銀紙頭に巻くの夜その22byクソカワクズピコ
ジョバンネルラがコピーした男は実は営業マンではなくて盗撮魔だったのだ!
すなわち、盗撮魔になって、盗撮機器を持参してきたということになると、
仮に、ビルの中の人が既に盗撮魔を警察に通報していたら、自分に警察の追っ手がくることになる。
慎重にしないとな、とジョバンネルラは思った。元盗撮魔だっただけに。
魔法は警察には通用しなかった。
化粧の濃い厚底女は浮き輪のようなスカートをプカプカさせながら会社の中に入っていった。自分も入っていきたいが…
「とりまトイレ行こ」ジョバンネルラは男子便所に向かった。別に盗撮器を仕掛けるわけではない。
男子トイレブースに入っていると割と若い男2人組が入ってきた。
男たちは小便を済ますと
「さっきさ、アカネきたみたいよ」
「あー!木野CEOの新しい愛人か」
「キャバ行くと新しいバケモン釣ってくる癖、全くいい加減にしてもらいてえよな」
そう話しトイレを出ていった。
「今だ」ジョバンネルラもあわててトイレから出て、2人の跡を追う。
2人は受付とは別の、一見壁のようになっている部分に向かった。一人がカードキーをかざすと壁がさーっと開いた。
2人は、オフィスルームに入った。
すかさずジョバンネルラは、壁が閉まる瞬間にアタッシュケースに入っていた透明のクリアファイルをラッチ部分に滑り込ませた。そして、人が立ち去るのをみてから、こっそりとオフィスルームに入ることができた。
ジョバンネルラは空いている机に座った。
百台くらいの机が並んでいる。どこに誰が座ってもわからない。
頭にアルミホイルの帽子を被って入るもののジョバンネルラはほとんど周りの社員と同化していたのだ。
ジョバンネルラはアタッシュケースの中にあった機械類を取り出して机の上でまじまじと見た。
(この盗撮器案外使えるかもしれないぞ…)
するとさっきのチンドン屋のような、厚底靴の女が、奥の執務室に入っていくではないか。
「あの部屋に美紀の旦那が居るんだな?」
ジョバンネルラもあわてて機器をアタッシュケースに戻して、女を追う。
執務室の前に行くと中から声がする。
「アカネちゃん頼むよ、ここには来ないでくれって言ったじゃん。」
「セイチャン、あたしの誕生日来てくれないんだもん。あたしナンバーワンの座からおっこっちゃって、セイチャンのせいだよ?」
「馬鹿言うなよ、おめえがこれまで1位だなんて聞いたことも見たこともねえわ」
「あたしは歌舞伎町『推しっ子クラブ』の公式ナンバーワンキャバ嬢だよ!」
「嘘つけ!お前みたいなトー横のバケモンが?笑わすな」
「ピギャー!!!!」女が発狂したようだ。ジョバンネルラはとっさに観葉植物の後ろに隠れた。ここに観葉植物があったことに感謝した。
ドアをぶち破るようにして、発狂した女が出てきた。
「ぎゃぁぁぁぁあああ!」女は甲高い声で喚き散らしながら大股の早足で会社を出ていった。しかし受付嬢たちは、またか、という顔で済ましていた。
ヤッテ&ヤルゼイコンサルタントのCEOは、流石にすぐには女を追わなかった。
電子タバコを取り出し、一服吸うと、得体のしれない悪臭が辺りを充満した。
電子タバコは吸っている本人はいい気分かもしれないが辺りに悪臭を放つものがある。
星矢のは、まさしくそれだった。
執務室のドア越しに漂う電子タバコの激臭に、ジョバンネルラは思わず鼻をつまんだ。
(なんだこの臭いは……肥溜めに焦げたゴムをぶち込んだような悪臭じゃないか)
観葉植物の陰で咳き込みそうになるのを必死で耐えていると、執務室の中から木野星也が落ち着き払って出てきた。星矢は会社から出てエレベーターに乗り1階に向った。
他の社員や派遣スタッフに、アカネを愛人と思われたくなくて、ワンクッションおいてから追いかけるつもりか?
執務室には誰もいない。よし今だ、とばかりに先ほどの盗撮器を仕掛ける。アプリも自分のスマホにダウンロードし同期した。
室内が見通せる掛け時計にカメラを仕込んだ。そして、また観葉植物の後ろに隠れて、そのまま会社から姿をくらませた。
タワーオフィスの一階に戻ると、ジョバンネルラはもとの姿のやや太り気味な無精髭面の中年男に戻った。
そしてタワーオフィス1階のコーヒーショップの電源付きの席に座り、ワイファイをオンにした。そしてゴミ箱からこっそり他人の飲んだカップを机の上において客を装った。
「まだ戻ってきていないみたいだな」
するとエントランスに甲高い叫び声が上がった。
アカネと星矢だった。
星矢は、先ほどの会社のロビーで見たようなタレントのような感じではなく、完全にギャル男化していた。年齢は50歳前後と見られるが、日焼けし髪を染め、ギラギラのスーツ姿。
そして愛人と言われているアカネも年齢不詳であった。しかも元トーヨコキッズのような言われ方を星矢からされている辺り、やはり素性のわからない闇のようなものを感じるのであった。
ジョバンネルラは思わず拾った他人のカップを飲もうとして口をつけてしまい、おっと、おええ…とつばを吐いた。「ペッペッ」
店員が見周りに来ても追い出されないようにと置いたものだ。間違えて口をつけてしまった。
しかしコーヒーを買う気はない。美紀からは至れり尽くせりされるものの、金は貰っていなかったのだ。この時期では。
次章に、つづく。
