銀紙頭に巻くの夜その34byクソカワクズピコ
スピナは自宅のアパートでベッドにもたれながらスマホから郵便貯金の振込を確認して愕然とした。
ヒサからの振込が25万円しかなかったのだ。
(ちょっとぉ!なにこれぇ?)
薄いインスタントコーヒーが更に不味く感じられた。
スピナは中古ブランド売買店の『コクヒョウ』で
250万で、バーキン30Aランク辺りを買い、バンバン使う予定だった。ところが振り込まれたのは25万だったのだ。
(散々週末振り回されてこれかよ!)
しかしその金は偽研究への、人々の善意の寄付のお金だった。
元々もらってはいけないお金なのに、ヒサに横取りされたかも知れないと思うと余計に怒りが込み上げてきた。
ジョバンネルラに連絡しようと思ったが途中でやめた。(ジョバさんはヒサの仲間かも知れないから)
そして自分をなにかにつけて怒鳴りつけていたクルッテールをうとましく思っていた。
(客だと思って甘くしてりゃいい気になりやがって!)枕を思い切り壁に投げつける。
窓を見ると、雨上がりだった。ネットニュースを確認しても、いつもの通り。バスも電車も、飛行機も延着はあるが通常遠りだ。
(あの2人あたしの分け前でドバイに行って豪遊してんのか?)
その頃ドバイではクルッテールとヒサの2人が運転手付きの車に乗って、街に向かっていた。車はエアコンが効いていて快適だったが
「街はあとどれくらいだ?一向に開かれていない。スラム街のようだ。」パンフレットのような町並みを期待してたんだが、というクルッテールに
「特別区なんですよあそこは」と涼しくいうヒサ。外は暑かった。
「どっかで食事を取りましょう。この辺に地元のうまい店があるはず。」ヒサは言う。
「あるんかいな、バラックばかりやで」クルッテールは首を傾げた。
車を降りるクルッテール、ヒサ、そして通訳の男性。運転手は車に残った。
暫く歩くと、1件の店らしい場所に来た。シャッターが降りていた。
「確かガイドブックに…あーっやってないのか?残念!ちょっと付近の人に聞いてくるわ」
ヒサと通訳は店らしき建物の裏に回った。辺りは人っ子一人いない。嫌な雰囲気が漂った。クルッテールは一人待ち続けた。
しばらくしてヒサが通訳を連れて戻ってくると、クルッテールの姿はどこにもなかった。
ヒサは「クルさん?」と呼ぶが一向に返事がなかった。
通訳は「ドウシマスカ?」と聞いてきた。警察に連絡するか、との質問に、ヒサは
「今は、いい」と告げたのだ!
ドバイの最高級ホテル、シネル・ドバイ・マリーナにチェック・インしたヒサはそこから警察に連絡した。
車で同行した通訳もそこにいた。
「ホテルに先についていると思って直ぐには警察に連絡しませんでした。」
警察は「でも彼の荷物はトランクの中でしょう?」と聞き返す。
「でも彼のウエストポーチには財布などが入っていたんだと思います。」
ヒサはあわてて取り乱したような身振りをした。
「クルッテールはドバイで使える通信SIMもまだ用意してなかったんです!」
警察は尋ねた「つまり連絡手段がないと」
「そういうことです」
ヒサはこれまでに見せない涙を浮かべながら、下手くそな英語で取り乱した。
「なんということだ。私は信頼している…無事であって欲しい。最愛の部下には」
通訳は正確に訳して警察に伝えた。
「信頼して無事でいてくれ愛していた。」
「うむ、そういう関係なんだな?」
なぜ?クルッテールのことをヒサは部下だと言ったのか。
次章に、つづく。
