鑑賞を迷われている方向け 映画3分コメント 是枝裕和監督『ルックバック』(ほぼネタバレなし)
私は是枝監督作品を、ほぼ鑑賞しており、特に『歩いても歩いても』と『そして父になる』がお気に入りです。
そんな私、実は今回の『ルックバック』は、観る前は少し複雑な気持ちでした。
アニメ版『ルックバック』はすでに鑑賞済み。
ただ、世間の熱狂ほどには、私はハマらなかったんですよね。すみません。
ところが。
今回、私は是枝監督版『ルックバック』を、はっきり推します。
これは本当に、原作を丁寧に、そして誠実に「三次元化」した作品だと思います。
主人公2人の小学生時代を描く前半がいきなり素晴らしくて…
地方で暮らす小学生時代の主人公が、「夢」を意識し始め、夢中になっていく姿を、郷愁誘う田舎の風景と移ろう季節とともにじっくり描いていきます。
これを40分もかけて描くんですよ!100分の映画なのに!
子どもたちの後ろ姿が、とても印象的なんです(「怪物」のラストシーンの少年たちの後ろ姿も印象的でしたね)。
夢中になっている子どもの後ろ姿を見ていると、かつて田舎で映画監督を夢見ていた、昔の自分を見ているような気持ちになりました。
同時に、成長しようとしている我が子の後ろ姿を、見守っているような気持ちにもなる。
だから私は、この前半だけでもう、
眩しくて、切なくて…
そして、この子どもたちを見守る大人たちがまた素晴らしい。
クドカンこと宮藤官九郎さん(「時には懺悔を」に続く好演!)
野呂佳代さん(「箱の中の羊」に続く出演!)
子どもたちを包み込むような存在感が、とてもいいんです。
主人公2人が大人になってからも、大丈夫。
原作へのリスペクトはそのままに、映画ならではの「光」と「音」、そして時折見せる鳥の飛翔のイメージ。
そうした映像表現が『ルックバック』という物語にいくつものレイヤーを加え、作品に奥行きを与えています。
樹木希林さんが亡くなられた後の是枝監督作品には、個人的にはどこか「もがいている」ような印象を感じることもありました。
でも、原作のある本作からは、いい意味で迷いがない。
是枝監督が、この物語を映画にする。
その愛情が、画面から伝わってくるようでした。
かつて、夢中になって何かを追いかけていた人なら、きっと、どこかに自分の姿を見つけると思います。
過去に夢中で何かを追いかけたことのあるオトナの皆さま。
刺さる映画ですよー。
