見出し画像

夜勤の仮眠中誰がドアを叩いたの?

今の病院に転職して、まだ間もない頃。

病院のことも、そこで働く人たちのことも、まだよく知らなかった。

その夜、同僚と交代で仮眠に入った。

夜勤の仮眠は、ぐっすり眠れるものではない。

急変などがあれば、いつ起こされるかわからない。

うとうとしていた、その時。

トン、トン。


仮眠室のドアを叩く音がした。

「何かあった!」

私は飛び起きて、同僚のところへ向かった。

「何かあった?」

「何もないよ」

「今、ドア叩いたよね?」

「叩いてないよ」

……え?

確かに聞こえた。

トン、トン。


誰かがドアを叩く音。

でも、その時は「寝ぼけていたのかな」と思うことにした。

翌日、別の同僚にその話をすると、

「この病院、時々あるよ」

と言われた。

霊感の強い職員には、夜、誰かが病院の中へ入っていく姿が見えることもあるという。

けれど、確認してみると誰もいない。

その話を聞いて、私はゾッとした。

さらに後日、別の病棟で働く友人からも、不思議な話を聞いた。

その友人が、状態の悪い患者さんを気にかけながら夜勤をしていた時のこと。

突然、

ドスン!


と、大きな音がした。

何だろうと思って確認しても、何もない。

すると今度は、

ドンドン!


ドアを強く叩く音がしたという。

友人は、一緒に夜勤をしていた若くて体の大きな男性看護師に、

「見てきてくれる?」

と頼んだ。

ところが彼は、すっかり怖がってしまった。

「一人では無理です……」

結局、友人も一緒に行き、二人で確認することになった。

けれど――

やはり、誰もいなかった。

後になって友人は、その時のことを思い出しながら、

「身体ばっかり大きくて、いざという時に役に立たないんだから」

と怒っていた。

私はその話を聞いて、さらに不思議な気持ちになった。

病棟も違う。

夜勤をしていた人も違う。

それなのに、聞こえたのは同じようなドアを叩く音だった。

偶然だったのかもしれない。

建物の音だったのかもしれない。

眠気の中で、何か別の音をそう聞き間違えただけなのかもしれない。

それでも今も、私はあの音を覚えている。

トン、トン。


あの夜。

私の仮眠室のドアを叩いたのは――

いったい、誰だったのだろう。

いいなと思ったら応援しよう!

風花 よろしければ応援お願いします。いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます❕

この記事が参加している募集