこともなかった一本の映画を、私の記憶の奥からそっと引き出してくれました。
それは、『田舎の日曜日』です。
ご存知でしょうか。40年以上も前に作られたフランス映画で、1984年公開。
カンヌ映画祭をはじめ、その年の映画賞を総なめにした作品ですが、今では知る人ぞ知る一本かも知れません。
探してみると、ありました。U-NEXTやPrime Videoで観られるようなので、もう一度観てみました。
お時間のある方はご覧ください。正直に言うと、かなり「ダル~い」映画です。
当時、三人の子育てに追われていた私は、わずかな時間を見つけては、鎌倉駅前にあった「テアトル鎌倉」というミニシアターに通っていました。
そこで偶然出会ったのが『田舎の日曜日』でした。
時代が変わってその映画館は姿を消し、私自身も鎌倉を離れ、それっきり忘れていたのに。
マハさんの映画を見た瞬間、突然よみがえったのです。
同じ香りがすると・・・。
原点はナパ・バレーではなかった
パリの郊外に住む老画家を訪ねる息子家族や娘との穏やかな日曜日。
何か事件が起きるわけではなく、ただ淡々と過ぎてゆく一日。
それなのに、いつまでも心に残る情景。
画面はベールがかかったように淡く、まるでルノワールの絵の中に入り込んだようでした。
緑の木漏れ日の庭。キラキラと揺れる光。
何気ない会話、食事の音、風の音。
家政婦が作るルバーブのパイ。
屋根裏部屋の古いレースのショール。
父と娘のダンスシーン。
そして全編に流れる、フォーレの音楽。
専業主婦として、狭い世界しか知らずに生きてきた私にとって、初めて触れる古き良きヨーロッパの暮らし。
壁紙、カーテン、家具、暖炉。ナイフやフォークに至るまで、古く使い込まれたものなのに、なぜか新鮮に見えました。
こんなにも愛おしくて美しく、優しい世界があるのかと、胸を打たれたのです。
ずっと、カーブドッチのビジネスモデルの原点は、カリフォルニアのナパ・バレーだと思い込んでいました。
けれど、心の奥には、あのとき芽生えたヨーロッパへの憧れが潜んでいたのです。
やがてそれはワインへの憧れへと姿を変え、知らず知らずのうちに、カーブドッチの原点になったのかもしれません。
マハさんの映画が、それを気づかせてくれました。
「当たって砕けろ」と怖いもの知らずの思いが届き、まるで天から降りてきたように、マハさんが目の前に現れたのです。
奇跡のようでした。
次に始まるライターズ・イン・レジデンスの第二作目は、一体どうなることやら…。
マハさんの次となると、ハードルが高いかもしれませんね。
どうぞお楽しみに。
