短編小説「ありがとうの形」第4章
第四章 つながる心
一年後の正月。
遥は靖国神社の石畳に立っていた。
白い道着、素足のまま、深く一礼して
冷たい空気を胸いっぱいに吸いこむ。
「平安初段!」
遥の動きは、まだ未熟だったかもしれない。
けれど、その一つ一つに、感謝と誇りがこめられていた。
形を終えた遥は、石碑の前に立ち、手を合わせた。
「ありがとう」
心の中で、そうつぶやいた。
空を見上げると、冬の雲のすきまから、
やわらかな光が差していた。
それはまるで、見えない誰かが、
遥の背中をそっと押してくれたようだった。
