性格分析から10年後の自分へ
変わることと、変わらなくていいことのあいだで
引き出しの奥から、10年前の性格診断の紙を見つけた。
紙の端が少し黄ばんでいて、当時の自分の文字が、どこか勢いづいている。
「参謀タイプ」「ボヘミアン」「アクティブ」。
その言葉をいま読み返して、思わずふふっと笑ってしまった。
懐かしい響き。
そして、あぁ、たしかにそうだったな、と。
当時は、メイクや印象分析とセットになった「自分発見プログラム」みたいなものが流行っていた。
ワイドショーでは“変身コーナー”が人気で、
外見を変えることで、自信が持てるようになる──そんな空気があった。
私もあの頃は思っていた。
「変われば、きっと自信が持てる」って。
“似合う何か”が見つかれば、
今よりちょっと前を向けるような気がしていた。
でもいま思うと、
あのとき求めていた“自信”って、
「自分を信じる」ことじゃなかったんだよね。
ただ、自分を好きになりたかっただけ。
悲観的でも臆病でも、
そんな自分のままで大丈夫って、思いたかった。
診断結果には、
「内向・直感・思考・統制」と書かれていた。
考える時間を好み、戦略的で、冷静。
でも、その下にあった
「人に求める水準が高く、満たさない相手には冷たくなりがち」
という一文に、少しだけ胸がチクリとした。
あの時代は、“明るい人=良い人”みたいな雰囲気があって。
慎重より行動。静けさより社交性。
自分の“考える性質”は、ちょっと地味で重たいものに見えていた。
それから10年。
ノートを書くこと、瞑想すること、体を整えること。
そんな時間を重ねるうちに、私は少しずつ“観察する人”になった。
考えることで安心していた私が、
感じることで落ち着けるようになった。
いま、あの診断を読み返しても、もうショックはない。
むしろ「あぁ、人間ってそんなに変わらないんだなぁ」と思う。
そして少し笑ってしまう。
ちゃんと生きてきたな、って。
内省して、考えて、慎重で。
そのおかげで、大きな間違いもせずにここまで来られた。
いまの私は、穏やかに言える。
とても幸せに生きている。
ありがたいな、って。
⸻
10年前の私は「変わりたい」と思っていた。
いまの私は、「変わらなくてもよかった」と思えている。
それでも、明日もノートを開く。
変わることも、変わらないことも、
どちらもちゃんと、私の一部だから。
✎ あとがき
この文章を書きながら、10年前の自分に少しだけ優しくなれた気がしました。
あの頃は“変わること”ばかりを焦っていたけれど、
いまは“変わらなくても大丈夫”と思える。
観察することでしか見えない変化が、きっと誰の中にもあるのだと思います。
