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【再掲載】三世代プログレ・トーク

現在進行形で活動する「プログレッシヴ」なバンド達を応援・紹介し、シーンの裾野を広げようとしている、我々 Prog Project 
世代の違いによって、「プログレ」の捉え方にはどんな違いがあるのだろう?という興味のもと、「U30」代表としてプログレッシヴ・アイドル XOXO EXTREME(通称:キスエク)で活躍する 一色 萌 氏、「アラ還」代表として「不思議音楽館」主宰の 井上(大将軍) 氏をお招きし、アラフォー代表としてProg Projectの Yayoi Tate がオンラインで語り合いました。(収録:2023年10月下旬、Zoomにて)

※本記事は、2023年11月~12月、池袋のPGS STOREにて店頭限定配布したフリーペーパーの内容を再掲載したものです。


トーク参加者のプロフィール

一色 萌(ひいろ もえ):プログレッシヴ・ロックを歌って踊るアイドルユニット XOXO EXTREME(通称:キスエク)に結成当初から参加 。アイドルオタク。普通じゃないアイドル、変わった音楽をやりたいと 思っていたところ、キスエクのオーディションに出会う。
(トーク当日は、MAGMAの “The Last Seven Minutes” をカバーしているということでMAGMA Tシャツを着て参加してくださいました!)

井上(大将軍):レコード通信販売店「ORANGE POWER」を10年ほど運営した後、ミニコミ誌を経て、2020年、世界唯一のサイケ・プログレ・全世界を包囲するロック・マガジン「不思議音楽館」を発刊。3年間で6冊が自費出版され、毎回、即完売。2022年からFushigi Rock Festivalも主催。

Yayoi Tate:2021年、音楽ライターの高橋祐希らと共に、2000年代以降のプログに焦点を当てた「PROG MUSIC Disc Guide」を出版。以降「Prog Project」として現在進行形のプログ・シーンを伝えるべく、アーティストや業界関係者のインタビュー、海外ライヴ・レポート等の YouTube配信 を行っている。

司会:Izumi Idogawa(Prog Project)
編集:Yayoi Tate(Prog Project)

各自が「プログレ」に足を踏み入れたキッカケ、いわゆる5大バンドとの接点など

Yayoi Tate(以下、Tate):私は小・中学生の頃から洋楽にハマり、メタルを中心に聴いてたんですが、やっぱり「プログレ」って、どこか難しい印象があったんですよね。そんな私が興味を持ったキッカケはDREAM THEATERの存在。彼らがRUSHに影響を受けていることは有名だし、PINK FLOYDの「狂気」('73)をはじめとした、プログレ大御所バンドのカバーもたくさんプレイしている。自分が愛するバンドが好きなバンドは聴いてみなくては、ということで、遡って勉強した感じです。
 5大バンドの中で1つを選べと言われたら、自分にとって一番聴きやすかったYESなんですが、リアルタイムで初めて買ったPINK FLOYDの「対」('94)も印象に残ってます。その後「P・U・L・S・E」('95)が出たとき、映像を観て「なんてスケールの大きいライヴをする人達なんだ!」と感激して、色々遡ろうとしたんですが、どれを聴いたら良いかわからなくて、結局つまみ食い状態になってます。KING CRIMSONも、ここ数年、来日したら必ず観に行って、全曲は知らないけど、ライヴで聴いてカッコイイ!と思った曲をアルバムで遡って聴く、みたいな感じです。
 昔はディスクユニオンのプログレ館とか、怖くて行けなかったです。魔窟なんて言われてましたし(笑)、どれだけマニアの人が来るんだろう?みたいな感じでビクビクしてました。行ってみたら全然大丈夫だったんですけど。

井上(大将軍)(以下、大将軍):僕が洋楽を聴き始めたのも小学校から中学ぐらいで、当時のラジオで流れていたヒット曲も色々ある中で、一番初めに好きになったのはハード・ロック、BLACK SABBATHでした。映画も好きで、映画音楽のサントラはプログレに通じるものがあると思うんですよね。そんなときに先輩からKING CRIMSONを勧められて、貸してもらったりしたのがプログレに入ったキッカケでした。その時点でPINK FLOYDの最新作は「アニマルズ」('77)だったんですよ。EMERSON, LAKE & PALMER(以下、ELP)は「三部作」('72)の頃。YESも「究極」 ('77)を出した頃ですね。もう作風が変わってきている頃だったので、過去の作品を聴いて、良いなと思う感じでした。
 あの頃は「プログレ」と言っても、普通の洋楽として聴かれていた時代で、やっぱりブリティッシュ・ロックが一番強かったんですよ。(LED) ZEPPELINDEEP PURPLE、みんなイギリスじゃないですか。5大バンドもみんなイギリスでしょ。じゃあ次はどの国が来るかっていうと、ドイツだったんですね。CANとかNOVALISとか。その頃から日本ではイギリスとドイツが主流で、MAGMA聴いてるって言ったら、変な人扱いでしたよ。

Izumi Idogawa(以下、Izumi):ドイツのものが聴かれていたっていうのは、私、初めて知りました。

大将軍:日本のレコード会社も、イギリスに続いて、プログレ的なものはドイツのものを出してたんですよ。その後イタリア、フランスが出てきて、今やイタリアン・ロックはファンもだいぶ多くなってますけど、それは70年代半ばに日本盤が出て、幅広く知られていったからなんですよ。それまではフランス語やイタリア語で歌うプログレなんて、みんな聴いたことなかったんで、それはたまげたっていう。

Tate:この企画に際して、「プログレ」の本質って、いったい何なんだろうということを考えてたんです。どうしても大御所プログレ・バンドばかりが取り上げられてしまいがちだけど、それ以外の「プログレ」の定義って何なんだろうな、と。そう考えたときに「プログレッシヴ=進歩的」って意味だし、ちょっと変わったこと、他ではやっていないようなことをやっている、みたいな要素が大きいのでは?と思ったんです。我々3世代、視点が違う、それぞれの「プログレ」の話を聞いてみたいな、と。

大将軍:当時は、誰もやってないから「プログレッシヴ・ロック」って言われたんですよ。今はもう、やり尽くした感がありますよね。今の5大バンドは、もう懐メロを聴きに行ってるような感じで。今の時代の音楽として、どうやるかっていうことを考えないと、いつまでも「CRIMSONっぽい」とか言われてしまう。「プログレ」というジャンルではあるけど、「プログレッシヴ」にやるっていうのは、なかなか難しい。そんな新しいことって急にできない。
 「プログレ」と言うと、華やかなキーボードが鳴っていて、クラシカルで、テクニックが凄くて、みたいなバンドが日本ではもてはやされるけど、僕はもう再発で同じものばかりは買わないです。何十枚、同じものを買うんだよっていう(笑)。それだったら、もっと違うものを聴いたり、同じ年代でも違う国のものを聴いたりしてみたいなと思いますね。

Tate:たぶん、大将軍の世代では、かなり珍しいタイプの方だと思うんですよね。

大将軍:そうですね。僕はもう5大バンドはさんざん聴いたんで、もっと違うものを聴きたいんですよ。

Tate:大将軍と同世代の方と、こういう話をされたりします?新しいバンドに興味ない?みたいな。

大将軍:「これ、GENESISよりもGENESISっぽくて面白いよ」とか話すけど、GENESIS好きな人は、やっぱりGENESISが良いんだって。5大バンドは、それだけ日本のファンにとっては絶対的なもので、だからこそ今でも売れる力を持っているんだな、と。
 TateさんみたいにDREAM THEATERから入っている人は、今のメタルのギターの音って普通だと思うんだけど、ああいう音がダメな人っていうのも、結構プログレの人にいるよね。

Tate:そういう絶対的な信念がプログレの世界にはありますよね。萌さんには、どう見えているか気になる。

一色 萌(以下萌):プログレ・アイドルを始めるときフライヤーを配ったんですけど、「え、プログレ?そんな厄介なところに手を出して大丈夫なの?」みたいなことを言われて、ビックリして怖くなったことがあります(笑)アイドルをやるからには、プログレッシヴ・ロックが好きな人達に喜んでもらおうと思ってるんですが、「アイドルなんか(怒)」みたいな人が多いんだとしたら、ちょっと怖いぞと思ってビクビクしてました。でも実際にライヴまで会いに来てくれるような人達は、そもそも新しいものにそんなにハードルが高くないというか、受け入れる態勢が整っている人達が多いのかもしれないです。今、来てくださってるお客さんも、プログレが本当に好きな人が多いんですよ。いつもライヴのときには色んなバンドのTシャツを着てこられて、誰のライヴだかわからない、みたいな状態になるんですけど、皆さん、すごく優しくて。色々教えてくれる。

Tate:「教えたい!」っていうのは、確かにあるかも(笑)

:はい、キスエクがやっている曲が、プログレ・バンドさんのオマージュになっていることもよくあるんですけど、それをお客さんが「この曲のあそこは何々のどこっぽい」みたいな風に教えてくれたり。「この曲が好きなんだったら、これも好きかも」みたいな感じでお勧めしてくれたり。楽しいです。

大将軍:良いお客さんですね。

Izumi:萌さんは、実際にそういう元ネタになったバンドの音楽を聴いて、どんな感想を持ちましたか?

萌:キスエクの最初のオリジナル曲が “悪魔の子守唄” っていうんですけど、11分ぐらいで、まあ長いんですね。プログレの世界では、そうでもないかもしれないんですが、持ち時間が15分しかないライヴもあったりする中で、11分っていうのは、めちゃくちゃ長くて(笑)。

Tate:1曲しかできない!

萌:本当に(笑)。その曲は展開がたくさんあって、だいぶ変わった曲なんですけど、色んなバンドのキーワードや要素がギュッと盛り込まれてるっていうのを後から知って。どのバンドの、どの部分かっていうのを聞いたときは、すごく面白かったです。他にも “Progressive Be-Bop” っていう曲は、イントロがほぼELPの “Hoedown” なんですね。私達が慣れ親しんでいたものが、あのELPの有名な曲のイントロだった!というのを知ったときは「えーっ」ってなりましたね。
 “悪魔の子守唄” は、面白いことをしようとするキスエクの気概を込めた曲です。初めての方が一発で「わー、楽しい!」ってなるよりも、ちょっと「ん?」って感じで、3回ぐらい見たらクセになります。“Progressive Be-Bop”は、初めて聴いた人でも一緒に盛り上がれる曲なので、これもプログレだと知ったときは「実はプログレって色々あるぞ?」と、気づいたんです。「長くて変拍子が多くて、静かになったと思ったら急に壮大な感じになって、結局どこがサビだったんだろう」みたいなのがプログレ、だと思っていたら「あ、楽しい曲もあるんだ」と。そんな感じで、プログレに対して心を開いていった感がありますね。

Tate:なるほどなぁ。私、すごく新鮮です、萌さんの話。

萌:本当ですか?

Tate:面白いです!ちなみに他のメンバーは、どれぐらいプログレに興味を持っているんですか?

萌:バイオリンを弾く、小嶋りんっていうメンバーがいるんですけど、彼女もすごく音楽好きなので、FOCUSさんのライヴにも一緒に行きました。
 アイドルって、プログレに限らず、実は結構、色んなジャンルの音楽を試してるんです。私達が活動する前から、色んな実験的な音楽を「アイドル」というフォーマットで、色んな人がやっていて。その中で難しい音楽をアイドル自身が理解して、「私達は難しいことをやっているのよ」と思ってやっているパターンと、「よくわかんないけど、楽しい!」と思ってやっているパターンがあって、私は後者の方がすごくキラキラして見えるんです。でも、自分は割と興味を持ったものを知りたくなっちゃうタイプ。自分でも色々聴いてみながら楽しんでいきたいなっていう感じで。MAGMAさんのライヴにも行ったりとか。まだまだ詳しいって言えるほどの知識量ではないですけど、楽しんでプログレに触れながらアイドルやってます。

Tate、大将軍:素晴らしい!

萌:ありがとうございます。プログレッシヴ・ロックがすごく好きな人の中には、(プログレを)よく知らないまま(アイドルを)やっていることに対して、「それでいいの?」って感じる人もいると思うんです。そういう人達にも「ちゃんと音楽と向き合って、やっているんですよ」「プログレッシヴ・ロックに愛がないわけではないんですよ」っていうことを伝える役割を持つメンバーとして、自分はいられたらいいかなって思っています。

Tate:ところで、アイドルの皆さんって、バンド名にも全部、「さん」付けするの面白いですよね 。

萌:よく言われます(笑)。共演のグループとかにも「さん」付けすることが多くて。プログレ好きの皆さんには、それ変だよって、笑われます。 

今、そして、これからの「プログレ」シーンについて思うこと、期待すること

Tate:私は、特に若手に関しては、日本のバンドと海外のバンドのファンがもっと行き来するようになると良いなと思っていて。(大将軍が主催する)「Fushigi Rock Festival」は、それを目指している感じがして、良いなぁと思っています。
 最近の日本のバンドは、すごくテクニカル志向が強まっていて、特にマス・ロックやインストのバンド達は、「これ、もうプログレじゃん!」みたいな音楽をやっている人達がたくさんいるので、そういう人達とプログレのファンの垣根が無くなっていったら面白いのになぁって思いますね。
例えば、日本のジャズ・ロック・バンドのFOX CAPTURE PLANが私はすごく好きなんですけど、彼らはLIQUID TENSION EXPERIMENTが好きと公言していて。そういう影響を受けた人達も結構いるんだろうなと思ってます。

大将軍:ちょっと話が飛びますけど、幾何学模様ってバンドがいるでしょ。

Tate:はい、海外でめちゃ有名になったバンドですよね。

大将軍:そうそう。彼らを観に行ったとき、対バンがOGRE YOU ASSHOLEっていうバンドで、彼らはCANみたいなことをやってるんですよ。で、実際にライヴを観に行ったらPINK FLOYDみたいで、この人達は何でもできるんだなって思いました。最近のプロモーション・ビデオを見ると、今度はテクノみたいになっていて、すごく面白いなと。

Izumi :これから、どういうバンドが出てくると良いな、とか、どんな音楽を聴いてみたい、とか、皆さん、いかがですか?

Tate:難しいですね… 一番長く音楽を聴いている大将軍、まだ聴いたことがないものって、何かあります?

大将軍:なかなか想像できないですよね…  全然プログレじゃないんですけど、最近、KIRINJIが好きで観に行っていて、彼らは僕の歳でも聴けるラップをやってるんですね。おしゃれなの。今のKIRINJIって、元々のSTEELY DANっぽい感じは残ってるんだけど、渋谷系の音楽に、今の最先端のエレクトロニカやラップが入ったりして、成立してるってのはすごく面白い。娘に聴かせたら「最高」だと言ってます。「こんなのあるんだ!」って。

Izumi:若いバンドじゃなくても、可能性があるってことですね。

大将軍:可能性ありますよね。自分の音楽性に合うように、新しいものを取り入れている。そう考えると、若者世代のマス・ロックだけでなく、おじさんたちも何か少し冒険をして欲しいなあ、と。ベテランの人も頑張れ!っていう感じですよね。若い人は、ガンガンやりたいことをやれば良いと思います。ポップさを持ちつつも、ちょっと変なことをやってみたり、歌謡曲なのにシューゲイザーが入ってたりとかしたら面白いなと。

Tate:確かに、そういうクロスオーバーは、以前と比べても、どんどんジャンルレスになっているから、これから更に進んでいく気はします。

萌:私はアイドルから入って、そこから色んな音楽に出会ってるんですけど、それは、これまで色んな音楽をやってきた人達が今はアイドルに関わっているからだと思うんですね。だから、もっと色んな音楽が、色んなフォーマットで表現されていったら、その音楽の新しい味わい方に繋がっていくのかなと思っていて。音楽ジャンルにはそんなに詳しくないんですが、色んな形で、色んな音楽を見られたら面白そうだなって思います。

Izumi:数年前ぐらいから、アイドルという分野が、自由に色んな音楽を作れる場所になっている、という話を聞いたことがあります。

萌:そんな気がします。色んな音楽を「アイドル」で試している中で、たぶん、最後まで触れられてこなかったのがプログレなんだろうな、と。さっき「最初は最先端だったけど、だんだんそれが懐メロみたいになっちゃった」という話がありましたが、それに近いことがアイドルでも起きていた気がするんです。そこでキスエクは、誰もちょっと怖くて触れてこなかったところに、今チャレンジしていて、それを新鮮に思ってもらえるんだったら、プログレッシヴ・ロックの世界にも、ちょっと貢献できてるのかな、と思うし、そういう貢献の仕方を、これからもしていきたいなって思いますね。

Izumi:ありがとうございます。Tateさんは、今後こういうの聴いてみたいとか、ありますか?

Tate:最近、私は今更ながらフュージョンにハマり始めていて、キッカケは日本の若手フュージョン・バンドのDEZOLVEなんですけど。改めてCASIOPEAとか、J-FUSIONをちゃんと聴いてみよう、みたいな。そういうことを若手バンドに気づかされるっていうのも面白いし、DEZOLVEのメンバーはプログ・メタルも好きな人達だから、そういうジャンルの壁を超えていく動きがもっと活性化したら良いなっていうのはありますね。

Izumi:確かに、かつては交わらなかったようなジャンルがクロスオーバーして、新しい音楽が出来ていると思いますね。古い音楽を現代に持ってきて、新しいものを作り出している若手も増えているし、そういうバンドが今後、どんどん出てくると良いですね。皆さん、どうもありがとうございました!


5大バンドPICK UP

一色 萌
KING CRIMSON「Red」('74)
 一番最初の生誕ライヴのとき、告知画像のデザインが「Red」オマージュだったんです。私がメンバーの中で赤色担当だからなんですけど。で、そのライヴに、バック・バンドの方が遊びに来てくださって、誕生日プレゼントに「Red」をいただいたんです。聴いてみたら、すごく気に入って。 “One More Red Nightmare” がすごく好きです。プログレ・アイドルだから、とかではなく、普通にプライベートでずっと聴いていたいなって思いました。5大バンドさんとか、プログレのバンドさんの中で、誰が好きですか?って聞かれたら、KING CRIMSONさんが好きですって、いつも答えてます。

Yayoi Tate
YES「Yessongs」('73)
 最近のYESもライヴを観に行きましたが、やっぱり70年代に比べたら霞んでしまうというか、あの時代をリアルタイムで経験された方が本当に羨ましいです。
 プログレは、スタジオよりもライヴ・アルバムが本領発揮だという気がしています。高い演奏技術がないと、インプロヴァイズしたりできないので。楽器が巧い人達の職人芸に、私はすごく魅力を感じます。
 このアルバムは、そういったプログレのライヴ・アルバムの原点なのではないでしょうか。最近のバンドでも、ライヴ・アルバムこそ、本当の魅力が溢れ出す気がしています。「ライヴ見てナンボ」っていう感じ。

井上(大将軍)
PINK FLOYD「神秘」('68)「ウマグマ」('69)
 PINK FLOYDは、「狂気」以降はシンセサイザーがメインに使われてるんですよ。僕は、それよりも前、60〜70年代に、よくあんな音を出したな、という「神秘」「ウマグマ」あたりが好きですね。ハモンドオルガンを、エコーを深くかけた感じで使っていて。ギターのディレイとかエフェクトとか、そういう空間を手作りでやってた4人の時期っていうのが一番僕の中で納得できる。(音が)モヤモヤしていて、それがイギリスならでは。自分の中でPINK FLOYDっていうのは、この音なんだな、と。サイケデリックからプログレに本格的に入っていくあたりの音というのが、なかなか演奏が巧くても真似できない。バンドとしてのオーラがどわんと出てますね。

オススメしたいアルバム!

一色 萌
人間椅子「無限の住人」 ('96)

八十八ヶ所巡礼「八+八」 ('10)
 日本のバンドさんだと、人間椅子さんが好きです。ベースの鈴木研一さんが、連載やファンクラブのコラムで、自分が好きなハード・ロックのオススメを語ってくださるので、それを勉強したりしてます。
 八十八ヶ所巡礼さんも好きです。「人間椅子が好きなら絶対に好きだと思う」と、お客さんから言われて聴いてみたら、ホントに凄くて。私は楽器を演奏しないので専門的なことはよくわからないんですけど、たぶん、めちゃくちゃ上手なんだと思います。 “仏滅トリシュナー” という曲は、ベースがすごいのが素人でもわかります。どのアルバムを聴いても新鮮で、いつも楽しみにしてます。

大将軍:人間椅子の“針の山”。あれはBUDGIEの “Breadfan” だね。
Tate:METALLICAもカバーしてるので、私はそっちの方が馴染みがあります。
大将軍:萌さんはBLACK SABBATHだけじゃなく、BUDGIEも聴いた方が良いかも。
萌:人間椅子からも色々広がっていって楽しいです!

Yayoi Tate
LEPROUS「Bilateral」 ('11)
OPETH「The Roundhouse Tapes」 ('07)
 最近はノルウェーのLEPROUSを一番推しています。何度か来日もしていて、元々はEMPERORのIhsahnのバック・バンドでした。PORCUPINE TREEやRADIOHEADの影響を受けている人達ですが、今時のポップ・アーティストの要素を取り入れたり、実験的で面白いこともやっています。わりとジャンルレスな音だと思うんですが、出自からメタルで括られちゃうので、もう少し幅広い人達に聴いてもらうチャンスがあれば良いのに、と、もどかしく感じています。
 その前にハマっていたのは、スウェーデンのOPETH。デス・メタルとプログレを融合した人達ですね。彼らも色んなことを模索していた人達ですが、最近はちょっと守りに入った感じがして、前ほど聴かなくなってしまいました(苦笑)。2010年ぐらいまでの彼らは本当に好きで、このライヴ・アルバムも神懸かっているとすら感じます。デス声が嫌じゃなければ、プログレ・ファンにもアピールすると思います。

井上(大将軍)
曇ヶ原「曇ヶ原」 ('21)
EVRAAK「Evraak I」('21)
 今は曇ヶ原とEVRAAKを推したいですね。曇ヶ原はギタリストがBLACK SABBATH大好きだから、ギターも昔のハード・ロックの音で、メタルの音じゃないです。キーボードは王道のプログレ。だけど、そこから突如フォークが出てきてしまうという。ブリティッシュ・プログレの王道とハード・ロックが混ざっていて、そこに日本の雰囲気がフォークソング、というところが面白い。もしかすると、ゆらゆら帝国みたいな、中央線沿線のアングラから出てきたバンドがフジロックに出て売れちゃうっていうのに近い形を狙えるんじゃないかと。一般の人に聴いてもらえる、エンターテインメント性を持ってるかなと思うんですよね。
 EVRAAKはアンサンブル重視のバンドで、編成的にはYESに管楽器が入ってるけど、やってるのは最近のDREAM THEATER以降のギターの音の中で、アヴァン系も入ってる感じです。女性ヴォーカルが80年代のインディーズ・バンドを思い出させる感覚がある。MAGMAの要素もあるし、ドラムやベースは完全にYESの流れを汲んでいるので、そんな展開もあるけど、明るい曲は無いですね。
 この2バンドが、従来のプログレが聴けるライヴハウスにこだわらず、幅広く若い子が聴けるところで一緒にやることで、ついてくるお客さんがいるかもしれないと思っています。「プログレ」とは思われない形で売れて欲しいですね。

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