【公認心理師が教える】「人に相談するほど、決められなくなる」人へ。3人に聞いて3つの正解が返ってきたとき、“自分の答え”に戻る方法
転職しようか迷っている。
恋人との関係を続けるか悩んでいる。
大きな買い物をするか迷っている。
そんなとき、
「自分だけで決めるのは不安だから、誰かに相談しよう」
と思うことがあります。
一人目に相談すると、
「絶対やったほうがいいよ」
と言われる。
二人目に聞くと、
「いや、今は動かないほうがいいと思う」
と言われる。
三人目からは、
「どっちを選んでも後悔すると思うよ。もう少し考えたら?」
と言われる。
気づけば、相談する前より迷っている。
そんな経験はありませんか。
情報を集めれば、答えに近づけると思っていた。
いろいろな人の意見を聞けば、失敗しにくくなると思っていた。
でも実際には、
聞けば聞くほど、「じゃあ結局、どうすればいいの?」が分からなくなる。
そして最後には、
「もっと詳しい人に聞けば分かるかも」
「もう一人だけ聞いてみよう」
と、さらに相談相手を増やしてしまう。
僕自身も以前は、何かを決めるとき、
できるだけ多くの選択肢を比較してから決めようとしていました。
Aのメリット。
Bのメリット。
Aのデメリット。
Bのデメリット。
さらに人の意見も聞く。
口コミも調べる。
別の選択肢も探す。
一見、とても慎重に考えているように見えます。
でも、ある程度を超えると、
「考えている」のではなく、「決めないために材料を増やしている」
ような状態になることがあります。
心理学を学ぶ中で、僕自身が特に意識するようになったのが、
「全部を比較する前に、今の自分が一番大切にしたい条件を決める」
ということでした。
これを先に決めるだけで、選択肢はずいぶん見やすくなります。
この記事では、
なぜ人に相談するほど決められなくなることがあるのか。
なぜ他人の意見はどれも正しく聞こえるのか。
そして、
人の意見を無視せず、それでも最後は「自分で決めた」と思える選び方
を、具体的な手順にしてお伝えします。
目指すのは、
「もう誰にも相談しない人」
ではありません。
相談はしていい。
情報も集めていい。
ただ、
最後の判断まで、人に預けなくていい。
そのための話です。
① 3人に相談したら、3つとも正しく聞こえる
たとえば、転職を考えているとします。
今の職場に大きな不満があるわけではない。
でも、少し物足りない。
もっとやりたい仕事もある。
そこで友人Aに相談します。
すると、
「まだ若いうちに挑戦したほうがいいよ」
と言われる。
たしかに、と思う。
次に職場の先輩Bに聞く。
「今の会社、かなり安定しているよ。わざわざ辞めるのはもったいないと思う」
これも、たしかにと思う。
さらに家族Cに聞く。
「焦らず、次を決めてから考えたほうがいいんじゃない?」
これも正しい気がする。
すると、
相談したのに、
答えが一つに絞られるどころか、選択肢ごとに“正しい理由”が増えてしまいます。
これは恋愛でも同じです。
「そんな相手、別れたほうがいい」
という友人もいる。
「長く付き合っているなら、もう少し話し合ったほうがいい」
という人もいる。
「あなたが後悔しないほうを選べばいい」
と言う人もいる。
買い物でも、
「高くても長く使えるほうがいい」
「安いので十分」
「今は買わないほうがいい」
と意見は分かれます。
なぜなら、
人はそれぞれ違う基準で答えているからです。
相手の「正解」は、その人の価値観から作られている
たとえば転職について、
「挑戦したほうがいい」
と言う人は、
成長や経験
を大切にしているのかもしれません。
一方、
「今の会社にいたほうがいい」
と言う人は、
安定や生活の安心
を重視しているのかもしれません。
どちらが間違いというわけではありません。
ただ、
大切にしているものが違う
んです。
だから、
3人に相談すると、
3人分の価値観が返ってきます。
そこで問題になるのは、
どの人が正しいかではありません。
本当は、
「自分は何を大切にしたいのか」
を決める必要があります。
② なぜ相談しても決められないのか。本当の原因は「情報不足」とは限らない
迷っているとき、
私たちはつい、
「まだ材料が足りないから決められない」
と思います。
だから、さらに調べます。
さらに比較します。
さらに人に聞きます。
もちろん、本当に情報が足りない場合もあります。
転職なら給与や勤務地。
住宅なら価格やローン。
旅行なら日程や費用。
こうした情報は確認したほうがいいでしょう。
でも、
ある程度の情報が集まっているのに決められない場合、
問題は別のところにあることがあります。
それは、
「何を基準に選ぶのかが決まっていない」
ということです。
比較する項目が多すぎると、どれも決め手にならなくなる
たとえば、転職先を比較するとします。
給与。
勤務地。
仕事内容。
休日日数。
人間関係。
会社の安定性。
将来性。
福利厚生。
残業時間。
リモートワーク。
すべて大事です。
でも、すべてを同じくらい大事にすると、
ほとんどの場合、
「全部勝っている選択肢」はありません。
A社は給与が高い。
でも通勤が長い。
B社は給与は少し下がる。
でもやりたい仕事ができる。
C社は働きやすそう。
でも将来性が少し不安。
ここで、
「全部を総合的に見て、一番いいものを選ぼう」
とすると、
なかなか決められません。
なぜなら、
“一番いい”の意味が決まっていないからです。
相談を増やすほど不安になる理由
もう一つ、よくあることがあります。
誰かに相談する目的が、
途中から変わってしまうことです。
最初は、
「自分では気づいていない視点を知りたい」
だった。
でもいつの間にか、
「この選択で絶対に大丈夫だと言ってくれる人を探したい」
に変わってしまう。
たとえば、
転職したい気持ちがある。
友人に相談する。
「転職したほうがいいよ」
と言われる。
少し安心する。
でも翌日、
「本当に大丈夫かな」
と不安になる。
今度は別の人に聞く。
その人から、
「今はやめないほうがいい」
と言われる。
また迷う。
そこでさらに別の人に聞く。
これを繰り返す。
でも、
どれだけ人に聞いても、未来の結果までは誰にも保証できません。
だから、「絶対に後悔しない答え」を外に探し続けると、なかなか終わらないんです。
「誰かに決めてもらえたら楽なのに」と思うとき
決断には、少し怖さがあります。
自分で選べば、
うまくいかなかったとき、
「自分が選んだからだ」
と思うかもしれない。
だから無意識に、
誰かの意見を強く採用したくなることがあります。
「○○さんが転職したほうがいいと言ったから」
「友人みんなが別れたほうがいいと言ったから」
「口コミで一番評判がよかったから」
そうすれば、
自分だけで決めた感じが少し薄くなります。
でも、ここには一つ問題があります。
結果がよくなかったとき、
「本当は私は違うと思っていたのに」
という後悔が残りやすいんです。
人の意見を聞くことと、
判断そのものを人に預けることは、
分けて考えたほうがいいと思います。
③ 解決策の全体像。「どれが正しい?」より先に、「私は何を大切にしたい?」を決める
僕自身、以前は選択肢があると、
とにかく全部比較しようとしていました。
でも今は、
比較する前に一つ考えるようにしています。
それが、
「今回の選択で、今の自分が一番大切にしたいことは何だろう?」
という問いです。
たとえば転職なら、
「今は収入を増やすこと」
かもしれない。
「家族との時間を増やすこと」
かもしれない。
「やりたい仕事に挑戦すること」
かもしれない。
「精神的な負担を減らすこと」
かもしれません。
全部大事で構いません。
ただ、
“今はどれを少し優先するか”
を決める。
これが基準になります。
すると、人から意見をもらったときにも、
「その人の答えに従う」
のではなく、
「自分の基準に照らして、使える部分を借りる」
ことができます。
人の意見は「答え」ではなく「材料」にする
ここが今回、一番お伝えしたいところです。
相談した相手の言葉は、
答えではなく、材料
として扱います。
たとえば友人から、
「転職したほうがいい」
と言われた。
そこで、
「じゃあ転職しよう」
ではなく、
「この人は、転職のどんなメリットを見ているんだろう?」
と考えます。
「今しか挑戦できないから」
と言われたなら、
「ああ、自分は挑戦できる環境をどのくらい大事にしたいんだろう」
と考える。
逆に、
「今の会社にいたほうがいい」
と言われたら、
「この人は安定性を大事にしているんだな。自分にとって安定はどのくらい重要だろう」
と考える。
こうすると、
他人の意見に振り回されるのではなく、
他人の意見を使って、自分の基準を見つける
ことができます。
④ 「結局、私はどうしたい?」に戻るための5つのステップ
ここからは、実際に迷ったときに使える方法です。
STEP1 「相談する前の自分」を思い出す
意見をたくさん聞いたあとほど、
最初の自分の気持ちが分からなくなります。
そこで一度、
「誰にも相談していなかったとしたら、私はどうしようとしていた?」
と考えてみてください。
たとえば転職なら、
「実はかなり転職したかった」
かもしれない。
恋愛なら、
「もう一度話し合いたいと思っていた」
かもしれない。
買い物なら、
「少し高くてもAが欲しかった」
かもしれない。
もちろん、
最初の気持ちが必ず正しいわけではありません。
ただ、
他人の意見が入る前の自分を確認する
ことには意味があります。
まず、スタート地点に戻るんです。
STEP2 「一番大切な条件」を一つ決める
次に、
今回の選択で大事な条件を考えます。
できれば、
一つだけ
選んでみてください。
たとえば、
転職なら、
「今は収入より、働く時間を優先したい」
恋愛なら、
「相手と安心して話し合える関係かどうかを一番大事にしたい」
買い物なら、
「多少高くても、5年以上使えるものを選びたい」
という具合です。
二番目、三番目があっても構いません。
でもまず、
一位を決める。
ここがポイントです。
STEP3 「どちらが優れているか」ではなく、「自分の一位に近いのはどちらか」を見る
ここから選択肢を比較します。
たとえば、
A社とB社で迷っている。
A社は、
給与が高い。
知名度もある。
ただし残業が多い。
B社は、
給与は少し下がる。
でも勤務時間が短い。
もし今の自分が、
「家族と過ごす時間」
を一番大切にすると決めたなら、
見るべきポイントが変わります。
「どちらが世間的にいい会社か」
ではなく、
「どちらが今の自分の大事なものに合っているか」
になります。
これだけで、かなり選びやすくなることがあります。
STEP4 相談相手には「答え」ではなく「視点」を聞く
人に相談するときの質問も少し変えてみます。
たとえば、
「転職したほうがいいと思う?」
と聞くと、
YESかNOが返ってきます。
代わりに、
「私が見落としていることってあると思う?」
と聞く。
あるいは、
「この選択のリスクって何だと思う?」
「あなたなら何を一番確認する?」
と聞く。
こうすると、
相手からは、
判断そのものではなく、
判断材料
をもらえます。
これはかなり大きな違いです。
STEP5 「後悔しない選択」ではなく、「後悔しても納得できる選択」を目指す
最後に、一番難しいところです。
私たちは、
「絶対に後悔しない選択」
を探したくなります。
でも実際には、
どちらを選んでも、
「逆だったらどうなっていたかな」
と思う瞬間はあります。
転職しても、
「前の会社に残っていたら」
と思うかもしれない。
残っても、
「転職していたら」
と思うかもしれない。
恋人と別れても、
「もう少し続けていたら」
と思うかもしれない。
続けても、
「あのとき別れていたら」
と思うかもしれない。
つまり、
後悔が出ないことを、良い決断の条件にしないほうがいい
んです。
代わりに、
「その時点の自分が、大切にしたいものを考えて選んだ」
と言えること。
ここを目指します。
結果まで完全に選ぶことはできません。
選べるのは、
今、何を大事にして一歩を決めるか
までです。
「正しい答え」は、人によって変わる
たとえば、
同じ転職の相談でも、
子育て中の人。
20代で経験を増やしたい人。
収入を最優先したい人。
体調を整えたい人。
同じ答えにはならないでしょう。
恋愛でも、
安定を大切にする人。
刺激を求める人。
一緒に過ごす時間を重視する人。
自立した距離感が好きな人。
選び方は変わります。
つまり、
「世間的に一番正しい選択」を見つけても、それが自分にとって一番いいとは限りません。
だからこそ、
最後は、
「みんなはどう思う?」
ではなく、
「私は何を大切にしたい?」
に戻る必要があります。
迷いが消えてから決めなくてもいい
もう一つ知っておいてほしいことがあります。
決断というと、
「迷いがなくなったら選べる」
と思いがちです。
でも実際には、
迷いが少し残ったまま決めることもあります。
Aにも魅力がある。
Bにも魅力がある。
Aを選んだら、Bは手放すことになる。
だから少し残念。
これは普通です。
迷いが残る=間違った選択
ではありません。
何かを選ぶということは、
同時に、
別の可能性を選ばないということでもあります。
だから、
少し惜しく感じる。
少し怖い。
少し「本当にこれでいいかな」と思う。
それでも、
自分の基準に沿って選べたなら、
十分なことがあります。
「もう一人だけ聞こう」が始まったら
相談を重ねすぎているときには、
こんな言葉が頭に浮かびます。
「あと一人だけ聞いてみよう」
そんなときは、
新しい人に相談する前に、
自分に聞いてみてください。
「私は今、新しい情報が欲しいのか。それとも安心が欲しいのか。」
新しい専門的な情報が必要なら、
聞く価値があります。
でも、
すでに十分な情報があるのに、
「あなたの選択は絶対正しいよ」
と言ってくれる人を探しているなら、
相談相手を増やしても終わらないかもしれません。
そのとき必要なのは、
新しい意見より、
今ある材料で自分の基準を確認すること
です。
⑤ 最後に。「自分で決める」とは、一人で全部考えることではない
人に相談することは、悪いことではありません。
むしろ、
自分一人では見えなかったことに気づけることがあります。
経験者の話が役に立つこともあります。
自分が感情的になっているときに、
少し客観的な視点をもらえることもあります。
だから、
これからも人に相談していいと思います。
ただ、
相談したあとに、
最後の一歩だけは自分のところに戻してみてください。
Aさんはこう言った。
Bさんはこう言った。
Cさんはこう言った。
全部聞いた。
そのうえで、
「じゃあ、私は何を大切にしたい?」
と考える。
僕自身も以前は、
選択肢を全部比較して、
すべて納得できる答えを探そうとしていました。
でも今は、
「今回、一番大切にしたい条件は何か」
を先に決めるようにしています。
すると、
不思議なくらい、
必要な情報と、
そうでない情報が分かれてきます。
人の意見も、
「従うもの」ではなく、
「参考にするもの」に変わります。
もちろん、
それでも迷うことはあります。
決めたあと、
「あっちでもよかったかな」
と思う日もあるでしょう。
でも、
そのときに、
「私は誰かに言われたから選んだのではなく、あのときの自分が大事にしたかったものを考えて選んだ」
と言える。
それは、かなり大きな違いだと思います。
次に、
3人に相談して、
3つの正解が返ってきたら。
4人目を探す前に、
少しだけ立ち止まってみてください。
そして、
自分にこう聞いてみてください。
「全部の意見がもっともだとして、それでも私は何を一番大切にしたい?」
答えがすぐに出なくても構いません。
ただ、
その問いを他人に渡さず、
一度自分の手元に戻してみる。
人からもらった意見は、
道を決める命令ではありません。
あなたが自分の道を決めるための、地図の一部です。
どの道を歩くかまで、
地図に決めてもらわなくていい。
誰かに相談しながらでも、
迷いながらでも、
最後に、
「私はこれを大切にしたいから、こちらを選ぶ」
と言えたなら。
それは十分、
自分で決めた選択なのだと思います。
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