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ダークマターが原子や生命を作っている可能性?

宇宙の構成物質の大半は、光っていないダークマター(暗黒物質)だと、物理学では考えられています。しかしその正体は混沌としています。宇宙初期に生まれたミニブラックホールの可能性なども議論されています。ダークマターの候補の中で、割と多くの人が研究している候補が、弱相互作用質量粒子、通称「WIMP」(Weakly Interacting Massive Particle)と呼ばれる素粒子です。超弦理論のような超対称性をもつ素粒子理論モデルには、WIMPの候補としての新粒子がいろいろ含まれており、割と人気のシナリオになっています。

超対称性とは、「フェルミオン」と呼ばれる、電子などの物質的な振る舞いをする素粒子と、「ボゾン」と呼ばれる、光子などの力を媒介する素粒子を入れ替える変換に対する対称性のことです。この超対称性が存在する理論は、その対称性を持たない理論に比べて、解析しやすいメリットがあります。また電磁気力、弱い力、強い力、そして重力の4つの力を、1つに統一する「統一理論」においても大きな役目を担うと、これまで考えられてきました。

しかし、現状の素粒子加速器実験で得られるデータからは、超対称性が存在する兆候は見られません。仮に超対称性がプランクスケールの超高エネルギー領域に存在するにしても、実験できる低エネルギー領域では、その対称性は自発的に破れている必要があります。しかし現実とうまく合うように超対称性を破ることは、理論的な工夫が要る難しい問題とされています。

その工夫の1つとして、「隠れたセクター」(hidden sector)というものに属する、未知の素粒子の導入が提案されています。その素粒子たちは、電子などの我々の世界の素粒子とは極めて弱くしか力をやり取りしないというシナリオです。もちろん光子も出せないので、光りもしません。我々から見ると、裏の世界に「隠れている」素粒子たちです。その隠れたセクターのモデルには、純粋に重力を通じてしか感知できないとする理論もあります。電磁気力などに比べて、重力の効果は非常に弱いため、この隠れたセクターにおいて超対称性が結構派手に破れても、我々の世界の素粒子には、重力を通じて、ほどほどの影響しか与えません。その影響の効果の1つが、素粒子加速器実験の結果と整合する、電子などの超対称性の破れだと考えるわけです。

このような隠れたセクターには、安定でかつ自然なダークマターの候補の素粒子が現れます。その「ダーク素粒子」は壊れもせず、光らず、そして重力的な小さな影響しか、我々の身の回りの表の世界の物体に与えられないからです。現時点では、このダーク素粒子は単一の種類しかないと考える必要は、まだありません。複数のダーク素粒子が存在し、それらが相互作用をすることで、その裏の世界としての隠れたセクターの中で、原子構造を形成する可能性もあります。たとえば下記の論文は、そのような「ダーク原子」の可能性を論じた研究の1つです。

同じ宇宙の中に、我々が見えないし、感知も難しいダーク銀河やダーク原子があるかもしれないのです。もし仮に存在するとしたら、我々の世界とそのダーク宇宙は重なっていますが、重力を通じてしか、その存在を我々は感じません。またそのダーク原子から生まれた、ダーク星やダーク生命体の可能性も、現時点での観測では完全には否定されていません。ただし、そのようなダーク星やダーク生命体を積極的に考える理論的な動機も、存在してはいないのですが。なにせ、それらは我々から全く見えないのですから。本当とも嘘とも、全く言えない代物なのです。

ただ堅実なダークマター物理学研究の先に、そのようなSF的可能性がまだ生き残っていることは、考えられるだけでも愉快なことではあります。物理学は、その意味でも人生を豊かにするものに違いありません。


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