68歳と77歳の「起業家」が語った夜——富士通 Uvance Innovation Studio で、多世代対話イベントを開催しました
7月6日の夜、富士通さんの Uvance Innovation Studio をお借りして、多世代対話イベントを開催しました。FUTURE YOU(Project MINT)と、自分の価値観に沿った生業づくりに伴走するコミュニティ asobiji(GiFT合同会社・藤倉礼亜さん)との共催です。
平日の夜にもかかわらず、20代から70代まで、本当に幅広い世代の方が集まってくださいました。
なぜ、この場をつくったのか

いま、若い世代は分からないことがあると、上司や先輩ではなく、まず検索とAIに聞きます。気まずくないし、否定されないし、24時間すぐ返ってくる。LinkedInの2024年調査では、Z世代の5人に1人が、この1年間、職場で50歳以上と一度も会話していないそうです。
でもAIが答えられるのは、言語化された情報だけ。判断の勘どころ、迷い方、修羅場の知恵——人生の先輩たちが持つ「言葉になる前の知恵」は、生身の対話でしか渡りません。
主催の私たちは二人とも40代。まだ人生後半の経験はありません。でも、多くの先輩世代と向き合うなかで、"必要とされているのに、届いていない知恵"がある、とずっと感じてきました。上の世代と若い世代の「あいだ」に立つ私たちだからこそ作れる場があるはず。そんな思いで、この夜を企画しました。

当日のグラウンドルールはシンプルです。
ここで出た個人の話は持ち出さない。
立場も年齢も役割も、フラットに。
「聞く」ではなく「聴く」——評価やジャッジをせず、背景にある感情や価値観ごと受けとめる。
「妬みは、あってもいい」——甲斐麻子さん(68)の物語
最初に語ってくださったのは、甲斐麻子さん、68歳。

長く大学で体育の教員を務め、結婚・出産を機にキャリアを中断。50歳で「先生と呼ばれて偏った人間になるのが嫌で」あえてアパレル販売の現場へ。57歳で「まさか採ってもらえると思わなかった」という若手ばかりの会社に飛び込み、研修講師を務め、そして66歳で起業——。
店長時代の話が印象的でした。
「数字を追うのをやめて、みんなをどう活かせるかだけに尽力したら、数字がついてきたんです」
若手の育成でも、結果より先に、必ずこう聞いたそうです。
「あなた、何が楽しくてこの仕事をやってるの?」——お金のためでも、偉くなりたいでも、お客様を喜ばせたいでも、なんでもいい。
その人が今持っている価値観をフラットに受けとめることが、その人の能力をいちばん引き出す。
そして、若い世代への率直な気持ちも隠しませんでした。
「若い人がAIを使って時短でいろんなことができるのは、本当にうらやましい。『私の若い頃はね』って言いたくなる自分もいます。でも、それは価値観の違い。妬みや僻みは、あってもいいんです。大事なのは、それを自分の内側のこととして処理をして、相手のいいところを探しに行くこと。それは、自分を否定することではないから」
「昔は石橋を叩いて壊していた」——関伸夫さん(77)の物語
続いて登壇したのは、関伸夫さん、77歳。

本田宗一郎率いる時代のホンダでキャリアを始め、転職先で60歳の定年まで30年以上社員教育に携わり、65歳からは障がいのある子どもたちのプログラムに従事。そして70歳——定年退職の翌日に法務局へ行き、自分の会社を登記しました。
「仕事もないのに、会社を作ってしまったんですよ」
会場に笑いが起きましたが、その裏には、40代の頃の苦い経験がありました。経営者の勉強会に唯一のサラリーマンとして参加していたとき、師匠にこう言われたそうです。「関さんって、何もやらないもんね」。
「私は、できそうなことにしか手を挙げていなかった。社長さんたちは、できるかどうか分からないことに平気で手を挙げる。『お願いします』と言われた瞬間から一生懸命やるから、成長するんです」
だから70歳で、先に会社を作った。昔は石橋を叩いて壊していたけれど、今は考える前に動く。厚生労働省のデータでは、男性は亡くなる前の約9年、女性は約12年を健康でない状態で過ごすといいます。「どっちに行きたいですか?」という問いかけに、会場の空気が変わるのを感じました。
最後に教えてくれた「ユダヤの教えの秘訣」もひとつ。
「勉強会でも講演でも、必ず時間前に最前列のど真ん中に座る。真剣に受ける。すると終わったあと、講演者とつながれる。これは考えなくても、誰でも再現できますよね」
30〜40代から見た、60代への期待
後半は、「多世代インタビュー」。「新しいことに取り組むとき、お二人は何を考えているんですか?」という問いに、お二人が即興で応えていきます。

甲斐さんの答えは、起業の決め手について。
「週40時間を、好きなことに充てたい——時間の価値観が逆転した瞬間に、辞めようと決めました。決めるのは自分。結果は、全部自分なんです」
チャレンジを続けるお二人が、それを特別なことだと全く思っていない。その佇まいそのものが、会場への何よりのメッセージになっていました。
「贈れる知恵、受け取りたい知恵」
締めくくりは、世代を混ぜた少人数グループでの対話ワークショップ。ラウンド2のお題は、この夜の核心でした。

「あなたが次の世代に贈れる知恵は? 逆に、受け取りたい知恵は?」
なぜこのお題にしたのか。ワークのあと、Project MINTの植山からこんな話をさせてもらいました。
年長者、若手。世代の違いはあれど、誰もが、誰かに贈る側にも、受け取る側にもなる。そしてそれは、特別なイベントの中だけの話ではなく、職場で、家庭で、近所で、コミュニティで——みんなが日常の中でできることなのです。
最後のラウンド「試してみたい小さな一歩は?」では、

「会社を立ち上げなくても、まず屋号だけ考えてみようかな」という声に、甲斐さんが「それ、すごくあり。私も気楽に立ち上げたんですよ」と応じる場面も。
チェックアウトでは「小さな一歩ということで、早速手を挙げました」と真っ先に感想を話してくださる方がいて、もう変化が始まっていました。
予想以上の夜でした
イベント後、参加者の方からこんな声が届きました。
「昨日の場がきっかけで、年内に自分も起業しようと刺激を受けた」
「50代のこれからが、楽しみになった」
登壇したお二人からも。
「自分のただの経験が、人の希望の一部になれる。そんな実感が持てたら——これこそが、どんな人も"生きているだけで誰かの役に立てる"という証明になるな、と感じました。この感覚を、たくさんの人に体験して実感してほしい」(甲斐麻子さん)
「本当に、このような機会を与えていただきありがとうございました。とっても楽しかったです」(関伸夫さん)
今の時代。なんだか年齢や世代という枠組みに縛られてしまい、互いが他世代に対して遠慮しがちになってしまってコミュニケーションが浅はかになってしまっているのではと感じるこの頃。
年齢も肩書きも取っ払って、一人の人として語り、対話し、聴き合う。年長者が持っているものを贈り、若い人が受け取り、そして若い人もまた贈っていく——その循環が、もっと社会の中で起きてくれたら、と心から思っています。
AIの時代だからこそ、こうした多世代の場を、これからももっと作っていきたい。人間は美しいもの。私たちは、もっともっとできる。

登壇者・主催者とつながる
甲斐 麻子さん/toMe合同会社(心と身体を統合し、その人らしい健やかさをサポート)
Facebook|Threads|tome.askai.31@gmail.com
関 伸夫さん/株式会社あぴふる(ユダヤの教育メソッドによる人材育成)
Facebook|seki@appefull.com
藤倉 礼亜/GiFT合同会社・asobiji(自分の価値観に沿った生業に伴走するコミュニティ)
GiFT|asobiji
「これなら自然に頑張れる」そんな生業、見つけませんか? asobiji無料相談会:7月21日(火)21:00–22:30/7月25日(土)10:00–11:30
植山 智恵/Project MINT(「ひとりの可能性を信じ、美しいものを次の誰かと創る」教育プログラム)
Project MINT|FUTURE YOU
こうした「多世代で本音を分かち合う対話の場」を、FUTURE YOU として続けています。よかったら、ぜひ遊びに来てください。
FUTURE YOU 多世代対話の場(お茶を飲みながら、本音で優しい時間を共有)
人生後半のパーパスを、見つめ直したい方へ(パーパス再設計ワークショップ)
