価格勝負から抜け出すには?中小製造業が「スマイルカーブ」と「創発的戦略」から学べること
中小の製造業の経営者の方とお話ししていると、こんな言葉をよく耳にします。
「うちは図面どおりにきっちり作るだけだから」
「最終的にはどうしても価格勝負になるんですよね」
「親会社の仕事量に業績が振り回されてしまう」
真面目に、正確に、納期も守ってモノづくりをしているのに、
報われにくい——そんな感覚をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今日は、建設業やバイオ医薬品の事例からヒントを借りながら、
「中小製造業がどうやって“価格勝負”から抜け出すか」を考えてみます。
スマイルカーブを製造業に当てはめると?
「スマイルカーブ」という考え方があります。
上流:企画・設計・開発・提案
中流:加工・組立・量産
下流:保守・運用支援・改造・更新・データサービス
付加価値は、真ん中の「加工・組立」よりも、
上流と下流のほうが高くなりやすい、というイメージです。
多くの中小製造業は、このうち
「中流:図面どおりに作る」「言われた通りに加工する」
に集中していて、どうしても単価勝負・納期勝負になりがちです。
建設業は「脱・請負」に動き始めた
建設業でも、かつては
「発注者の言うとおりに設計どおり建てる」=施工請負
が中心で、やはり価格競争にさらされていました。
そこから抜け出すために、一部のゼネコンは
上流の「企画・設計」から関わる
下流の「運営・保守」まで自分たちで担う
という方向に舵を切り、「建てて終わり」ではなく、「企画〜運営まで一気通貫」のビジネスモデルへと変えてきています。
中小製造業ができる「脱・加工請負」
では、中小の製造業が同じ発想をとるとどうなるでしょうか。
1. 上流を取りに行く(設計・提案)
「図面どおり作ります」から、
「設計の段階から相談に乗ります」
「VA・VE提案(コストダウン+性能維持・向上)を一緒に考えます」
材料、加工方法、構造について
「こう変えるとコストが◯%下がります」
「この設計なら不良率が下がります」
といった提案ができると、
「あの会社に相談すると仕様が固まる」
という存在になり、単なる価格比較の対象から外れていきます。
2. 下流を取りに行く(保守・サービス)
一度納めた「モノ」に、継続的なサービスをセットにする発想です。
装置・治具メーカーなら:
定期点検・保守契約
3年・5年ごとの改造・更新パック
稼働データを活用した「歩留まり改善提案」
部品メーカーでも:
定期交換パック(年額契約)
使い方に合わせた改良提案
「売ったら終わり」ではなく、
「使い続けてもらうほど売上と利益が積み上がる」
構造を少しずつ増やしていくイメージです。
「創発的戦略」ーーやりながら戦略が見えてくる
もう一つ参考になるのが、富士フイルムの事例です。
同社は写真フィルムに代わる事業を探す中で、
当初は「自社の創薬」が主役で、
「製造受託(CDMO)はつなぎ」と考えていたと言われています。
ところが実際にいろいろ挑戦してみると、
CDMO市場の伸びしろが大きい
写真フィルムで培った技術が、バイオ医薬品の製造に転用できる
創薬は想定以上に難しい
といった現実が見えてきて、徐々にCDMOが主力になっていきました。
これは、経営学で言う「創発的戦略」に近い動きです。
最初から完璧な戦略を描くのではなく、
小さくいろいろ試し、その結果を見ながら「当たり」を太くしていく。
中小企業でも、これは十分に応用可能です。
中小製造業が今日からできる小さな一歩
いきなり「うちも企画から運用まで全部やる!」と言っても現実的ではありません。
おすすめしたいのは、次のようなステップです。
自社のスマイルカーブを描いてみる
上流・中流・下流に分けて、
「売上はどこからどれくらい来ているか」
「利益率はどこが高いか・低いか」
をざっくり見える化する。
上流か下流で、1社だけ実験してみる
信頼のある既存顧客を1社選び、
設計段階からの参画
保守・点検のパック提案
のどちらかを「お願いして」チャレンジさせてもらう。
うまくいったら「型」として整理する
その提案内容と結果を整理し、
サービス名をつけ、価格表をつくり、
「新しい標準メニュー」として他の顧客にも順次提案する。
おわりに
中小製造業が「価格勝負から抜け出したい」と思ったとき、
必要なのは、立派な中期経営計画よりもむしろ、
自社のスマイルカーブを描いて現状を直視すること
上流か下流で、まずは“小さく1社だけ”挑戦してみること
うまくいった型を、少しずつ太くしていくこと
この3つだと感じています。
もし、
「うちの場合はどこから手をつけるべきだろう?」
「自社のスマイルカーブを一緒に描いてほしい」
と感じられたら、ぜひコメントやメッセージでお知らせください。
現場の状況を伺いながら、一緒に“脱・価格勝負”の道筋を考えていきたいと思います。
