AIにコードを書かせる前に、私は自分の仕事をバラバラにした
AIを使って仕事を楽にしようとした。
そのとき最初につまずいたのは、AIの使い方ではなかった。
何を頼めばいいか、わからなかった
理学療法士として15年ほど働いたあと、総務部の労務担当に異動した。
給与計算、社会保険の手続き、勤怠管理。どれも前職では触れてこなかった業務ばかりで、最初の数ヶ月は「とにかく覚えること」で精一杯だった。
そのうち、AIツールを業務に使えないか、と考え始めた。
やってみようと思った。
ところが、いざ向き合うと手が止まった。
何を、頼めばいいのか。
「コードを書いて」と入力してみる。でも、何のコードか。何をしたいのか。どんな入力があって、何が出てくればいいのか。——それが自分の中でまったく整理されていなかった。
AIは答えてくれる。でも、問いが曖昧なままだと、出てくるものも的外れになる。
そのとき気づいた。問題はAI側にあるのではなく、私の側にあった。
仕事を、バラバラにしてみた
コードを書いてもらう前に、自分の仕事を整理することにした。
紙に書き出した。
「自分は今、何をやっているのか」を、できるだけ細かく、順番に並べていく。
勤怠データを確認する。
集計する。
ミスがあれば修正する。
確認メールを送る。
というように、ひとつの作業をばらして、並べてみる。
医療現場での経験が、ここで少し役に立った気がする。
リハビリの評価というのは、「この患者さんが歩けない」という事実の前に、「どの動作が、どの段階で崩れているか」を細かく見るところから始まる。大きな問題を、要素に分けて観察する。——労務の仕事を分解する作業は、あの感覚に少し似ていた。
バラバラにして、並べてみる。
すると、「ここが面倒くさい」「ここが時間かかる」「ここは毎回同じことをやっている」という部分が、見えてきた。
AIはその後でいい
分解が終わってから、もう一度AIに向かった。
「毎月、こういうデータがあって、こういう処理をして、こういう形にしたい」と、具体的に伝えることができた。
コードが出てきた。動いた。
最初から「コードを書いて」と打っていたときとは、まったく違う結果だった。
AIの使い方を学ぶより先に必要だったのは、コードの知識ではなかった。
自分の仕事を知ること。バラバラにして、並べてみること。
それだけで、AIへの「頼み方」は変わった。
分解は、地味だけれど
仕事の分解という作業は、派手じゃない。
ツールを使うわけでも、新しいスキルを習得するわけでもない。
紙とペンでできる。
でも、これをやらずにAIに向かっても、何かがずれ続ける感じがある。
私はそのずれを、「AIが使いにくいせい」だと最初は思っていた。
違った。
自分の仕事が、自分の中で整理されていなかっただけだった。
AIにコードを書かせる前に、必要だったのはコードの知識ではなかった。
まず、自分の仕事をバラバラにすることだった。
