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銀紙頭に巻くの夜その29byクソカワクズピコ

ジョバンネルラは、美紀に「仕事で出張」とだけ告げ、粒子コンピューターの胡散臭いセミナーという営業に回っていた。  

老人ホーム慰問と称して老人ホーム近くでレンタルスペースを借り、"粒子コンピューター事業"を進めていく上であと少し、資金が足りません、と巨大モニターで例の、スライムからスーパーボールをすくえないと格闘している偽映像を流した。

「この研究開発が成功したら世界の物理学が塗り替わる。アインシュタインがただのアイーンおじさんになってしまう!」

というヒサのジョークを交えた。

スピナのマッサージと催眠効果で、老人たちは寄付を申し出る者が少なくなかった。

老人たちは説明のところでは寝ているが、映像が始まると、そのシーンで何人かはハッと目をさました。

セミナーは2時間もあれば終わるが、殆どの老人が見て聞いて帰っていく中で何人かは
「終活で、どうせなら頑張っている研究開発に寄付をしたい。嫁や義理の息子、娘に財産が行くのは嫌だ」

と思っている人が、ポンと100万円単位のお金を寄付してくれるのだった。

それがジョバンネルラたちの狙いであった。
「一回の営業ごとに百万円近く入るね」
「年寄りすげえわやっぱ!」

人々の善意を吸い取るキャッチャーミットだ。最近は『クラウドファンディング』でも金を集め始めた。 
「なんやかんやでクラファンに金を入れてくれる人がいるんだよ」
「そう、だから宣伝力をつけないと。」
「そこでだ」ヒサは言った。
「ある程度の数字を持っているユーチューバーとコラボ配信する!もちろん、ライブだ!」

テーマは何でもいい。取り敢えず、ジョバンネルラの知名度を上げるんだというヒサの計画にジョバンネルラは乗った。 

「気分はミントタブレット!(ここでぽいっと口の中にミントタブレットを放り込むポーズを決める。)爽やか〜シーハー志春でぇす!本日はすごい人とコラボするんですよ!サギ市自然公園で待ち合わせです!ここはサギがよく来るんですよ!あっ、サギがいる!こんにちわ~」
24万人フォロワーを持つ20代女性ユーチューバー志春。本名は江津地志春(エツチシハル)といった。

快晴の空の下、サギ市自然公園でジョバンネルラのコラボに応じている。ピンクの縁のメガネと黒髪のおかっぱ頭がトレードマークのお笑い系といったところだ。

志春は、見た目は真面目な女子学生風でありながらお笑いの要素を取り入れたインフルエンサー。しかしルックスは細めの一重まぶたが特徴的の、地味でごく一般的の顔立ち。
お世辞でもかわいい、美人カテゴリー系には当てはまらない。
しかし、ネタになるのならば何でも取り上げる、投げられたものは何でも受け取る方針でやっている体当たり的な動画がギャップを誘い人気となった。

今回の案件も、危険なものであるとは全く知らなかった。
「サギじゃねーよ!ジョバンネルラです」
台本通りに登場するジョバンネルラ。

ここからはインタビュー形式だ。
「これからは粒子コンピューターですよ。こんなこと言っているの僕しかいないでしょ。」
「クォークを取り出す技術、施設にはまだまだお金がかかるんです。そんな訳でクラファンはじめました。」

志春のオーバーリアクションが会話を上げ底にした。「うわぁ~凄いですねぇ!皆さん聞きました?粒子を核から取り出すんですって!」
「なんか放射能とか、飛び散らないんですかぁ?あっだからこの銀色の帽子被っているんですか?」

志春の眼はジョバンネルラの頭に被さっている銀紙の帽子だ。

「これ。かわいいと思って注目してたんですよぉ!」
「この帽子?」ジョバンネルラが言うよりも早く志春はジョバンネルラの頭に手をのばした。口より行動が動く落ち着きの無いタイプの人間だった。

だからテレビ向きではなく、芸能事務所に所属はしているがあまり仕事を貰えていなかった。

志春はジョバンネルラから帽子を取って自分の頭に被せた。

すると志春の様子が見るからにおかしくなっていった…。

次章に、つづく。

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