Riversideに何が起きたのか ― 4人の声明とこれまでの経緯まとめ
2026年4月23日、ポーランドのプログレッシヴ・ロックバンド Riverside のフロントマン、Mariusz Duda(Vo., Ba.)が突然の声明を発表した。
実質的にバンドの象徴的存在であった彼が、25年間在籍したバンドを離れること、そしてバンドの継続については「見出せない」と明言したのだ。
これについては、Prog Project の X アカウントでも取り上げた 通りだが、その後、他のメンバーたちも次々と声明を発表していたことがわかった。
それぞれの異なる視点での言葉が積み重なることで、バンド内で起きていたであろう出来事が推測できるようになってきた。
ここでは、4人の声明を時系列に沿って整理し、経緯をまとめてみたいと思う。
※本記事のヘッダ画像は、バンド公式サイト からダウンロードした写真だ。もう、この4人が揃うことは無いのかと思うと、とても悲しくなる。
4月23日(木):Mariusz Duda (Vo., Ba.) の声明
※以下、日本語訳:
皆さんへ、
25年間の歩みを経て、私の Riverside での旅が終わりを迎えることを、ここに正式にお伝えしたいと思います。
このバンドが長年にわたって成し遂げてきたことを、私は誇りに思っています。しかし何より誇らしいのは、私たちの周りに集まってくれた、素晴らしく、そして並外れて誠実なファンの皆さんの存在です。すべてに感謝します。
残念ながら、現在のバンド内の状況では、私が最も情熱を注いできたこと、すなわち新しい音楽を創ることを、もはや追求することができなくなりました。それは常に私の人生の主な目標であり、最優先事項でした。加えて、近年の現実とはかけ離れた「笑顔のバンドイメージ」を無理やり取り繕い演じ続けることにも、疲れ果てました。
私を知る人たちはご存知でしょうが、私が感じていることや人生で起きていることは、通常、私の歌詞に反映されます。最新アルバム『The World Under Unsun』においても同様でした。実はあのアルバムは、Lunatic Soul の物語の終わりについて語ったものではありません。また、「有害な関係からの脱出」は「恋愛関係」のことを指してもいません。主なインスピレーションはバンド内の状況であり、"The New End" という曲は、何よりも Riverside のファンへの別れの言葉として書かれたものでした。その曲に込められた、抑えるのが難しかった感情が、すべてを物語っています。
ようやくこれを声に出して言えることを、嬉しく思います。
詳細には立ち入らずに申し上げますが、Riverside のメンバーの多くとは今も良好な関係を保ちながら、これからの数年間は、Lunatic Soul およびサイドプロジェクトでの活動に主軸を置いていきます。
Riverside については、現在のラインナップでバンドが継続する可能性は見出せません。また、異なるラインナップで再始動することも、非常に複雑な問題になるでしょう。
そのため、私の創造的なエネルギーを Lunatic Soul へと注ぎ直します。Lunatic Soul はまもなく新たなフェーズに入り、私の主要なスタジオ・ライブ・プロジェクトとなります。
悲しみや失望を感じる方がいることは、十分に理解できます。しかし人生のある時点で、自分自身のニーズを最優先に考え始め、もう誰かに利用されることをやめることに、何ら問題はないと思っています。誰もが別の何者かを演じているこの世界において、ようやく自分自身でいること、そして本当に自分を気にかけてくれる人たちに囲まれることは、価値のあることです。
皆さんのサポートとご理解に感謝します。今後の音楽的な計画でも引き続き一緒に歩んでくださる皆さんに、心からの温かい挨拶を送ります。
敬具
Mariusz Duda
【補足】「toxic relationship(有害な関係)」「taken advantage of(利用されていた)」「forcing a smiling band image(笑顔のバンドイメージを無理やり演じていた)」「pretending(取り繕っていた)」など、かなり強い言葉で書かれているのがショッキングだ。昨年発表された Lunatic Soul のアルバム『The World Under Unsun』収録の "The New End" が Riverside への別れの曲だったという告白は、当時からバンド内部で葛藤が続いていたことを示唆している。
↑の声明の中で引用されている、彼のソロプロジェクト、Lunatic SoulのPVも貼っておきます
— 【Prog Project】 (@prog_project) April 24, 2026
どうやって相手を傷つけずに終わらせればいいのか…という葛藤が描写された歌詞になっており、いま改めて読むと切なくなります…🥺
LUNATIC SOUL - The New End (OFFICIAL VIDEO)https://t.co/r2knskq4lz
4月23日(木):Piotr Kozieradzki (Dr.) のFacebook投稿
※以下、日本語訳:
バンドを結成しなかった人間が、どうやってそれを解散できるのか?なかなか興味深い 🙂
【補足】他のメンバーが長文の声明を発表するなか、バンド創設メンバーのKozieradzki が投稿したのは、この一言だけだった。文末のスマイルマークと言い、皮肉を込めたトーンを感じさせ、現在の Mariusz との距離感を浮き彫りにした。
4月29日(水):Michał Łapaj (Key.) の声明
※以下、日本語訳:
親愛なる皆さん、
これまで Riverside の状況について発言していないという声が出ていることは承知しています。ご想像の通り、これは難しく、繊細なテーマです。不必要な感情や言葉を交えずに、本当に言いたいことを言うのは簡単ではありません。私自身もまだすべてを消化しきれていません。なぜなら木曜日の声明は私にとっても驚きだったからです。
まず何より、共に歩んできた長年の日々に感謝したいと思います。Riverside は私にとって、これからも単なるバンド以上の何かであり続けます。
物心ついた頃から、私がやりたかったことはただ一つ、音楽を演奏することでした。だからこそコンサートで人々の喜びをあれほど深く吸収できたのだと思います ― 皆さんと音楽を分かち合うことが、私に信じられないほどのエネルギーを与えてくれました。ステージで過ごしたすべての瞬間、すべてのコンサート、皆さんとのすべての出会いは、私にとって本当にリアルで、かけがえのないものでした。はっきり言わせてください ― ステージの上でも外でも、私の感情も笑顔も、常に本物でした。
ここ数日、バンドの状況について、さまざまな言葉や解釈が飛び交っています。それがさまざまな感情や疑問を呼び起こしていることは理解しています。私たちは20年以上の付き合いで、どんな長い関係と同じように、素晴らしいものを一緒に作り上げてきた一方で、解決すべき課題もあり、両者の歩み寄りを必要とする難しいテーマもあり、そしてさまざまな個性がありました。あるところまでは、そうした違いこそがバンドとしての私たちを形作り、突き動かしてきました。完璧な人間も、白黒はっきりした状況も存在しません。残念ながら、一部のメンバー間で高まっていた対立と、合意の不成立は、今回ばかりは乗り越えられないものとなってしまいました。ただ、私がその対立の当事者であるという憶測からは距離を置きたいと思います。
ほとんどの困難な状況は、その意思さえあれば解決できると私は信じています。同時に、人はそれぞれの道を歩み、自分自身のニーズに基づいて決断を下すこともあります。私はそれを尊重します。しかし、解釈や憶測が、私たちがバンドとして共に作り上げてきたものを曇らせてしまうことは望みません。
長年にわたり Riverside の周りに生まれたコミュニティは、バンドとファン以上の何かでした。今、私が最も恋しくなるのはそれです ― コンサート後の会話、何年もかけてよく知るようになった人々との出会い、そしてステージで交わし合った笑顔 😉
私自身はこれからも、自分が愛することを続けます ― 創作と作曲、ゲームや映画の音楽制作、そしてソロ活動の発展。
ソロプロジェクトにせよ、バンド関連にせよ、また皆さんとお会いできることを願っています。
サポートと、共にいてくれたことへの感謝を。人生はさまざまなシナリオを描くもの ― 時間が何をもたらすか、見守りましょう。
Michał
【補足】「木曜日の声明は私にとっても驚きだった」という一文から、Mariusz が単独で声明を発表したことは Michał にとっても寝耳に水だったように見える。また「私がその対立の当事者であるという憶測からは距離を置きたい」とも明言しており、対立の中心はあくまで別のメンバー間にあったことを伝えている。
4月29日(水):Maciej Meller (Gt.) の声明
※以下、日本語訳:
RIVERSIDE…
最も大切なことを書く前に…
これまでの声明を見ていると、多くの人にとって「バランスの取れた声」なるものが貴重らしく、何も言わないようでいて、何が・誰が・なぜこうなったかを示してほしいという期待があるようです。何が傷口を広げ、何がより分断を招き、何が支えになるか ― 今、誰を支持すべきかの評決まで出始めています。でも、驚きや混乱はわかります、理解できます。私はこの「インターネットの心理」と私たちの「集合意識」(むしろ無意識と言うべきか)を少し学んできました。私自身、悲しい気持ちや痛みが嫌いです。「何か別のことに逃げる」「方向を変える」方が楽ですから。だから「新しいフロントマンで続けろ!」という即座の戦闘的な叫びも驚きませんでした。「前進するか、死ぬか」の論理ですね。しかもそれが(「公式な」)喪の初日に… まあ、私たちは感情を持つ人間ですから。それぞれが自分なりに感情と向き合うものです。私も今、自分なりに、書きたいように、書けるだけ書きます。
さて、もう一度この川に飛び込みましょう。
これがすべての人にとって、どれほど困難で複雑な時期であるかは言うまでもありません。ただ、この最後の1年と声明をめぐって最も感情的な反応と議論を呼んでいるのは何かについて、私自身のピースをパズルに加えたいと思います。
2025年4月、バンドが最後のツアー(Cruise To The Edge)から戻ったとき、2025年末まで活動を一切休止することは全員が知っていました(皆さんもご存知でしたね)。すでに続いていた対立が、その頃に頂点を迎えていました。これが「ただ2人の間の対立」だと言うのは、私の目には大きな単純化です ― 実際にはその対立が核心ではありましたが ― バンド全員の間で、強さは違っても火花が散っていたからです。これは普通の人間関係のダイナミクスです:良いときもあれば悪いときもある。ただ「悪いとき」が恒常的な状態になって、「解除ツール」が尽きたとき… 爆発します。ちなみに2025年の休止期間は、さらなる話し合い、説明、関係修復、そして決断の時間を与えるためのものでした。しかし結局、核心的な問題での合意には至りませんでした。
そして声明へ。2026年1月初旬から、Mariusz はバンドの全メンバーへのメールで、この状況を踏まえてバンドのSNSに共同声明を発表することを提案していました。2月には、その内容案も提示しました ― ちなみにそれは今回のものより穏やかで、外交的な表現でした。要約すれば「無期限の活動休止について」というもの。それもまた全メンバーに送られました。私はそのメッセージを持っているので確かです。しかし全員の同意は得られませんでした。内容についての議論も、交渉も、一切ありませんでした。
ですから、ご覧のように、私は Mariusz の声明を予期していました。だから皆さんは今日、3通目のメッセージを受け取ることになったのです。
岸辺へ。
私の Riverside での時間も終わりました。最も重要な理由を一つだけ明確に言わせてください ― リーダーであり、Mariusz というこれほど重要な存在なしにバンドを続けることは、私には考えられません。私は内側にいました、実情を知っています。そしてこれが私の、個人的な決断です。その権利は私にあります。
次が最も大切なことです。できればこれを一番鮮明に覚えておいてほしいのです。
皆さんのサポート、受け入れ、そして温かさへの感謝を言葉にするのは難しいです。これは決して忘れません。このチャレンジを引き受けたとき、どれほど大変だったか、そして自分でも完全には気づいていなかったことを、私だけが知っています… 皆さんの多くも簡単ではなかったことは想像できますし、わかっています。私たちは皆が皆、好き合わなくていいですよね?😉 でも一緒にいることで、気持ちが楽になりました。悲しみや後悔はもうしばらく前から感じていて、今日は何かしらの安堵と、この時間への感謝が強くあります:困難だったけれど、それは本当に得難いものでした。この8年足らずの間、自分にとって最も大切だと思うことを一つだけしようとしてきました ― できる限り最高の演奏で皆さんに Riverside の音楽を届け、この共有された体験と、その場にいることを楽しむこと。そして何が一番美しかったかって?この音楽が、私の人生にまったく新しい素晴らしい友情、関係、そして多くの皆さんとの縁を生み出してくれたこと。それは今も続いていて、これからも続いてくれることを願っています。それこそが本当の力です!
今、起きていることは、皆さんが持っているものを変えるわけではないことを覚えていてください ― Riverside の素晴らしい音楽はそこにあり、美しいコンサートの思い出も、そして何より、私と同じように、バンドの音楽を通じて出会った人たちが、皆さんの傍にいます…
一部の皆さんとは、これでお別れかもしれませんが、多くの皆さんとはまた何度でも会えると確信しています。さまざまな形で新しいサウンドが生まれるでしょうから、きっかけには事欠きません。
どうかお元気で、Riverside を覚えていてください。そして改めて、すべてにありがとう。
Maciek
【補足】4人の声明の中で、最も多くの内情を明かしたのが、2016年に Piotr Grudzinski が亡くなった後、後任としてバンドに加入した Maciej だ。彼はポーランド語のみでコメントを発表しており、英訳は付いていなかった。
Mariusz が今年1月から共同声明の発表をメールで提案していたにもかかわらず、メンバー内で同意が得られず、議論すらされなかったという事実…。Mariusz が単独で声明を発表するに至った経緯が初めて明らかになった。
なお、「川に飛び込む」「岸辺へ」という表現は、バンド名「Riverside」にかけた言葉遊びと思われる。
現時点での状況整理
Mariusz Duda (Vo., Ba.):脱退を表明。Lunatic Soul をメインプロジェクトとして活動継続。
Piotr Kozieradzki (Dr.):正式声明なし。
Michał Łapaj (Key.):ゲーム・映画音楽やソロ活動を継続予定。
Maciej Meller (Gt.):脱退を表明。ソロ活動および Quidam の活動に注力。
※今後の Riverside の名義や権利の扱い等については、明らかになっていない。
最後に
筆者(Tate)は、2008年、ベルギーの小さな村で、彼らのライブを一度だけ観たことがある。

当時のセットリストは コチラ
当時から独自の世界観を築き上げていた彼らは、その後、めきめき頭角を現し、現代プログ・シーンを代表する一バンドとなったことは言うまでもない。
結局、来日が実現することなく、このような形でバンドの歴史が幕を閉じることになったのは本当に残念だ。
私も、もっと彼らのライブを観ておけば良かったと、強い後悔に襲われている。
ただ、上記の通り、Mariusz は Lunatic Soul を続けると明言しているし、Maciej のソロや Quidam も注目すべき活動だ。引き続き彼らの動向をフォローしていきたいと思う。
Riversideを脱退したMaciej Meller🎸は、
— 【Prog Project】 (@prog_project) May 4, 2026
ポーランドの劇伴作曲家Robert Kanaanと、Kanaan/Meller 名義で『ELYSIUM』という作品を昨年11月にリリースしています
私も聴き始めたばかりですが、Riversideの音楽が好きな方にもオススメしたいインスト作品ですね
Endless Gameshttps://t.co/oYJGOY7lWc https://t.co/LOpEHRdZi2 pic.twitter.com/MKc9e9cDFa
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