1+1を3にする人
1+1を3にする人が、うちにはいます。
小学校で習いました。
1+1は2。
当たり前です。
世界でいちばん簡単な計算のはずです。
でも親になってから、この式が成立したことが一度もありません。
たとえば朝の支度。
大人ひとりなら30分で家を出られます。
でも、そこに子どもがひとり加わると、なぜか1時間かかります。
靴下は片方だけ消えます。
玄関で「やっぱりトイレ」が発動します。
昨日まであんなに大好きだった上着が、突然全力で拒否されます。
たとえば洗濯。
増えたのは、手のひらサイズの小さな服だけ。
なのに洗濯機を回す回数は2倍になっています。
あの小さな服のどこに、そんな汚れの容量があるのでしょうか。
たとえばごはん。
「子どもの分なんて、ちょっと取り分けるだけでしょ」
そんなふうに思っていた、昔の私。
「ちょっとそこに座りなさい」
と言いたいです。
なかなか食べない。
食器を落とす。
ひっくり返す。
そして全部片づけたあとに「おなかすいた」と言います。
1人分のはずが、実質3人分。
寝かしつけもそうです。
絵本を1冊読んだら寝る約束が、「もういっかい」「もういっかい」で気づけば3冊。
私の方が先に寝落ちしたりする日もあります。
1+1が、2にならない。
我が家の算数は、ずっと壊れています。
でも最近、気づいてしまいました。
増えているのは、時間と洗濯物だけではありませんでした。
笑う回数も。
写真フォルダの容量も。
「あのね、きょうね」から始まる報告も。
なんでもない一日の、なんでもない愛おしさも。
ぜんぶ、勝手に3倍になっていました。
ふたりだった家にこの小さな人がやってきて、1+1は2じゃなく、3になりました。
計算は間違っているのに、答えだけ、どうしようもなく合っています。
この前、お風呂で指を折りながら
「1たす1は〜……3!」
と言い張る娘に、思わず笑ってしまいました。
ほんとはね、2なんだよ。
小学校にあがって学校で習ったら、ちゃんと2って答えるんだよ。
でもね。
我が家の1+1は、3で合ってるよ。
