ロン・ミュエク展に行ってきました!! そこは現実を超越した違う世界が待っていた!!
こんにちは。
今回はアート展についての話です。
先日、六本木ヒルズの森美術館で開催されている「ロン・ミュエク展」に行ってきました。
1. ロン・ミュエクとは
ロン・ミュエクはオーストラリア生まれで、英国在住の現代美術家です。1958年にメルボルンで生まれ、1986年より英国に移住しました。
当初は映画や広告業界で約20年間働いた後、1990年代半ばから彫刻の制作を開始しています。
そして1996年、ロンドンのヘイワード・ギャラリーの展覧会で彼の彫刻作品が展示され、現代美術界にデビューしました。以来、ロン・ミュエクは世界各地の著名な美術館で作品を発表し、注目を集めています。
国内では十和田市現代美術館に、ロン・ミュエクの作品『スタンディング・ウーマン』が常設展示されています。
このようにロン・ミュエクはかなり異色のアーティストですが、その作品は特異さと独創性から、多くの美術館で展示されているようです。
2. ロン・ミュエクの作品とは
彼は革新的な素材や技法、表現方法を用いて、具象彫刻の可能性を押し広げてきました。
人間を綿密に観察し、哲学的な思索を重ねながら作品を制作しています。
彼の作品は洗練され、生命感にあふれ、孤独や脆さ、不安、回復力といった人間の内面的な感情や体験を巧みに表現しています。
彼が制作する人物の具象彫刻は、実際の人物よりもはるかに大きく、あるいは小さく造られています。それは私たちの先入観への挑戦であり、その存在そのものとの関係を問いかけているようです。
ロン・ミュエクが1990年代半ばにデビューしてから約30年間に制作した作品数は、わずか50点ほどしかないそうです。
これは作品の特異さや制作にかける時間の長さによるものなのかもしれませんね。
3. 本展覧会の趣旨
ロン・ミュエクは世界各地で個展を開催してきました。
日本では2008年に金沢21世紀美術館で回顧展が開催されています。今回の森美術館での個展は、日本では2度目となります。
また本展は、ロン・ミュエクとカルティエ現代美術財団との関係によって企画されたもので、2023年にパリからスタートし、ミラノ、ソウルを経て、森美術館で開催されることになりました。
そして、そのうち6点は日本初公開の作品だそうです。
また、フランスの写真家・映画監督であるゴーティエ・ドゥブロンドによる、ロン・ミュエクのスタジオでの制作過程を記録した貴重な映像も併せて公開されています。
4. ロン・ミュエク展のご紹介
それでは実際の展覧会の作品についてご紹介していきます。
入り口から入ると、まず中央にある作品が《枝を持つ女》です。
裸の女性が、自分の背丈よりも大きな大量の枝を抱えているシュールな彫像です。なぜこのような状態になっているのか、不思議な気持ちにさせられます。
《枝を持つ女》(2009年)

また、その先にある作品には本当に驚かされました。これはロン・ミュエクの作品によくある巨大な人物像なのですが、中年女性がベッドに横たわり、こちらを見ている作品です。なんと長さ約5メートル、幅約4メートルもある巨大な作品です。
どの作品もそうですが、ロン・ミュエクが制作する彫像は、細部まで本物の人間の皮膚のようです。また、目も鼻も口も、そして爪や髪までもが驚くほどリアルで、そのため逆に、これほど巨大な人物が存在しているかのような畏敬の念を抱かせます。
《イン・ベッド》(2005年)

こちらの作品はそれほど大きくはありませんが、意味深な作品です。
仲睦まじい若いカップルなのですが、後ろを見ると、彼が彼女の手首をしっかり握っています。なぜなのか――。いろいろと想像をかき立てられる作品です。
《若いカップル》(2013年)

次の作品は、身長約2メートルの少女がスクール水着を着て寄りかかっています。ただ、その顔立ちは大人の女性のようにも見えます。
《ゴースト》(1998/2014年)
今回、森美術館の一番見晴らしの良い部屋に展示されているのは、羽の生えた男性がスツールに座っている作品です。本作はロン・ミュエクの初期の代表作だそうです。
《エンジェル》(1997年)

暗い小部屋の中をのぞくと、暗闇の中に巨大な男の顔が浮かび上がっています。
《ダーク・プレイス》(2018年)
小舟の中で裸の男性が腕組みをしている、これも意味深な作品です。
《舟の中の男》(2002年)
こちらも裸の老人が座ってテーブルの上の鶏を見つめているという、不思議な作品です。
《チキン/マン》(2019年)
こちらの作品は、子どもを抱えながら両手に買い物袋を持って歩いている女性の姿です。どこにでもいそうな姿だからこそ、美術館で見ると逆に不思議な気持ちになります。
《買い物中の女》(2013年)
次にあるのが、なんと作家ロン・ミュエク自身の寝顔を彫刻した作品で、実際の約4倍の大きさがある驚きの作品です。そして、この肌の質感や唇などがあまりにもリアルです。作品名が《マスクⅡ》であるように、裏側をのぞくと空洞になっており、顔の表面だけ、つまりマスクであることが分かります。
《マスクⅡ》(2002年)

こちら、最後の大きな部屋には大きな作品が所狭しと置かれています。その作品とは巨大な人間の頭蓋骨です。
ロン・ミュエクは本作を展示する際、各地の展示空間に合わせて配置するそうです。今回は森美術館の最後の大きな部屋に合わせて、たくさんの頭蓋骨が積み上げられています。
私たち鑑賞者は、積み上げられた作品の隙間を縫うように歩いていきます。作品名《マス》のとおり大量に積み重なった頭蓋骨が広がるこの部屋は、圧巻のインスタレーション空間でした。
《マス》(2016-2017年)

最後に今回は、フランスの写真家・映画監督であるゴーティエ・ドゥブロンドが撮影した、ロン・ミュエクの制作風景を映像で見ることができます。アトリエもすごい空間です。
《ロン・ミュエクのスタジオ、ロンドン、2005-2013》(2005-2013年)
《ロン・ミュエクのスタジオ、ベントナー、2019-2023》(2019-2023年)
《スティル・ライフ:制作中のロン・ミュエク》(2013年)
《チキン/マン》(2019-2025年)
5. 最後に
以上のように展示作品数はそれほど多くないのですが、一つ一つの作品が巨大なものもあり、インパクト大でした。ロン・ミュエクの作品は、作品そのものだけでなく、それを展示することによって、そのあまりのリアルさから展示空間そのものが現実とは違う世界へと変貌する感覚が強いです。
いわゆる絵画や一般的な彫刻とは違い、そうした展示空間そのものを変えてしまう、新しいタイプの芸術作品だと感じました。
こちらは森美術館で9月23日(水・祝)まで開催されていますので、そうした一風変わったアート空間を楽しみたい方にはおすすめです。
それでは。

