26年5月の映画〜「ひつじ探偵団」「これからの私たち」「旅立ちのラストダンス」〜
何故、見たい映画は重なるのか。
連休明けの5/8から、何となく惹かれる映画がまとまってやってきたのだが、同時に通院付添いや捨て活のスケジュールも入っている上、暑くならないうちに庭の雑草対策や、「中掃除」もしておきたいのでスケジューリングが難しい。
映画はなるべく上映開始の最初の3日のうちには行っておきたい。ここでの観客動員数が次週以降に影響するとのことで、評判のよい映画でなければ1週間で打切られたり、上映回数が減ったり、不便な時間帯に変わってしまうからだ。
かといって毎日行くのもせっかくの作品の余韻が薄れてしまう気がして、1週間に1本くらいのペースにしたいのだが、なかなか上手くいかない。
ひつじ探偵団(5/8)
主演はヒュー・ジャックマン。なのにほぼ冒頭で殺されてしまう!真の?主人公(達)は、彼が面倒を見ていた羊たち。謎解きは本格派。登場人物(羊含む)は、それぞれ対峙すべき課題を抱えていて、犯人を特定する過程でそれらに立ち向かい乗り越えてゆく。ただのコージー・ミステリではない。自信をもっておすすめできる作品だ。
これからの私たち(5/11)
旅立ちのラストダンス(5/21)
香港映画で「死」をモチーフにした作品を2つ同月内という珍しいパターンだ。
「これからの私たち/ALL Shall Be Well」は、長年連れ添い、事業も成功してお互いの親族とも良好な関係を築いていたレズビアン・カップルの話。遺言を作成する前に一方が急死してしまう。同性婚が非合法である香港では、遺言状がなければ残されたパートナーはたとえ2人で築いた財産(家)でも相続することができない。
その不条理さは墓地を決める時から始まり、海に散骨する故人の遺志は親族により捻じ曲げられる。遺されたパートナーは一時は散骨では子孫に悪影響が及ぶと言われて引き下がった。(故人の親族とは亡くなるまでは良い関係だったから。)
実は故人の親族はみな経済的には不遇で、カップルの家が喉から手が出るほど欲しいし、法的には正式な相続人なのだ。結局、遺されたパートナーは裁判により生活費を得て、2人の家からは退去することになる。
ただし、それと引き換えるように故人の遺志であった散骨をすることはできた。親族は家が手に入るという魅力の前に逆らえず、子孫が不幸云々には目をつぶったのだろう。つまり50%だけ”well”で、お互い歩み寄る100%のハッピー・エンドではなかった。
原題は”shall”が使われている。現代ではそれは核心の意味が失われて、もはや決まり文句だけで使われる。(Shall we dance? みたいな。)
では核心は?「運命・神の意志」らしい。聖書や硬い文書などに使われる他、有名なのはマッカーサーの”I shall return.”であろう。
(「真・英文法大全」関正生著 KADOKAWA p.213-215)
LGBTQであるか否かに関わらず、またどの宗教を信仰しているいないにも関わらず、真っ当な人間生活において、法の欠缺や差別は許されるべきではないことを象徴するタイトルなのだと感じた。
「旅立ちのラストダンス」は、葬儀における道教の「破地獄」の儀式(無形文化財)を行う道士の一家と、ウェディング業から葬儀業に転身した主人公の話。
家族・伝統・死生観という人間の根本的テーマを描いている。映画を見れは、いやおうなく自分の向き合い方を考えることになろう。
エンドロールでは、白居易の漢詩「自覚二首(じかく にしゅ)」(唐代の詩人・白居易(白楽天)が40歳(811年)の時に自身の老いと精神的な覚醒について詠んだ五言古詩の連作)が大写しになる。
内容: 自分の体力の衰えや肉親との死別という現実の苦悩と向き合い、最終的に仏教(浮屠教)の教えによって心の安らぎを得ようとする過程を描いた作品群。
第一首:老いと衰えへの自覚
前半では、白髪(二毛)が生え、歯が抜け落ちるなど、自身の身体的な衰えを具体的に描写し、四十歳にして七十歳のような老いの不安を抱えていることを嘆く。
後半では、老いや病を恐れ憂うことこそが苦しみの根源であるとし、「老いや病を恐れず、憂いなければ、それが老いと病を治す薬となる」と悟る境地を詠んでいる。
第二首:喪失の悲しみと仏教による解脱
前半では、愛する者や親しい者が次々と亡くなっていく深い悲しみを、非常に生々しく感情豊かに表現している。
後半では、その絶望から立ち上がるために仏教の教え(解脱の門)に救いを求める。心を水のようにおだやかに保ち、肉体をかりそめのものであると達観することで、煩悩や生死の輪廻(りんね)から解き放たれようとする強い意志を誓っている。
現実的苦悩と宗教的哲思の融合: 生理的な老いに対する憂いや大切な人を失う悲しみというリアルな人間味あふれる感情と、仏教による精神的な解脱という哲学的思想が見事に結びついている。
香港ではあの「トワイライト・ウォリアーズ」以上のヒット作になったそうである。
