銀紙頭に巻くの夜その36byクソカワクズピコ
ジョバンネルラは美紀宅でこのニュースを知った。美紀は既に就寝していた。
ジョバンネルラと美紀は既にこの頃、互いに寝る部屋を持っていた。
ジョバンネルラはリビングのサッシをあけて「キントーン!」と腹の内側から出る息とともに読んだ。それはキントーンにしか聞こえない静かかつ重厚な呼び声だ。
「お呼びですか?」
ジョバンネルラはキントーンに言った
「ドバイに向かってくれ。」
キントーンは雲に変身し、素早く飛び乗るジョバンネルラ。中年とは思えないアクションだ。美紀が見たら惚れ直すだろう、ジョバンネルラは頭の隅で思った。
「ジェット気流に乗れ。一晩で着くよな?」
キントーンは少し考えた。
「ジェット気流は無理です。」
「何でよ?」不服そうなジョバンネルラ。
キントーンは上空に向かった。上空には雲があった。「キントーンじゃんか」「あっ久しぶり!」
ジョバンネルラはキントーンに尋ねた。
「あの雲は、何だ?」
「友達の銀トーンです」キントーンはウキウキしながら答えた。
しばらくして別の雲からも話しかけられた。
「ヘイ!キントーンじゃねーか、最近なにしてんの?」ジョバンネルラはキントーンにまた尋ねた。
「あいつは誰だ」
「あれも友達です。白トーンです。」
いつの間に周りは雲で囲われた。
「ちはっす!」「紫トーンさん」「元気?」「赤トーンさんも!青トーンさんは何してるの?」
ジョバンネルラとキントーンは雲に覆われた。
「キントーン、おま、同窓会してるんじゃねーよ」
「これが僕らの世界なんですよ…」
ジョバンネルラは思い返した。
(そうだった…これが天空あるあるだ。)
雲は雲と群れると進めない。大渋滞だ。
そして、ジェット気流の下に存在している。
今ジョバンネルラとキントーンは雲のモッシュに囲まれて早く進めなくなっていた。
緩やかに流れるように雲は進む。
「キンちゃん」「銀ちゃん」「レモンちゃん相変わらず若いね」「あっピンク!」「赤トーンさん!」
「友達に久しぶりに会えて嬉しいなぁ。うっ思わず…。」キントーンは感極まって嬉し泣きをした。
地上では突然豪雨になり雷が発生した。
「おいおい!ドバイ行くっつったろ?何してんだよ」
「そんなわけで我々、ジェット気流の下で生活してるんでジェット気流に乗るなら飛行機に乗って下さい!」「あんだと?てめぇ!」ジョバンネルラは怒ったが、
この自然の法則には魔法がきかないジョバンネルラ、ヘタレ魔法はジェット気流には乗れなかった。
そして、なぜか成田空港上空だった。
(キントーンめ最初からここで下ろすつもりだったな…)キントーンは成田空港前でジョバンネルラを下ろした。「お前覚えてろ!」ジョバンネルラは地団駄を踏んだ。
空港ロビーでタイムテーブルを確認すると、このあと1時間で日本航空ドバイ直行便が出ると赤文字で表示されている。満席でキャンセルがなかった。
「カモはいねーかな?」
すると、サラリーマン風のぱっと見30代位の男が搭乗ゲートに向かってくる。
彼はスーツを来てスーツケースを引き走っていた。
「うー、ドバイドバイ!」
遅刻したのか、だいぶ焦っていて、考えていることが口に出てしまっていた。
ジョバンネルラはその男に、割と激しくぶつかった。
スーツの男は気絶したがなんと、ジョバンネルラはスーツの男を全コピーしたのだ。違うところは頭に銀紙の帽子を被っている方がジョバンネルラだということだけだ。
ジョバンネルラは、大騒ぎにならないように、彼をベンチに座らせて、出発便あるいはキャンセル待ちの客が居眠りしているという工作を施し、ゲートに向かった。
旅行用のウエストバッグに生真面目にパスポートやクレジットカード、現金の日本円が整理されてしまわれていた。
もう既にスーツの男はチェックインしていたのでジョバンネルラ的には助かった。
ゲートをくぐると荷物検査が始まった。
「ようやく間に合った。」というと、日本航空の職員は「もう締め切るところでしたよ!」と強気の姿勢を見せた。
本当は間に合っていないのに。本物のスーツの男はジョバンネルラの魔法によりロビーで夢を見ていた。
「ようやく間に合った。」「もう締め切るところでしたよ!」
ムニュムニュ…気の毒にその男性は夢の中で、間に合って搭乗しているつもりになっていた。(キナイショク、タノシミダナァ…ウム…ビビ、ビーフプリイズズズッ)…
ジョバンネルラのほうはというと、
座席について、パスポートを取り出し男の身元を確認していた。
彼の名前は土灰 郁雄(ドバイ イクオ)まさにドバイにいくためだけの名前のようではないか。
顔が若くなった、土灰ことジョバンネルラはビジネスクラスの席だった。パーティーションに覆われた広いスペースでテーブルがあり、身体が伸ばせた。
(悪くねえな)
…悪いのはジョバンネルラだ。
次章に、つづく。
